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【詩】きみと一枚の絵になれたら
木漏れ日が縫い上げていく
壊れたからだをあるべきように
虹色の森のなか
鳥や虫の透明な歌声がしている
光の収縮するリズム
ぼくの心音の優しい優しさ
それらを音楽として
きみは軽々と飛ぶ
影のないダンスのために
白いプリーツのスカートは
誠実に膨らみ
満足そうに春を呼吸している
きみは振り返り笑う
口角を柔らかく引き上げて
愛おしい歯を見せる
ご機嫌な八重歯の白い歯を
自転車で走ったらすぐに転びそうな
世界で一番ぼくの好きな歯並び
もぎたてのオレンジを絞ったような笑顔が
ぼくの小さな目に染みている
きみと一枚の絵になれたらな、と思う
何もかもやめて同じ風化を味わえたら
ぼくは画家であることをやめるし
自分のことさえ恐れない勇気を持つだろう
そうしたら
木漏れ日と睦むきみの桃色の唇に触れ生まれたての人の色をした花びらの舌をなめ喜びに震えながら小さな肩を抱ききみの頬の産毛に玉の光が跳ねるのを見つけ可愛い一組のニキビの陰にこころをあつめたぼくの指先を置きふっと息を漏らし二人を個にする壁例えばこの夥しい量の細胞の壁をぼくの黒目ときみの黒目で溶解させて境界を滲ませ澄み渡らせ視点のない自由をほんのひと時味わい二人の微笑みをこつんとぶつけ美しい摩擦を起こすその愛は木々の梢を波のように伝わりふたりの町まで届く光をかき抱いたままの風は幸福な森を軽々と抜ける
葉が鳴る
お祝いみたいにしてしゃらしゃらしゃらしゃら
ぼくは
きみと一枚の絵になれたらな、と思う
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