ハコラッシュのゲームデザイン(前編)
はじめに
インディーゲーム開発サークル『SHOVE』代表の松本 聡と申します。
Unity1週間ゲームジャム(お題「あける」)にて
「ハコラッシュ」というゲームを公開させていただきました。
ゲーム開発サークルといっても、技量的には初心者同然でしたので、
参加した目的としても「練習すること」が一番でした。
技術的な分野でお伝えできるようなことは何もありませんが、
企画(ゲームデザイン)面であれば、多少は意味のある情報を
書けるかなと思ったので、本記事はその方針で進めて参ります。
1つのサンプルケースとして、参考程度にしていただければ幸いです。
準備
日曜の夜24時に、お題が発表されるということが告知されていました。
私にとって今回のゲームジャムは技術的な練習が目的なので、
お題の回収度合いとか、面白さはあまり追究しないつもりでした。
また、Unityでゲームを開発すること自体も初めてなので、
実作業にどれほど時間がかかるか見積りが立てられません。
少しでも後半にバッファを残すために、
企画検討にはあまり時間を割かないでおこうと考えていました。
具体的には、0日目(就寝までの時間)で考えた内容で
翌日から開発スタートしようと決めていました。
短い時間ではあるのですが、優先順位がハッキリしていましたし、
自分が発案者であり決裁者なので、非常に気楽なものです。
(会社の仕事だと「いくら時間が無いってもなあ…」という
葛藤と戦うことになるのでw)
さて、並行して企画内容の「フォーマット」も考えておきます。
前回(お題「ふえる」)の作品を何本か遊ばせていただき、
おおむね下記のようなの方向性だけ決めました。
・操作はマウスで完結するものにしよう
⇒ブラウザでページを開いてそのまま遊んで欲しい。
⇒個人的にキーボード操作がニガテだった。
・10分程度で終わるものしよう
⇒1つのゲームに長居してはもらえなさそう。
⇒サクっとクリアして気持ち良い状態で帰ってもらいたい。
・開始してスグに気持ち良さが体感できる形が好ましい
⇒最初につまづくとリカバリーが困難。極論だが出オチでもいい。
⇒操作説明を読ませるより、慣れて進める形式が良さそう。
・レトロゲーム(ファミコン)風の画作り/音作りにしよう
⇒各種リソースをフリー素材に頼りやすい。
⇒ゲームの粗も味に感じてもらえるかも。(言い方は悪いが)
・ランキングやハイスコアといったやりこみ要素は考えない
⇒今回はそこまで作りこむ自信が無い。
これぐらいのことをあらかじめ決めておけば、
あとは型に流し込むだけ…とまでは言いませんが、
ある程度パズルのように組み立てることができそうです。
ちなみに、今回は制約が多いので上記のような考え方を採りましたが、
いわゆる「コンセプト」からゲームを考える手法もあり、
私としてもそちらの方が親しみがあります。
適材適所で使い分け/調整していく感じが良いかと思います。
条件とお題からモチーフを考える
そしてお題「あける」が発表されました!
まず「あける」に対して考えを巡らせてみます。
開ける? 明ける? 空ける? あ蹴る?…
一見狭そうなのに、考えると意外と幅広いという、面白い言葉です。
ここで、準備段階で考えていたことに照らし合わせてみます。
『お題の回収度合いや、面白さはあまり追究しない』方針です。
もちろん無視するという意味ではなく、
要はシンプルに、素直に解釈することにします。
真っ先に思いついたのは「開ける」でした。
では何を? 扉? 箱? 窓?…
次はフォーマットの方から照らし合わせます。
『レトロゲーム風』の方針を固めていましたので、
それに適した題材が無いか記憶を辿っていきます。
思えば、人生で最初にプレイしたRPGは「ドラゴンクエスト4」で、
当時、宝箱を開けることのイベント感はすごくワクワクしましたし、
SEも独特の奥行きがあって小気味良い印象です。
『スグに気持ち良さが体感できる(出オチでもいい)』という
方針でもあったので、
「ファミコンっぽい宝箱を開ける」をモチーフにするのが合いそうです。
普通のゲームであれば、「宝箱を開ける」ことは手段にすぎず、
その先(中身)に嬉しさがあったり、
道中(過程)に遊びがあるものですが、
それだけのパーツを作る時間が無さそうなので、
今回は極めてシンプルに「開ける」自体を中心に据えることにします。
「宝箱を開ける」こと自体に、ポジティブな気持ち良さがあるので、
単品でも成立するモチーフだとも言えます。
ゲームデザイン
モチーフが決まったので、ゲームデザインに進みます。
個人的に、ゲームデザインというものは、
「ユーザーが遊んでくれるようにルールを設計すること」と捉えています。
(私自身も考え中ですし、色々なご意見があるかと思いますが)
何はともあれ、具体的なゲームのルールを検討します。
『操作はマウスで完結する』ことを決めていたので、
そのもっとも基本の操作である「左クリック」で、
「宝箱を開ける」が実現できるようにしようと思います。
つまり、『マウスで左クリックして宝箱を開ける』
というルールを設定します。
ゲームを進行させるためのルールも必要なので、
『画面上の宝箱を全て開けるとステージクリア』
というルールも追加します。
これらのルールであれば、『スグに気持ち良さが体感できる』でしょうし、
とりあえずクリックすれば進むので、つまづく可能性は低そうです。
一方、1つのステージの画面を想像すると、
宝箱1個開けて終わりというのは味気ないので、
必然的に複数の宝箱が存在する感じになりそうです。
1画面に複数の宝箱が置かれている…
RPGで言うなら、ダンジョンの宝物庫などがイメージに近そうです。
当然ワクワクするシチュエーションでもありますし、
これを活かさない手はありません。
せっかくマウス操作で「パカッ」っと宝箱を開けるのですから、
たくさんの宝箱を連続して「パカパカパカッ」っと開けられたら
それだけで気持ちの良い体験になると思いました。
(このあたりは理屈ではなく感覚的なものです)
そこで、
『ドラッグ操作で宝箱を連続で開ける』
という3番目のルールを追加することにしました。
基幹となるルール設計はこれで完了です。
ただし、失敗についてのルールがまだ無いので、
レベルデザインに絡めつつ検討を続けます。
後編に続きます。
2021/ 1/ 8 後編公開に合わせて加筆・修正
2021/ 1/ 5 記事公開