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 刺され、刺されと懸命に言葉を紡いでいた少女。
誰かの苦しみ、固い殻壊して、殻から溢れだしその涙の温もりで少しでも、抱きしめたい。この温もりが刺さって欲しいと思っていた。


 僕はイライラとする蒸し暑い夜、煩く周りに飛んでいる蚊にさえ「死ね」と、醜悪な言葉を吐き捨てていた。
 感情を殺した亡骸を、吐き沈め吐泥(へどろ)になり溜まった泥が僕の心の底にある。

 蚊と自分の底が繋がり、中を掻き混ぜると吐泥が巻き上がる。濁ったように心も靄がかかる。やっと吐き捨て殺した醜悪さが吐泥の濁りに変わろうとしている気配が漂う。泥が殺意の形になりそうで心細くなった。鬱陶しい善意で不用意に少女が近づく、泥は加速して殺意に刺さり形になり浮上して芽吹いしまう。君のせいだ畜生め…。


 吐泥の様な眠りから目が覚め、無意識に潰した蚊から温かい血が出てる事に気がつく。生温かく気持ち悪い。言葉を紡ぎ人を愛したいと思った少女。それはとてもとても美しい人でした。


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