【短編小説】ミミズの求婚
「ミミズが蝶になるために、蝶々結びで死にました。ミミズはほんとは青虫だったと、遠くで誰かが言いました」
「何それ?」
「物語の結び。どこかの国の物語。小さい頃毎晩のように父が絵本を読んでくれたんだ。お母さんが亡くなってから毎日どうしようもなく寂しかったんだけど、父といるときだけは安心できたし、学童にいるときから夜の読み聞かせが楽しみで仕方なかった。父が帰ってくるのは毎晩遅いのにさ、目を真っ赤にしながら待って、物語を聞いてからじゃないと眠らなかったくらい。ほとんどの物語は忘