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創作童話 けんたはわすれんぼう2/7

  ぼくたち みんな わすれもの
  わすれんぼうは どこにいる
  わすれたことも わすれてる

 けんたが声も出ないまま見回すと、おりたたみのかさがバッとかさを広げて言った。
「あーあ、ひさしぶりに伸びができた」
 けんたはそれを見て言った。
「なんだ、かさあったんだ。この前ぬれて帰ってそんしたなぁ」
「引き出しの中、きちんとしていないからだぞ」
 するとエンピツがキャラキャラとぶつかり合いながら、せいぞろいして言った。
「わたしたちだって、きちんとふでばこに入れてもらいたいわ」
「赤エンピツなんて5本もいるぞ」
「もう、しんがポキポキおれてたまらないわ」
 みんなが口ぐちに言うので、けんたはうるさくなって言った。
「わかったよ。持って帰ればいいんだろ。ぼくはこれから算数ドリルの宿題でいそがしいんだ」
 おりたたみのかさが、クルリッと回転して言った。
「おいおい、みんなをこんな目にあわせておいて、ちっともはんせいしてないな」
 カスタネットがタカタカ音をたてながら言った。
「そうだそうだ!はんせい!はんせい!」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
 けんたが言うと、ハチマキがピィーンと伸びをして言った。
「ぼくたちと思いっきりあそぼう!」
「そうだそうだ!もうきゅうくつな引き出しはたくさんだ!」
 けしゴムやコンパスもさんせいした。
 みんなはまた歌い出した。
 
  ぼくたち みんな わすれもの
  わすれんぼうは どこにいる
  わすれたことも わすれてる

 けんたはしかたなく言った。
「わかったよ」
 すると、歌がピタリッとやんで、今度はだれが一番さいしょにけんたとあそぶかけんかになった。

               つづく

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