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名を自動転売鬼【毎週ショートショートnote】

稼ぎが少しでも悪くなると、あいつはさっさと見切りをつけ、私に新しい仕事場と名前を充てがった。

「はじめまして、ミキでーす」
「ルナって言うの、よろしくね」

様々な店の女とそのポジションを、右から左へ流れるように買い取っては売り飛ばしていたあいつは、良く言えば歓楽街を半ば自動的に更新し続け、新陳代謝をもたらす「なくてはならない存在」であり、悪く言えば――血も涙もない、というよりは、血でも涙でも何だって捌いて儲けの道具にする、金の亡者、転売の鬼だった。

一度、その鬼に興味本位で尋ねてみたことがあった。

「あんた自身はなんて名前なの?」
「とっくに売ったよ。この街じゃ、邪魔なだけだ」

確かにその通りだと思った。

だから私は、仮初の名前を更新し続け、名前も知らぬ男達を相手し続け、名前のない金を稼ぎ続けて、いつか最初に売られた本名を買い戻し、この街を出ていく。そう、決めている。

そのときには――
この鬼の本名も、一緒に買い取れるだろうか。

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