あますず(雨鈴)

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誰だって病気になる

2023年7月、東京の西新宿に建つ大学病院の病棟で、これを書き始めた。 特に何を伝えたいというわけではないが、いまを記録しておくことが必要に思えたので、思うままに書き留めている。 ここは病棟のデイルーム。 患者が自由に本を読んだり、仕事をしたり、見舞客と談話したりする開かれたスペースには、日常ではお互い交わることがないであろう様々な人がいた。 50代前後の女性は、ずっと仕事の電話で交渉ごとに向き合う。PCを見ながら「これは面倒だ」と呟きながら、コーヒーショップの紙カップを

    • ピルケースを自作💊死ぬまで薬を飲む生活になったので

      ─2023年、甲状腺がんに罹患。手術で甲状腺全摘+リンパの一部を切除したため、変化した生活と向き合いながら、思うままに書き留めている。 1日3回、食後に薬を飲む体になりました。甲状腺を全摘した結果、甲状腺ホルモンを薬で補う必要が出ました。 死ぬまで、この薬を飲むことになります。 手術前に長期的な不安は、この薬でした(チラージンと言います)。 もし…飲み忘れたら外で倒れたりするんじゃないか、突然死んだらどうしよう、わたしはもう普通の生活はできないのかも、お先真っ暗だわ。 これ

      • ある日、がんは雨雲のように訪れた。

        2023年7月、東京の西新宿に建つ大学病院の病棟で、これを書き始めた。 特に何を伝えたいというわけではないが、いまを記録しておくことが必要に思えたので、思うままに書き留めている。 2023年3月22日(水) WBC決勝をAmazonプライムで観ていた。 場所は、西新宿の大学病院の甲状腺外科の外来診療の待合室。 「ちょうどよかった、歓喜の涙だと説明がつく」 やっぱり日本人なら胴上げはするよね、とスマホの画面を眺めながら、目からは、ぽろぽろと涙がこぼれて落ちた。それは止まらな

        • 日和見の病床読書「くもをさがす」西加奈子・著

          ─2023年7月、甲状腺がんで手術入院の中に読んだ書籍の感想やら自分の話を連ねた徒然な話。特にためにはならない文章ですが、入院中におすすめできる本です。 西加奈子さんは移住先のカナダで乳がんに罹患。病の発覚、その治療プロセスや、友人からのサポート、日本とカナダの医療やカルチャーの違い、ご家族のこと、愛猫のことを綴ったエッセイ集。 書店でまず最初に目に留まる、本の帯に書かれたひとこと。 「カナダでがんになった。あなたに、これを読んでほしいと思った」 これ、まさに私に言ってる

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        誰だって病気になる

          降臨する、キャリーケースの勇者たち

          朝10時、昼13時。 今日も病棟のエレベーターを上がり、静かに勇者はやってくる。キャリーケースを引いて。入院のため新参者が訪れる時間だ。 私も4日前にここを訪れた勇者の1人だった。 みな、キャリーケースには、これから迎える非日常な日々に備えた装備を、思い巡らし詰め込んできただろう。着替え、下着、タオル、ディッシュボックス、コップ、歯磨きブラシ。人によっては、ひとときの休息と考えてお茶道具を一式、また別の人は普段では挫折しそうな重厚な書籍を持ち込み、次へとつながる時間に充てる

          降臨する、キャリーケースの勇者たち