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算数授業の板書①
8回連続でのnote投稿となりました,天治郎です.今後、私が長期研修時代にまとめたこと(テーマ「算数を創る」)をブラッシュアップして投稿していきます.
今回のテーマは「板書」です.明日,Twitterで関連図解も投稿する予定です.よろしければ、ご覧ください.お忙しい読者のために,以下が本稿の要旨です.
〇板書の意義は、
児童の数学的活動を視覚化し,
・児童の思考過程を反映し,共有し,整理する場になる.
・学びの結果や過程を振り返る場になる.
・新たな問いや発見をする場になる.
〇「デジタルとアナログの両輪」という立場に立った時、板書の重要性はより増していると考えます.
(1)初めに
田村(2018)は,これからの授業における板書について,以下のように述べています.
これまで行われていた学習成果を記録する機能としての板書から,学習活動や思考を促進する機能としての板書へと質的な転換を図ることが求められている.(p.108)
板書においても,内容ベイスではなく資質・能力ベイスの変換が求められていると捉えることができます.では,具体的にどのような板書が数学的に考える資質・能力を育成する,また,「算数を創る」上で求められるのでしょうか.細水(2007)は,考える力と板書との関係についてについて,以下のように述べています.
算数科が,知識・理解,技能の伝達だけではなく,数学的な考え方の育成を目指していることを考えると,むしろ,考え方をしっかり押さえ,身につけさせていくことが大切である.私は,「考える力を伸ばすには,考え方を板書しなければいけない」と考えている.(p.18)
そして,江森(2012)は,よい板書について,以下のように述べています.
発問に深さがあるように,板書にも深さがなければならない.よい発問から出発したよい授業には,奥の深い板書が残される.人が考えるということはどういうことなのかが,よい板書にはきざみ込まれている.(pp.161-162)
両者は,児童の考え方を板書に残すことの重要性を指摘しています.
(2)板書の意義
続いて,「板書の意義」について,検討します.
二宮(2010)は,算数・数学科の板書についての基本的理解について,次のように述べています.
黒板は,教師が「正しい答え」を書く場所というよりも,よりよい授業を進めていくための場所と見なされている.別の言い方をすれば,黒板は子どもたちに正しい情報を伝えるための場所ではなく,子どもたちの活発な算数的活動/数学的活動への積極的な参加を促すための場所となるべきなのである.(中略)授業が終わったときの黒板を見ることで,すべての参加者がその授業でなされた様々な算数的活動/数学的活動を思い起こすことができるようにあるべき(p.38)
また,新井(2012)が,数学科の授業における板書とは何かということについて,以下のように述べていることからも,板書は,「数学的活動の充実」を図る上で重要な手立てであると捉えることができます.
板書は「問題をとらえ,解決の見通しや結果の予想を行い,課題を据えて確認し,追究して,結論を導き,学習をまとめる」という一連の授業の流れを仕上げていく具体的な表現です.(p.13)
一方,細水(2007)は,板書によって授業が決まると指摘した上で,板書の意義について8点を挙げています.その中でも,筆者が注目した意義が,
みんなの考えを持ち寄る場になる
みんなで考える場になる
子どもたちの考えが生きる場になる
思考を整理する場になる
の4つです.また,夏坂(2012)は,子どものための板書について,以下のように述べています.
板書は視覚的説明の働きをもつものです.学習内容のポイントを整理し,子どもたちが考える手がかりや考えてきた道筋を示すものでなければなりません.言いかえれば,黒板とはクラスで考えを共有し,新たな問いや発見を生む場であるべきです.それが「子どものための板書」です.(p.3)
そして,谷・小原(2014)は,板書について,次のように述べています.
授業は双方向であり,計画通りの板書をすれば授業が成功する訳ではないが,日本の算数数学科における板書では,その成功裏にいかない過程までも含めて,児童生徒の考えの推移を視覚化することができ,学習目標からまとめまでの展開を反省可能な形で示すことで過程志向の授業の質を担保する一つの具体的な手段であることは疑いない.(p.38)
加えて,日本の算数・数学科における板書の基本的な特徴として,「協同的な思考過程の反映」「学習の流れが授業後にも一目で振り返れる整然さ」の2点を挙げています(pp.36-37).
以上のことから,「板書の意義」を,以下の通り捉えることとしました.
児童の数学的活動を視覚化し,
・児童の思考過程を反映し,共有し,整理する場になる.
・学びの結果や過程を振り返る場になる.
・新たな問いや発見をする場になる.
尚,細水(2007)が板書の役割について,
板書を通して,教師と子供とが創り上げていく過程を視覚的にとらえやすくすることで,算数のよさや楽しさが味わいやすくなる.板書で学習の流れを振り返ることによって,学び方も身につけることができる.(p.37)
と述べていることから,板書を通して,算数のよさや楽しさを味わったり学び方を身に付けたりすることもできるともいえるでしょう.
(3)終わりに
GIGAスクール構想が学校現場に導入して以来,板書の重要性は低下したように思われる側面もあります.しかしながら、「デジタルとアナログの両輪」という立場に立った時、板書の重要性はより増していると考えます.よりよい板書の在り方をこれからも探究していきます.
最後までお読みいただき,ありがとうございました.御意見等お待ちしております.
【引用・参考文献】
新井仁(2012).中学校数学科 授業を変える「板書」の工夫45.明治図書.
江森英世(2012).算数・数学授業のための数学的コミュニケーション論序説.明治図書.
細水保宏(2007).確かな学力をつける板書とノートの活用-授業をもっと楽しく,魅力あるものにしよう!-.明治図書.
夏坂哲志(2012).夏坂哲志の板書で輝く算数授業 教師の表現力を育てよう!.文溪堂.
二宮裕之(2010).板書とノート指導を中心に.日本数学教育学会誌 算数教育,92(12),38-39.
田村学(2018).深い学び.東洋館出版社.
谷竜太・小原豊(2014).算数数学科の問題解決授業における板書の機能.日本数学教育学会誌 算数教育,96(7),36-39.
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