見出し画像

童話:お月さまのスープ 『ひと色展』(パーマネント イエロー オレンジ)

 もうすぐお月さまが目玉焼きのようにまんまるになろうとする頃でした。
森の動物達はブナの広場に向かって歩いていました。
お月さまがまんまるくなると、その夜はお月さまがスープをごちそうしてくれるからです。
クマの親子、キリン、ゾウ、シマウマ、フクロウにカラス… たくさんの動物達がブナの広場に集まりました。
赤ちゃんグマは初めてのスープなので舌をペロペロさせて言いました。
「スープっておいしいの?」
リスがやってきて言いました。
「それはそれは優しい味だよ。この間は月色かぼちゃのスープだった」
その時、あたりは金色の光が輝きみんなが目を細めた瞬間、空から黄色のレースのような梯子が降りてきました。
そしてその梯子につかまると吸い込まれるようにお月さまの中に入っていきました。
するとお月さまの声が聞こえてきました。
「ようこそ。今日は夕焼けにんじんと木漏れ日じゃがいものポタージュです。クルトンは星さんからの差し入れです」
スープを飲むとみんなの心までほんわか温まります。
どんなに辛いことがあってもケンカしそうになってもフィフィ〜っとそんな気持ちはどこかへ飛んでいってしまうのでした。
みんなは口々に言いました。
「あったかい味だったね」
「お月さまごちそうさま〜」
お月さまのスープは一度食べたらなかなかお腹が空かない不思議なスープでした。
フクロウが言いました。
「今度のまん月にはみんなでお月さまをきれいにしてあげよう」
けれどもその日から来る日も来る日も雨が続きました。
お月さまは黒い雨雲に包まれてぼんぼりのような灯りは見えません。
フクロウが鳥達に頼みました。
「あの雲を払いのけることはできないだろうか」
カラスが集めたたくさんの鳥達がやってきて口ばしで雲を引っ張りました。
動物達は空を見上げながら応援しました。
黒い雲はどんどんはがれて、お月さまには綿菓子のような雲がうっすらかかるくらいになってきました。
真っ黒だった夜空に星たちが姿を現しピカチカ光り出しました。
赤ちゃんグマが言いました。
「あ〜お月さまがわらったよ!」
動物たちが見上げると、お月さまはお風呂上がりのような顔をしてにっこり微笑んでいるように見えました。   おわり

      

イシノアサミさんの「ひと色展」企画に参加させていただきます🌕

以前投稿していた童話「お月さまのスープ」をショートショートにしました。

パーマネントイエローオレンジのイメージがお月さまの笑顔に見えました。



#ひと色展

#イシノアサミさん

#私の作品紹介


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?