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超短編小説|大人のコーヒー

今日は、少し短めのお話をお届けします。
3分くらいで読めると思います。

 初めて飲んだコーヒーは苦かった。
得体の知れない黒い液体は、少女のわたしの好奇心をき立てた。それはまるで、用水路を流れる泥水のようであった。けれど香りを嗅ぐと、うっとりと夢見心地な気分になるものだった。

 母はいつもコーヒーを飲んでいた。
そのため、濃厚なコーヒーの香りは部屋中をふわふわと漂っていた。

 わたしもコーヒーを飲んでいた。
母はコーヒーの量が減っていることに気づくと、すぐにわたしを叱った。母はきまって、「コーヒーを飲むと、背が縮むのよ」と言った。

 わたしは背が縮まないことを神様に祈りながら、小さな手でコーヒーカップを手に取り、母にばれないようにこっそりと飲んだ。何度飲んでも、甘くはならなかった。病院でもらう苦い薬の方がよっぽどましだった。

 けれど、それがコーヒーというだけで、わたしは何か特別な響きを感じていた。コーヒーと呼ばれる液体を飲んでいるというだけで、わたしの背は縮むどころか、高くなっている気さえした。

 わたしは、別にコーヒーが飲みたいわけではなかった。大人が大事そうに飲んでいる飲み物をほんの少し、分けてほしいだけなのだ。

 母がコーヒーを飲んでいるあいだ、隣で兄がコーラを飲んでいた。兄はコーラをごくごくと音を立てて飲んでいた。わたしはコーラを分けてもらうおうと頼むと、「コーラは飲みすぎたら、骨が溶けるぞ」と兄は言った。どうやら、大人の飲み物には犠牲が付きものらしい。

✳︎✳︎✳︎

 わたしは、喫茶店に行った。
それは、昔ながらの古めかしい喫茶店だった。店主が目の前でコーヒーを淹れてくれる贅沢な店だった。注文をするときは、とても緊張した。

 けれど店を出たとき、わたしは少しだけ背が高くなった気がした。遠い昔の懐かしい感覚だった。理由は分からないけれど、そんな気がしたのだ。

 改めまして、雨宮 大和あまみや やまとです。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
 今日は、「コーヒー」をテーマに短いお話を書いてみました。書いていて、すごく楽しかったです。これからも、テーマを決めて、短いお話を投稿していきたいと思います。少しまえに投稿した『かくれんぼ』のような短編小説は、そんなにポンポンと出せないけれど、800字くらいの短いものなら、比較的高頻度で出せるかもしれません。もちろん、内容を考えるのはそれなりに時間は掛かりますが…
  最近は、つぶやきが多くなっていたので、今日みたいな少し長めの投稿も少しずつ増やしていきます。これからも読んでくれたら、嬉しいです。
 それでは、また明日!!

次に読むなら

町にひっそりとたたずむ不思議なカフェのお話です。10分くらいで読めると思います。時間がある時に、ゆっくり読んでみてください。できれば、コーヒーを片手に。

おじいさんと少女の物語です。
おそらく、1分で読めると思います。

人工知能を購入した世界を描きました。
1分くらいで読める物語です。

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