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「はじめよければすべてよし」とはよく言ったもので

お仕事先にて、“完成直前に解体されてしまうマンション”の話で持ち切りになる。私の取引先は建築関係が多いため、「どうしてそうなったのか。担当者の心境は大丈夫なのか?」といった話で想像を膨らめた。

様々な手順を踏んでの建築工事にも関わらず、形がなくなってしまったことは、あくまでも想像の限りになるが、「はじまりのときに察するものはあったのかもしれない」とも思った。

最近あった私の失敗談も交えて、仕事の進め方について考えてみます。

建設関係の人とお話していると出てくる言葉の中に「フロントローディング」という単語がある。

まずはこの用語について解説すると、下記です。

フロントローディングとは、「Front(前)にLoading(負荷をかける)」の2単語で構成されており、“ものづくりの前工程である設計・開発の初期段階で生産・保守の段階まで想定して品質やコスト、仕様などを作り込むこと”を意味します。

出典;https://go.orixrentec.jp/rentecinsight/it/article-190

具体的には、設計図の整合性をとっておくことで、工事現場での仕事がやりやすくなるということだ。「え、設計図が間違っていることがあるの?」って思うかもしれないが、実はよくあること。

木造住宅の建築では「現場合わせ」という言葉があって、設計図に描き込めていない詳細部分は、大工さんの現場判断で作り込んでいく慣習もあり、そこが腕の見せ所でもあるようだ。

しかし、ビルの建築のような大きなものになるとそうはいかない。

設計図が誤っていると、発注する材料の数やサイズが違ってしまったり、それによる材料の作り直し、運搬のやり直し、作業員の人員計画、あとは各種調整などが必要になってくる。壁の内側は複雑で、「空調の配管と、水道の配管が干渉しているから設計やりなおし!」ってことも無きにしもあらず。それによるコスト増が数百万円…!

設計図の整合性がない場合、仮に現場判断で工事を行った場合は、建築申請の関係で結局はまた設計図に手を入れることになるというのだから、最初に設計図の整合性を高めておくことが大事なのは理解できたはず。

後工程で手戻りをなくすために必要な考え方が冒頭で説明した「フロントローティング」で、昔の職人さんの言葉でいうと「段取り八分、仕事二分」という言葉で表現されるものだろう。


こんなに大きな現場はどれだけの人が関わっているのだろう。建てたのに解体することになったマンションの話を聞いて、いろいろと考えてしまいました。時間、スキル、夢、思いと、関わる人の気持ちはどこへ行けば良いのだろう。

建築を例に出したけれど、私のような制作の仕事でも同じくで、できるだけ制作の上流で取り決めをしておかないと後工程で手間がかかって仕方ない。

私が最近やってしまった失敗では悔しい思いもしたので、次への教訓としてここに書きます。いずれも映像制作です。

失敗例1

ある解説動画にて。映像を作るときインタビュー形式で作るものもあれば、シナリオを作り込んでそれに沿って情報を詰め込んでいくパターンがある。

例えば「税制」など、決まったルールを伝える解説動画の場合は後者の作り方を推奨している。使う用語も間違ってはいけないのでシナリオをかっちりと作ってから、演者はシナリオに沿って話し、時にはプロンプターを使い、必要な素材を準備していくのだ。

ところが、シナリオを作るはずのお客様がシナリオを作ってなく、打ち合わせもできなく、撮影当日を迎えたら現場進行ぐちゃぐちゃ、撮影拘束時間が増えてカメラマン代は増額、結果編集担当者にも負担がかかってしまった。

このケースでは、編集担当者の力量が高く、編集力でカバーできたけれど、とにかく無駄が多くて反省。実はまだ納品できてなく、手離れも悪いです。見積りにシナリオ制作費を含めておけばこんなことにはなかったな…と反省。

●失敗例2

これもまた見切り発車で撮影日を迎えてしまったケースでの失敗例。
失敗例2は、シナリオはあったものの演者と編集者の力量不足でお蔵入りになってしまった。
「時間もコストもかけない」というオーダーに応えて座組を組んだものの、出したものはやはりそれなり・・・。期待値の調整はしたが、お客様側も欲が出て作り直しへ。安かろう悪かろうでは意味がないのだ。

この2つの失敗例が立て続けにあって、制作の仕事におけるフロントローディングの大事さをひしひしと感じている。

どちらも映像を例に出したけど、名刺サイズの印刷物だって同じだ。土台となるラフがあって、お客様と合意形成を図りながらつくっていかないと結局どこかで大きな手戻りが発生してしまうのだ。


ものづくりは最初が肝心。はじめよければすべてよしで、地盤、基礎が大事だね。

制作の場合はクリエーターの創造力にも頼りたいから「どこまで決めておくのか?」のさじ加減が難しいのだが。一つ言えることは「全員が時間に余裕を持って向き合う。考える。同じ方を向く」ということだ。

失敗例1も失敗例2も、どちらもスケジュール的な余裕が全くなくバタバタの進行だった。「急がば回れ」とはよく言ったもので、多少の余裕がないと結局は上手くいかない。

毎日忙しいけれと、詰め込みすぎずに余裕を持つことを習慣にしたい。頭ではわかっているんですよ~…!


仕事の最初のほうに向き合う時間を作ることにゃ。はじめよければすべてよし。


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