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ドラマ・演劇について、感じたこと考えたことを、自由気儘に綴っていきます。楽しんでいただければ幸いです。無限の「虚構の世界」と現実の関係について、つらつら考えています。専門は、社会学です。

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草彅剛の慶喜 ――栄一が主人公でなければけっして描かれなかった物語

傑作の呼び声高い昨年の大河ドラマ「青天を衝け」は、史上最高の「慶喜」と評される草彅剛のキャスティングなしに語ることはできない。  これまで、大河でも慶喜を演じた俳優は何人もいる、そしてさまざまな演出を施され、その人物像が描かれてきた。「二心殿」と呼ばれたというエピソードからも、一筋縄ではいかない掴みにくいキャラクターであるというイメージは定着している。「何を考えているかわからない」というミステリアスな要素は、どんな慶喜にも多かれ少なかれみいだされる。この大河では、「輝

    • みんな我が子――All My Sons

      シンプルな舞台装置。三幕ものだが一度も舞台転換することなく、ケラー家の中庭だけで息の詰まるような台詞劇が展開する。冒頭から、濃密な時間が流れていく。一つひとつの台詞が、確かな意味を帯び、劇場全体に染み渡るように響いていく。舞台で起きていることを受け止め、この家族――父ジョー(堤真一)、母ケイト(伊藤蘭)、長男クリス(森田剛)、そして戦争から未だ帰らない次男ラリー――に何が起きたのか何が起きているのかを考えようと、舞台から一瞬たりとも目を逸らすまい、一言も聞き漏らすまい

      • パラダイス

        あまりにも救いのない物語。二時間という比較的短い上演時間だったが、ずっと胸が圧迫されるような重苦しさで、観終わってどっと疲れが襲ってきた。  主人公梶浩一(丸山隆平)は特殊詐欺グループのリーダーで、忠実な相棒真鍋清(毎熊克哉)ともに、生きていること自体を「罰」だと感じるような「もう終わってる」若者たちを一人前の詐欺仲間に仕立てるべく、その「教育」を任されている。浩一の上役のヤクザ辺見豪(八嶋智人)とそのボディガード青木幸司(水澤紳吾)は浩一の動向を執拗に探り監視してい

        • 多様な家族のかたちを丁寧に 

          地味だが良質なドラマだった。惹かれあう二人が、困難を乗り越えて、最終的にはくっつくというラブストーリーの王道的展開をベースにしつつも(当て馬的キャラの献身的男子もちゃんと登場)、さまざまに揺れ動きながら確実に変わりつつある現代社会の家族のかたち、愛のかたちが丁寧に描かれていた。  そもそも妻に先立たれすっかり生きる気力をなくしている、「学問一筋」「生活能力ゼロ」の辞書編纂者の父と、三十過ぎて結婚する気配のない娘が、父娘で「婚活」を始めるという設定に、「あ~、(現実には

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        草彅剛の慶喜 ――栄一が主人公でなければけっして描かれなかった物語

          家族の再生の物語

          2022年春ドラマといえば、やはり特筆すべきは「マイファミリー」だろう。物語の展開がまったく読めず、次週の放映をこれほど心待ちにしたドラマは久しぶりだった。(録画でしかドラマをみない娘が毎週リアルタイムでテレビの前に現われたのには驚いた)。昨今流行りの「考察」ドラマと思いきや、展開のための展開や無理筋のミスリードを極力排したつくりで、タイトルに表われているように、「家族」をテーマにしたまさに「ノンストップファミリーエンタティメント」になっていた。  俳優陣の周到に考え

          家族の再生の物語