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#ショートショート
20秒小説『アプリを終了せよ、街に出よう』
「一生のうち1/3は眠っている」
「まぁ、そうだね」
「起きている時間のうち1/3は移動と食事だ」
「それも、あながち間違ってはいない」
「起きている時間のうち、残りの2/3は検索とザッピングだ」
「……」
「違うか?」
「残念ながら、そうかもしれない」
「つまりこうだ。我々の人生には、誰かを愛する時間なんて存在し得無い」
「……」
「反論は?」
「反論はない。でも間違っている」
「何が?」
「何
20秒小説『喰う女』
小さなフォーク、最後のひとかけらに刺さる。男は見守っている、スポンジとクリームの小さな三角形が彼女のルージュを掠め消え咀嚼微笑。フォークが皿の縁に置かれ、時が動き出す。
「ケーキ、どうだった?」
「とっても美味しかったわ」
「そのぉ、何か変わったところはなかった?」
「変わったところ?」
「えーとつまり、何か入ってなかった?」
「クリーム?苺のスライス?」
「違う。白状するよ。僕は今日、君にプ
50秒小説『レジから煙が出た話』
「レジ袋って購入可能ですか?」
「はい、ご購入頂けます。サイズは如何いたしましょうか?」
「一番大きいサイズをください」
「何枚お入り用でしょうか?」
「50枚ください」
「大変申し訳ありません。ご購入できる枚数は、お一人様につき30枚までとなっております」
「じゃあ30枚でいいです。袋に入れてください」
「はい?」
「購入した30枚のレジ袋を、一番大きいレジ袋に入れてください」
「え……あ、はい
30秒小説『麺に至るまでの味』
「お客様、お手数ですがあちらの発券機で食券をお買い求め下さい」
「いや、食券を買おうとしたら、画面に"メンバーズカードをお入れください"っていう表示が出て、次の画面に進めないんだけど」
「申し訳ありません。当店は初回に必ずメンバーズカードをつくって頂くことになっておりまして」
「じゃあ、つくってください」
「あちらの発券機でお願いします」
「え?あ、はい。分かりました」
発券機に戻るがやはり"メ
30秒小説『誕生日プレゼント』
アパートから少し離れた場所に駐車場がある。毎朝そこまで歩く。途中にどぶ川がある。濃紺というか群青というか、ともかく色濃い寒色をしている。水位は低く水は止まったまま殆ど流れていない。晴れた日には洗剤のあぶくが無用な虹を宿し、弾けることなく太ペンで描かれたような輪郭を何時までも保っている。
自転車のタイヤが突き出ている。2本。1本は全体を露見させているが、もう1本は半分しか見えていない。
「あの逆
50秒小説『ファイナルファンタジーXXXⅧ』
「ファイナルファンタジーⅠが発売されたのって1987年なんだって」
「へー」
「当時の子供たちってさ。『10年後にはFF Xが発売されるんじゃね?』なんて冗談半分に言ってたらしいよ」
「ははは、じゃあ来月発売されるFF XXXⅧなんて想像もしなかっただろうね」
「まぁね」
「それじゃあ、WWがⅥまでいくことも誰も予想していなかったんじゃないかな?」
「だろうね。WW Ⅱが起こってからWW Ⅲが起こ
20秒小説『ペヤング』
TV「ニュースです。米誌ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスクは、緊張する世界情勢や、高度な人工知能の登場、気候変動といった脅威を分析し、人類滅亡を午前0時に見立てた"終末時計"の残り時間を"90秒"と発表しました」
俺「おいっ!湯入れたばっかだぞ」