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秘密機械(ナンセンス・短編)

天海 悠



休憩室で女子が三人、二人は食べ終わったカップ麺をほったらかしで肩を寄せ合ってうわさ話をしている。一人は椅子に深く背中を預けて、携帯を見ながらそれを聞いていた。

「本山くんの秘密機械の話を知ってる?」
「知らない」

休憩室のガラス張りのドアから見える扉を目でさした。

「本山くんの、命から十五番目ぐらいに大事にしてる秘密機械があるんだけど」
「けっこう順位低いね」
「すごいことが起きて、時空が反転しちゃうんだって!」

顔が近い。

「そんなことが起きちゃったら大変じゃん」
「大丈夫」

自信満々な口ぶりで、さらに顔を低くしてささやいた。

「本谷くんが教えてくれたんだけど」

椅子に体を預けていた子が、視線は携帯に置いたままで口を出す。

「その二人、字だけで見ると混乱するんだよね」

本山ー本谷ー本山ー本谷…。

「もうどっちがどっちだったか、わからないや」
「本谷くんが教えてくれたんだけどね、秘密機械を触りながら霧島サトシの歌を歌う」
「誰?」
「伝説の指名手配犯」

携帯を見ている女子が、こともなげに言う。

「ああ、本谷くん、指名手配犯が大好きだから」

聞いている方は困惑の極みだ。

「指名手配犯が大好きな本谷くんが、時空を反転させる本山くんの秘密機械を歌で阻むの?」
「そう、歌うの。そうすると」
「そうすると?」
「必ず壊れる」

秘密機械が?

やば。

「そもそも、霧島サトシの歌ってどんなの」
「歌はね簡単だよ。歴史にどっきり☆って言う番組の、中大兄皇子の歌の節に合わせるの。歌舞伎の人が歌ってるやつ。こんな感じだよ」

「きーりーしーまー」

「やめろ!」

奥の 研究室 から怒鳴り声が聞こえてきて、みんな首をすくめ、それから顔を見合わせてしのび笑いをした。

「本谷君はそれを歌って、ゲームがぶっ壊れたにも関わらず歌ってるの。休憩室のテレビもあれで呪われた」
「あっ!」

椅子に深く腰掛けたまま、携帯からはじめて目をあげ、指をさした。

「ザザーッてなってる、それ」
「なってるの、それで」
「こっわ!」

三人は喉をそろえてきゃらきゃら笑った。
開いた扉の向こうからは、ブーンとかすかな音が聞こえた。



おわり。



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天海 悠

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天海 悠
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