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シュートは「レイアップと3ポイント」を優先するべき理由②

前回は「シュートの得点効率」の観点から、レイアップと3ポイントシュートを優先して選択するべき理由についてお話ししました。


今回は、その続きです。


NBAでは3ポイントが増えて、ミッドレンジが減っている

まず、実際にNBAでレイアップと3ポイントが優先されているという事実を確認します。

データは今回もNBAのウェブサイトから引用しています。


今回の投稿では、シュートを以下のように分けます。
各ゾーンの呼び方をシンプルにしました。

「ロング2」と「ショート2」の成功率はほとんど変わらないため、今回は合わせて「ミッドレンジ」と呼ぶことにします。


以下のグラフと表は、1999年から現在までのNBAでのシュートの割合を示したものです。(2021-22シーズンは2022年1月5日時点)

このグラフから、以下のことが分かります。

  • 3ポイントシュートが増えている

  • ミッドレンジは減っている

  • レイアップはあまり変わっていない

1999年から2000年のシーズンと比べると、3ポイントの割合は2倍以上に増えています。現在のNBAでは全てのフィールドゴール試投数のうち約40%が3ポイントシュートです。

このように、NBAでは明らかにミッドレンジの代わりに3ポイントエリアでシュートされるように変化しています。

そして、この変化の間もレイアップは使われ続けています。


ここからは、このようなシュートの選択の変化について、前回の投稿で紹介した得点効率の高さ以外の理由について考えていきます。


レイアップと3ポイントは同時に守れない

レイアップと3ポイントは、シュートの選択肢として「中と外」の対極に位置するものです。

そのため、ヘルプやクローズアウトのために移動する距離が長くなり、オフェンス全員をカバーすることが難しくなります。

ディフェンスにとっては、この2つを主な武器にされると守りづらいです。

レイアップと3ポイントは対極に位置するため同時に守れない

一方で、ミッドレンジは文字通り中間なのでカバーする範囲が狭く、ヘルプやクローズアウトがしやすいです。ディフェンスはレイアップを重点的に守りながらミッドレンジもある程度カバーすることが可能になってしまいます。

ミッドレンジは3ポイントよりカバーする範囲が狭く守りやすい

レイアップと3ポイントシュートが主な武器になっていれば、ディフェンスは外と中に分散したり、それらの役割を頻繁に交代しながらカバーしたりする必要が生じて、守ることが難しくなります。

これが、バスケをレイアップと3ポイントで組み立てるべきという考え方の主な根拠です。

レイアップと3ポイントに「こだわる」べき

ミッドレンジのシュートは距離が近くても成功率が上がらない

ミッドレンジのシュートは、距離によってあまり成功率が変わりません。

まずは、改めてゾーンごとのシュートの成功率を確認します。

オレンジ色のショート2のエリアは41.4%で、その外側のロング2では40.6%です。距離が違うのに成功率はほとんど変わりません。シーズンやチームによっては、この2つの成功率が逆転していることさえあります。


距離が近くなるとシュートが難しくなる

もしディフェンスがいなければ、もちろん距離が近い方が成功率が高くなります。

しかし実際のゲームではそうならないのは、ゴール近くにはディフェンスがいることが多いため、良い状況でシュートするのが難しくなるからです。

ゴールに近くなるほどオープンになることが難しいため、ドライブやカットなどの激しい動きの中でシュートをしたり、フローターやフェードアウェイなどの工夫をすることが多くなります。

このようなシュートは、立ち止まってスポットアップしている状態でのシュートより難しいはずです。

これが、距離が近くなってもシュートの成功率が高まらない理由です。


ゴールに近いほどオープンになるのが難しい

バスケは各チームが1つのゴールへシュートすることから、プレーは主にゴールを中心とする半円状のスペースで行われます。

そして、オフェンスがゴールに近づくほど半円の半径が小さくなるため、ディフェンスにとってはカバーするべき範囲が狭くなります。


例えば、極端な例ですが、次の図のようにゴール周辺にオフェンスが5人密集してきたとしても、ディフェンスが1人いれば全員に対して影響を与えることができます。オフェンスは5人のうち誰も完全にオープンとは言えない状態です。

