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人生最後の振袖

先日、無事に結納を終え、入籍をした。

今は、必死に苗字変更に走り回る日々を送っている。
どうにか最低限はGWを迎える前に間に合いそう。


結納のときに、振袖を着た。

成人式よりも薄い色を着ようかと思ったが、全然似合わず。
迷いに迷った結果、ひとつの結論に行き着いた。


『そうだ、20歳の時に着れなかった赤を着てみよう』


成人式のときは、衣装の予約が遅れたのと、背が足りないのとで、
赤の着物を諦めて、青の着物を着た。

この着物も、とても好きな着物で、巡り会えてよかったなと思う。

ただ、赤への思いはどこかにまだ残っていた。


いざ、赤の振袖を着てみると、一気に顔が明るくなったように見えた。
他の色を着たときにはうーん…という感じでもやもやしていたのに、
この振袖を来た瞬間、ピンと来たのである。


これを着よう。


こうして、20歳の時には諦めた『赤』の振袖を着ることになった。


当日、結納の朝。
結婚式場のドレスルームでプロの皆様に着付けとヘアメイクをしてもらう。


結婚式当日も、こんな感じだろうか。
ちょこちょこっとお話しながら、てきぱきと私を見て1番綺麗に見える方法を探してくれた。

成人式の前撮りよりも、当日よりも、素敵に仕上げていただいたと自信を持って言える。


そして、いざ結納の会場へ母親と向かう。
先に父親が着いていたのだが、私の振袖姿に目をまん丸にして驚いていた。

実は成人式の時、父親は仕事だったので、私の振袖姿を見ていない。

いつもはあまり物事に驚いたりしない父親なのに、この日ばかりは本当にびっくりしていた。


もともと結納は、しないつもりだった。
でも、私の両親の意向で、形だけで良いので縁起ごととしてすることになった。


何のためにするのか分からないまま事務的な打ち合わせが続いて、
うまく意思疎通がとれなかったり、急に内容が増えたり変わったりして。

2日前くらいまで、結納の『ゆ』の字さえ聞いたら発狂するくらい、本当に嫌になっていた。
それはそれはもう、死にたくなるくらい。
入籍してからやることにもどんどん追われていって、追い詰められて、ほとんど寝れない日もあった。


でも、結納当日、父親のびっくりして喜んだ顔を見て、
私は泣きそうになるくらい、嬉しかった。


ああ、私にとっては、

この姿を父に見てもらうための結納だったんだ。


すっと心のもやもやが落ち着いた。


お嫁に行く前に、綺麗な姿を見てもらえて、本当に良かった。



また、夫も成人したあとに出会ったので、私の振袖姿は見たことがなかった。


彼もこの日に向けてものすごく辛かっただろうと思う。

でも、当日私を見た瞬間、目がぱぁぁっと輝いたのがわかった。


喜んでもらえて、嬉しかった。


結納のあいだじゅう、彼はずっと嬉しそうにしていた。
終わったあと写真もたくさん撮ってくれた。

ありがとう。



私は振袖を着ただけだ。

でも、大事な人たちがとっても喜んでくれた。


あれだけ大変だった結納の準備のもやもやも、みんな消し去ってしまうくらい。


人生最後に振袖、着てよかった。


最後に着る機会を作ってくれた家族に、感謝している。

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