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読んだメモ:「「キモさ」の解剖室」

やだ!キモい!と、とてもこそばゆくてムズムズしてくる本でした。精神科医の春日武彦先生が、人間の「キモさ」について語りまくっている本です。

まず、「キモい」を9つに分類しています

1.グロとキモい
グロさは直接的だけれど、そこからキモさを感じるのは想像力

2.危うさとキモさ
日常生活の安定感や安心感をさりげなく揺さぶってくるどこか危うげな世界

3.陰湿さとキモさ
陰湿で卑劣な精神の持ち主は、善人を装いつつ「えげつない」振る舞いをすることによって、キモさをむき出しにする

4.鈍感さとキモさ
鈍感であることによって、無意識にキモい精神を露呈させている。

5.厚かましさとキモさ
ためらいのない良識の踏み越え、他人の尊厳を踏みにじる行為

6.心の弱さとキモさ
強さと弱さが相対するキモさ

7.おもしろ半分とキモさ
「だって面白いじゃないですか」という言葉の無神経さと無責任さから析出するキモさ

8.不可解さとキモさ
事実の共有、感覚の共有など、思い込みで見ているかもしれない出来事のキモさ

9.可愛さとキモさ
可愛さに意外性が+されると「キモ可愛い」存在に昇格する。
「キモい」という言葉について
「キモい」とは、気持ち悪いの略。この言葉が最初に登場したのは、1979年という説がある。若者言葉として使われる様になったのは、1990年代後期から。

「キモさ」について、あれこれ考える以前に、この本自体がとてもキモくてびっくりしました。「うわぁーこの本キモいなぁ。キモすぎる。」と感じた点は大きく2つあって

春日武彦先生、小学校時代の記憶を鮮明に覚えすぎていて「キモい」
本の内容の大半が、先生が今まで出会ってきた「キモい」人「キモい」体験を主に書かれています。それを読んでいると「え?やだ!何でこんなに昔の事を鮮明に記憶しているの?!」と感じてとても「キモい」です。「○○くんが、確かあの時あんな事言ってたよね〜?あれ違った?」という曖昧な記憶じゃなくて、事細かに内容を覚えていてその時の感情まで掘り出してくるんです。この「キモさ」は私の想像の範疇を超えた記憶力と、感情のしつこいさに恐怖を感じている「キモさ」です。
私は小学校当時の出来事を「○○くんが、あの時あんな事言っていて、私はこんな気持ちになったんだ」とか、そんなに詳細に記憶していないです。やっぱり「先生」と言われる人は記憶力があって、その辺のぼやーと生きている私とは脳の回路が違うのかな?
しかし私の今までのぼんやりとした思い出の記憶を辿っていっても、今まで出会った人達にもそんなにめちゃくちゃ「キモい!!」と感じる人はいないようなきがする…。と、いうことは、私は他人に「キモさ」を提供している側の人間であって、分類でいうと、4(鈍感でキモい) 5(厚かましくてキモい)のゾーンにいる人間なのかもしれない。「やだ私キモい!!!!」と段々感じてきて、すごく「キモい」気分になりました。

■祖父江慎さんのブックデザインもとても「キモい」
祖父江慎さんのデザインされた本をじっくりと堪能するのは初めてですが
「うわーやだ!」とむず痒くなるデザインだと感じました。「キモい」デザインを作り上げている執拗さにとても「キモさ」を感じました。

キモいと感じたところ
・促音(小さい「っ」とか)の場所を、多分あえてズラしてアンバランスな場所に置いている。
・「キモい」とい文字組もバランスを崩している「キ」を大きくして「モ」が小さいとか(カタカナ全般バランス怪しい)
・文章中のKWとなっていそうな漢字のサイズを変えているか、書体を変えている。
・ノンブルのベースラインがズレてる。

私が気付かないだけで、まだまだ、執拗にデザインされている部分はあるかもしれないけれど、私が感じた「キモさ」は4つでした。


でも「キモい」のは人間のデフォルトの仕様?
人の感情や行動・思考について考えていくと、何が当然で、何が当然じゃないのかがよく分かりません。私の当然があの人の当然とは限らないと思っています。「キモい」と感じる所は多分「自身が考える当然が、相手に当てはまらない時に起こる感情」なのかな?と、おもいます。
そしてデザインを生業としている所で、その部分が一番面白いなぁ。と感じる部分です。私がいいと思うデザインと、相手がいいと思うデザインは当たり前に違って、それでも相手に歩み寄ろうと沢山想像したり観察したりして相手の気持ちによりそえる物を作っていく。もしくはお互いが共有できる感情を生み育てて行く過程を作る。というような所。
「やだぁキモー!」から「キモかわいいから好き」「キモいけどじわじわくる」「この部分、皆キモいと感じるよね」とかとか。
社会を生きていく上で倫理・法律、ルールがあるけれど、すごく極論で言うと「人を殺してはいけない」という言葉に対する理由や考え方も人それぞれあって、全ての人がその考え方を共有できるとは限らないと考えます。私の感情や思考を他の人とまるっと共感できるなんて、そんな面白いこと本当にあるのかな?と不思議な気持ちになります。
だから、「キモい」感情は人間のデフォルト仕様で、私も含め人間全部「キモい」。「キモい」から相手の事をもっと知ろうと感じるし沢山コミュニケーションとろうと行動するんだよね?きっと。

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