このことから、オフェンスはゴールに近づくほどディフェンスの影響を受けやすく、オープンになることが難しくなります。

ディフェンスがゴール付近のシュートを守るためには「待ち構える」ことができるということです。

もちろん、ディフェンスはレイアップを優先的に防ぐので、実際にゴール付近にはヘルパーがいることが多いです。

これが、ゴールに近いほどオープンになるのが難しい理由です。


ミッドレンジシュートの性質のまとめ

ミッドレンジのシュートの成功率が距離によって変化しないのは、「距離が変わっても同じシュートである」ということではありません。距離によってシュートの性質は変わっているが、結果として成功率が一定になっているということです。

この考え方をまとめると、次のようになります。

「レイアップと3ポイント」にこだわるべき

ここまでのお話から、シュートの選択について考える時には「レイアップか3ポイント」と明確に意識するべきです。

レイアップについては、「できるだけ近く」と考えるのではなく、「レイアップ(1.25m以内)」にこだわるべきです。

先ほどの図で確認した通り、シュートの成功率は、ノーチャージ・セミサークルを出た途端に急に低下します。

レイアップとその他のシュートは全く別物だということです。これは、ゴールに極めて近いところでリリースできるレイアップは、動きの激しさやディフェンスのプレッシャーの影響を比較的受けづらいということだと思います。

また、3ポイントシュートについては、「3ポイントラインを越えない、踏まない」ことを強く意識するべきです。

ラインを踏むことは、それだけでシュートの価値を3分の2減らすことになります。


このように、「レイアップと3ポイント」と明確に意識して練習することで、シュートの得点効率を上げることができます。


レイアップと3ポイントシュートはオフェンスリバウンドになりやすい

レイアップと3ポイントは得点効率が高いだけでなく、オフェンスリバウンドになりやすいそうです。

これは経験則や感覚的にも納得できるのではないでしょうか。

以下のレポートによると、オフェンスリバウンドの獲得率はレイアップが約35%と最も高く、ミッドレンジでは最低15%まで下がり、3ポイントでは約25%まで上がります。


リバウンドの獲得率をご存知でない方は、こちらの投稿もご覧ください。

このデータから、レイアップは最も得点効率が高いだけでなく、最もオフェンスリバウンドにもなりやすいシュートであることが分かります。

そして、3ポイントも同じく2番目に得点効率とオフェンスリバウンドの獲得率が高いシュートです。

ミッドレンジのシュートは、得点効率もオフェンスリバウンド獲得率も低いです。


注意点

目的を取り違えないこと

ここまで、レイアップと3ポイントの長所と、ミッドレンジの短所について言及してきました。

しかし、それを知ったからといってすぐに有効なオフェンスができる訳ではありません。

シュートで最も重要なのは、どこからシュートしたかに関わらず効率的なシュートをすることです。レイアップと3ポイントを打つこと自体を目的だと取り違えないように注意が必要です。


今回紹介した知識は、バスケの仕組みを理解するための参考にしてください。

実際に「レイアップと3ポイント」を徹底するためには、他にも様々な要素が関わります。


子どもは無理をして3ポイントを打たないこと

まだ十分に力がない段階で無理に3ポイントを打つことは、シュートフォームに悪い影響を与えると言われています。

早く遠くから届かせられなくても焦る必要はありません。大人になって3ポイントシュートが届かない選手はまずいません。

それよりも、十分に届く距離からの成功率を高めたり、多様な打ち方を練習したりする方が、後々役立つように思います。


おしまい

今回は、主に3ポイントシュートがゲームに与える影響について、得点効率以外の点について紹介しました。

レイアップが優先されるべきであることは、直感的にも分かりやすいと思います。一方で、3ポイントシュートはまだ「数あるスタイルのひとつ」という程度に考えられていることも多そうです。しかし、僕は3ポイントシュートはバスケの中核的な要素として捉えるべきだと思います。

「レイアップと3ポイント」を軸にしてプレーすることは、バスケの構造に対して理に適ったものです。だからこそ、NBAでも3ポイントシュートの割合が増加しています。

ぜひ、3ポイントシュートをプレーの基本と捉えてゲームを組み立ててみてください。


ではまた。(塩野)

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