毒親育ちで子供を愛せるか
昔から子供が嫌いだった。
というより、どう扱っていいか分からなかった。
どう話しかけたらいいのか、何も正解が分からない。
機能不全家族で育った私には正しい愛情のかけ方が分からない。
たくさん本を読んだ。
たくさん映画を観た。
世間的に言う「家族愛」がテーマの類のものを、読めば読むほど、観れば観るほど、わたしは混乱し苦しくなった。
これは現実に「普通に」存在することなのか。
それともドラマにありがちな「みんなが理想とするフィクション」なのか。
少なくともわたしの生育環境とはかけ離れたものばかりで、本や映画の中の「お父さん」「お母さん」は全く身近に感じられないし、あまりにも非現実的なので感情移入もできない。
ラストにさしかかり感動的なバックミュージックと共に主人公やその家族が泣いているシーンでも、わたしはただ冷静に画面を眺めるしかできない。
一緒に見ている人達が目をうるませたり鼻を啜ったりするのを見て、どうしたらいいのか戸惑った。
「子供が嫌い」ということを言うと人でなし扱いされる。
「子供が嫌いな女は地雷」とネットで見たこともある。
好きで嫌いになったんじゃないのに。
一番キツいのは、「貴方だって子供だった時期があるくせに」と言われることだ。
わたしは、自分で記憶する限り子供らしい子供時代を過ごした覚えはない。
全て親の言う通りに動かなければいけない。自分の意思なんてないようなものだった。
反抗期なんて存在しなかった。そんなものは許されない。
だから自分勝手にワガママに喚き、叫ぶような子供を見るともはや同じ人間とは思えない。
何が可愛いのかも分からない。
そして、それだけ好き放題して親に迷惑をかけている子供が、可愛い、と愛されていることが、
…許せない。
「良い子」にしていた自分が愛されなかったのに、なぜこの生き物はワガママだらけでも問題だらけでも、ありのままで愛されるのか。
嫉妬とも言えない、憎悪とも言えない、真っ黒な気持ちが私を包み込む。
お腹を痛めて産めば変わるなんて、わたしは信じない。
わたしから産まれたとはいえわたしと違う思考を持ち生きるその生命体は他人になる。
そのうえわたしが大切だと思う人に何の見返りもなく無条件で愛されるなんて、わたしはきっともし子供を持てばその子供が憎くてたまらなくなるだろう。
さらに正しい愛情のかけ方も分からない。
結局わたしの親と同じようなことをしてしまうかも。
負の連鎖。
だから、わたしは子供を産むという決断はできない。
毒親育ちの人すべてがこうだとは思わない。
わたしとは違って、正しい愛の形を知り、子供を持ち素敵な家庭を育むことの出来る人は沢山いると思う。
ただ、わたしはそこまで辿り着けなかった、それだけ。
周りの人達が当たり前に結婚、出産と次々にステップアップして行くのを見て焦ったこともある。
出来てしまえば変わるかもなんて思ったこともある。
でももし万が一にでもわたしのような思いをする子供が産まれ落ちてしまうのなら、わたしはそれを防がないといけない。世間体のためや老後の心配などの名目で簡単に命を宿してはいけない。
そう思うのです。
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