夜光おみくじ【毎週ショートショートnote】
この神社のおみくじはよく当たると評判だ。
ずらりと並ぶ中から自分で選ぶ珍しい形式で、「その人にぴったりな内容のくじが光って見える」なんて噂も聞いたので、あえて暗くなってから来てみたが、どれもさっぱり光る気配がない。
結局、当てずっぽうで選んだ。
【末吉】
……パッとしない。
内容を読んでも、どの項目も可もなく不可もなく。恋愛運も『出逢いのきっかけを見逃さなければ成就する』なんて、今、光るくじも見つからなかったってのに。
結んで帰ろう、と境内の木へと向かう。
と。
すでに枝に結ばれていたくじのひとつが、……ぼんやりと、光って見える。
「え?」
どういうことだろう。
思わず枝から外し、開けてみる。
「あっ……それ、私の」
背後の声に振り向くと、素敵な着物の女性が、息を切らしている。
「それ【凶】で……でも、恋愛運だけは良かったから、一度は結んだけど、やっぱり持って帰ろうと思って……」
――くじには、『待ち人は遅れるが必ず来る』と書いてあった。
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