二重人格ごっこ【毎週ショートショートnote】

「あーあ、もう、ほんっとサイアク」
「まあまあ、落ち着いて」
「落ち着けるわけないでしょ」
「私もまだ信じられないよ。まさか彼が、あんなにあっさりなびくなんてね」
「ほんっとバカだよね。ちょっと新しい女の子が寄ってきたら、すぐ心を許しちゃってさ」
「バカは言い過ぎでしょ。そんな彼を好きになったのは誰？」
「それ言ったら、あんただってそうじゃない」
「そうよ、だから、もうちょっと言葉を選んでほしくて」
「愚痴くらい言わせてよ！」

ああ、ダメだ。
やっぱり、二重人格ごっこなんてしてみたって、心は晴れない。

知らない子と付き合い始めたアイツに幻滅する、潔癖なあたし。
ショックを受けつつも、仕方ないと諦めて、いい思い出にしようとしている私。

……そして、もう一人。
彼を諦めきれない、まだ好きなままの自分。

本当は三重の感情なのに、ひとつを見ないふりしたままには、やっぱり、できないよ。
複雑に絡まった感情は、絡まったそのままで、一粒、瞳からあふれた。

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