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ナンセンスな下書き または名前の話



あなたが大事にしてるあのロシアンブルーのぬいぐるみね、昔はおかあさんのねこだったんだよ。
あなたその子に名前付けたわね。ベリーちゃん?ロシアンブルーだからブルーベリーで、ブルーベリーだからベリーちゃん。そっか。おばあちゃんは昔、あの子のことをだいごろうって呼んでたけど、お母さんはその名前が気に入らなかった。ベリーちゃんは気に入ったよ。
あのねこちゃんを抱っこして寝る夢を見よう。ほらあなたが名前を呼んだから、今ちょっとあそこのかごの中からのぞいて、それからそっと降りてきたよ。音も立てずに。
右見て、左見て。テレビの音がして光がちかちか動いているから、リビングの方に少し行ったけど、そこで立ち止まってじっと見てる。違うな、ここじゃないって思ったな。引き返して廊下を歩いてきたよ。
お布団の部屋に入ったらもう、子供二人に踏み荒らされてめっちゃくちゃにもこもこしてるから嬉しくなって入り口に寝てるお兄ちゃんを障害物だって飛び越えてね、こっちに歩いて来たよ。そこで初めてにゃおんって鳴くの。ほそうい声で。
この足とお腹のくぼみのところにちょうどおさまって、ゴロゴロゴロゴロ鳴いてるよ。
結局お母さんは名前を決めてないんだよね。おばあちゃんはだいごろうって言い、あなたはベリーちゃんって。結局決めてない。
何かがなかったら、何かがあるの。
よい出会いの話は憧れをかきたてるだけ。
極めればきりがないし、上を取れば維持しようとして踏ん張るでしょう。
何もしなければ生きてる意味があるのか?という問いが追いかけて来る。
いきなりどうしたのかって?
気にしない気にしない、ナンセンスなつぶやきです。
ナンセンスって不老不死みたいなこと?って?
そうかもね。
あの子はベリーちゃんになった。お人形もね、すみれちゃんて名前をつけてくれた。あれは最高にいいと思ったよ。
今日は幸せに眠れます。



おわり


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