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みんな我が子――All My Sons
シンプルな舞台装置。三幕ものだが一度も舞台転換することなく、ケラー家の中庭だけで息の詰まるような台詞劇が展開する。冒頭から、濃密な時間が流れていく。一つひとつの台詞が、確かな意味を帯び、劇場全体に染み渡るように響いていく。舞台で起きていることを受け止め、この家族――父ジョー(堤真一)、母ケイト(伊藤蘭)、長男クリス(森田剛)、そして戦争から未だ帰らない次男ラリー――に何が起きたのか何が起き
もっとみる多様な家族のかたちを丁寧に
地味だが良質なドラマだった。惹かれあう二人が、困難を乗り越えて、最終的にはくっつくというラブストーリーの王道的展開をベースにしつつも(当て馬的キャラの献身的男子もちゃんと登場)、さまざまに揺れ動きながら確実に変わりつつある現代社会の家族のかたち、愛のかたちが丁寧に描かれていた。
そもそも妻に先立たれすっかり生きる気力をなくしている、「学問一筋」「生活能力ゼロ」の辞書編纂者の父と、三十過ぎ