見出し画像

リバウンドは本数ではなく「獲得率」を見るべき

次の2チームが試合をしたとして、オフェンスリバウンドで優ったのはどちらでしょうか?

オフェンスリバウンド数
チームA = 10本
チームB = 12本

その答えが、本数が少ない方の「チームA」という場合があります。
特に点差が開いたゲームの場合にはよく起きます。

このことを理解していなければ、「本当はリバウンドは上出来だったのに、課題として認識してしまう」といったことが起きます。

特にコーチは理解しておかなければ、選手に理不尽な指摘をしてしまうかもしれません。

この2チームのようなことが起きるのは、リバウンドは本数ではなく「獲得率」で評価するものだからです。

リバウンド獲得率とは何か?

まずは、リバウンド獲得率の考え方を説明します。

シュートの試投数と成功数

先ほどの2チームの試合では、シュートの成績は次のようになっていました。(本来はフリースローもありますが、いまはフィールドゴールのみで考えます)

シュートを打った本数は両チームとも80本と同じでした。
しかし、シュートの成功数はチームAが40本、チームBが20本でした。

シュートが成功したらリバウンドは起きないので、リバウンドの「機会」が少なくなります。
反対にシュートをたくさん失敗すると、リバウンドの「機会」が増えます。そして、リバウンドの機会が多いと、リバウンドの能力や頑張りに関わらず本数は増えます。

これが、本数だけではリバウンドの優劣はわからない理由です。

リバウンドの機会の回数

先ほどのシュートの成績を確認すると「リバウンドの機会の数」に差があることが分かります。

チームAのシュートは80本中40本成功したので、40本がリバウンドボールになりました。
チームBのシュートは80本中20本成功したので、60本がリバウンドボールになりました。

リバウンドの獲得率

ここで、もう一度最初の「オフェンスリバウンド数」を見てみます。

これで、いよいよリバウンド獲得率が分かります。

「オフェンスリバウンド数」を「リバウンドの機会」で割り算するだけです。

チームA: オフェンスリバウンド 10回 / リバウンド機会 40回 = 25%
チームB: オフェンスリバウンド 12回 / リバウンド機会 20回 = 20%

これで、オフェンスリバウンドの機会のうち、どのくらいの割合で獲得したか分かりました。
リバウンドの成績を本数でみるとチームBが2本多かったですが、割合で見るとチームAの方が5%高くなりました。

これが、回数が少ないチームAの方が、オフェンスリバウンドで優っていると言える理由です。

リバウンドを評価する時は、必ずこの観点をもっていなければいけません。

回数だけをみて「上手くいった」とか「頑張っていない」などと決めつけることは適切ではありません。

リバウンド機会の計算のしかた

実際のボックススコアからは、「リバウンドの機会」をもっと簡単に計算することができます。

その方法は、一方のチームのオフェンス(またはディフェンス)リバウンド数と、相手チームのディフェンス(またはオフェンス)リバウンド数を足すことです。

リバウンドの機会が発生すると、オフェンスかディフェンスのどちらかが必ずボールを獲得します。
だから、その両方を足すだけで、リバウンドの機会の回数が分かります。

記号の意味
OR: オフェンスリバウンド数
DR: ディフェンスリバウンド数

計算方法
チームAのオフェンスリバウンドの機会 = チームAのOR + チームBのDR
チームBのオフェンスリバウンドの機会 = チームBのOR + チームAのDR

また、ディフェンスリバウンドの機会の数は、「相手チームのオフェンスリバウンドの機会」の数と同じです。

リバウンド獲得率の計算式

先ほどのリバウンド機会の計算方法を踏まえて、実際に試合のボックススコアから計算するときは、以下の式を使います。
(文字が多いですが、「足して、割る」だけの本当に簡単なものです)

実際の試合から計算してみる

こちらの試合のリバウンド獲得率を計算してみます。

https://www.fiba.basketball/basketballworldcup/2019/game/1509/Argentina-Spain#|tab=boxscore

FIBA

アルゼンチンのORは5本、DRは22本です。
スペインのORは13本、DRは34本です。

両チームのリバウンド獲得率(OR% / DR%)を計算してみましょう。
この試合の成績を先ほどの計算式に当てはめると、以下になります。

アルゼンチンのOR% = 5 / (5+34) = 13%

スペインのOR% = 13 / (13+22) = 37%

アルゼンチンのDR% = 1 - 37% = 63%

スペインのDR% = 1 - 13% = 87%

これが、実際の計算式の使い方です。

本数の差のとおりなので、意外な結果ではありませんが、
これで、実際のリバウンド機会に対して、どのくらいの割合でリバウンドを獲得したのかが正確に把握できます。

1/3くらいはオフェンスが取るもの

日本の男子トップリーグでは、OR%は大体33%前後くらいになります。

40%を超えると多く、20%くらいだとかなり少ないです。50%を超えることはまずないです。

ディフェンスの方が獲得率が高い要因としては、次のようなものが考えられると思います。

  • 元々ディフェンスの方がゴールに対して内側にいることが多い

  • 相手の速攻に備えてセーフティしないといけないから、ディフェンスの方がリバウンドに参加する人数が多い

この学びをどのように活かせるか

毎回リバウンドの数を数えて、獲得率を計算する必要はありません。

それよりも本当に重要なのは、リバウンド獲得率の考え方を知ることでバスケをよりよく理解することです。

ディフェンスリバウンドが多いのは、「リバウンドを頑張ったから」ではない場合がある

ここまでの内容を読んだ方は、この意味が分かると思います。

リバウンドは大半をディフェンス側が取るものです。そして、リバウンドの数は「シュートの失敗の数」に左右されます。

だから、ディフェンスリバウンドの数がとても多い試合があったとすると、それは「リバウンドを頑張った」というより、「ディフェンスを頑張った」ことの結果であるという視点を持って確認した方が良いです。

オフェンスリバウンドが少ないのは、「シュートがたくさん入ったから」である場合が多い

反対に、オフェンスリバウンド数が少ないからといって、「オフェンスリバウンドに課題がある」などと評価するのは早いです。

もしかすると、ただシュートを高い確率で決められているだけかもしれません。

考えてみると当然のようなことですが、実際のコーチングの場面では、上記のような勘違いがたくさん起きていると思います。

ぜひ、「割合を見る」という観点を持ってみてください。

おしまい

今回は、「リバウンド獲得率」を紹介しました。

少し馴染みがなく、苦手意識を持つ方もいるかもしれませんが、何度か計算してみるとすぐに慣れます。
バスケに関わるうえでとても重要な観点なので、ぜひ覚えておいてください。

ではまた。(塩野)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?