日常に潜む不思議な物語。
村田沙耶香さんを知ったのは、芥川賞を取った2016年だ。
それから、『コンビニ人間』というタイトルを本屋で何度も見かけた。けれどその時、僕は手に取ろうとはならなかった。別に文学賞に対して、嫌悪感を抱いていたわけではない。なんとなく、手に取るのをはばかられたのだ。
今思えば、おそらく、何十万部も突破しているような人気な本を読む気にはなれなかったのだと思う。僕は食わず嫌いをしていた。
それから何年か経って、今年、村田さんのエッセイ集『となりの脳世界』を買って、なんとなくダラダラ読んでいると、自分と同じタイプの人間なのではないかと思うエピソードがいくつかあって、はっとなった。
僕も同じだった。2、3回会ったことのあるレベルの人だけでなく、冗談を言い合えるような間柄の人たちでさえも、名前を思い出せなくなることがあるのだから。
たとえば、「誰だっけ。ほら、あのひと。この前言ってた…」みたいに、会話が途切れてしまうことも日常茶飯事だ。だから、最近は、話す前に名前を覚えているかを確認している。けれど、名前を思い出しているうちに話題が変わっていることもあって、そんな時は終電に乗り遅れたような残念な気持ちになる。
これについては、過去のnote『人の名前が覚えられない。』にも書いている。まだ読んでいない人がいれば、時間があるときに読んでほしい。
そんなわけで、僕は村田沙耶香さんの魅力に気づいてしまった。そして、ついに本屋で小説を手に取った。『コンビニ人間』とか『地球星人』とか人気の作品を中心に買った。出ている本もそこまで多くはないので、キャッチアップできると思う。
そして、今日読んだのは『信仰』という本だ。今年の6月に出たばかりの本だ。これには、短編小説やエッセイが8つ収録されていた。
これを読んで、まさに今自分が読みたい小説だと再確認できた。
僕が好きな小説は、「日常に潜む不思議なお話」だ。けれど単に「不思議さ」だけで終わるものはあまり興味がなくて、作品の中の奥深くに伝えたいテーマが眠っているような作品を読みたいと思う。
村田沙耶香の小説は、一言で片づけることができないテーマを「不思議な物語」が代弁してくれるような作品だと思う。
そんなわけで、まだ途中なので、今日はこれから『信仰』の続きを読もうと思う。
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