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創作童話 七いろのプリン 3/4

「まぁどうしましょう。まだ作れるなんて言っていないのに…」
 バニラさんは、あれこれ考えて夜も眠れなくなってしまいました。
 翌朝、まだもやがかかっている頃、バニラさんは森へ出かけました。
木々の葉の先から朝つゆがしたたり落ちていました。
 バニラさんはその朝つゆを水筒に入れると、かごを持って森の奥に入って行きました。
「木イチゴにローガンベリーに…」
 バニラさんはブツブツ言いながら歩いて行きました。そして赤や黒の木イチゴを見つけると、トゲに注意しながら実を取りました。
「より赤くするためにイチイの実も取っておきましょう」

 森から帰ると、他のいろをどうやって作るか考えました。
青や紫や藍は夏の終わりに取ったブルーベリーやヤマモモを使うことにしました。
それらはジャムやソースにして保存してありました。
 赤はイチゴに赤ワインを入れて、橙はカキやミカンを使うことにしました。
「そうそう、緑はキーウィを使いましょう。黄いろはバナナにハチミツを入れて…」
 バニラさんは考えているうちに楽しくなってきました。
そして、それぞれのいろをきれいに出すために卵の量をへらしたり、味をまろやかにするために生クリームを入れたりエッセンスを入れたり、何回も失敗しながら七いろのプリンを作りました。
そして最後に朝つゆを入れることも忘れませんでした。
「これは森の元気をもらえるおまじないよ」

 バニラさんは、カラメルソースのかわりに木イチゴのソースやキーウィのソースを作りました。
プリンのカップはいろがよく見えるように透明のカップにしました。
 三日目の夕方、ようやく七いろのプリンができあがりました。バニラさんは木箱にていねいに入れました。
「ふーっ。この三日間、他のお菓子を作ることを忘れていたわ」
 バニラさんは失敗した何種類ものプリンを見ながら言いました。
不思議なことにこの三日間、ほとんどお客さまが見えませんでした。

               つづく


大好きなあい。さんの塗り絵を見出し画像に使わせていただきました。ありがとうございました💕
バニラさんのイメージぴったりです❣️


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