週間ベストソング TOP7
先週は気に入った曲がいっぱいあったので紹介します。
7. ヨルシカ - 逃亡
最近ヨルシカが沁みる。作業中によくアルバムを流している。3rdフルアルバム『盗作』(2020年)を聴いていて、めっちゃ好きになった曲があった。
「Orangestarは初夏、じんは真夏、n-bunaは晩夏」というのは、ボカロ界隈においてはもはや月並みなほどに定番の文句だが、この楽曲はまさに「晩夏」の郷愁が込められた曲だと感じる。
「温い夜、誘蛾灯の日暮、鼻歌、軒先の風鈴」。七十二候にも「寒蟬鳴」とあるように、ヒグラシは晩夏のモチーフとされる。「隣の町の夜祭りに行くんだ (中略) さぁ、もっと行こうよ さぁ、もっと逃げて行こうぜ」と歌うこの曲が『逃亡』と題されたのはなんとも愛らしい。ささやかな逃避行に興じる若いふたりが思い浮かぶだろう。そして曲の後半、語り手が本質的な孤独を想起する瞬間にはハッとさせられる。
アコースティック・ギターによる印象的なバッキングのイントロから、アウトロの軽快なピアノソロは秀逸である。最近アコギを始めたので、いつかこの曲を弾けるようになりたい。
6. Kysho Ichie - Lean On Me feat. 可不
調が這い上るイントロの快感。Kysho Ichieは、可不×HIPHOPの先駆者の一人だと言えるだろう。この可不ラップが本当に好きすぎて、お願いだからもっと大きなムーヴメントになってくれと切実に願っている今日この頃。
トラックメイカーとしての確かなキャリアから打ち出されるバチイケのビートと、可不のキュートなラップが親和する彼の音楽。10/28にリリースされた本楽曲も間違いないクオリティだ。
美少女化したエンデヴァーみたいなアートワークもキュートだ。「気にしない1位とか 一度きりの Life」「また新たな歴史が始まる」などのリリックからして、もしかすると彼女は本当にエンデヴァーなのかも知れない。
少なくとも、アメコミヒーローを見ているかのように奮い立たせられる楽曲であることは間違いないだろう。
5. JITTERIN'JINN - プレゼント
1990年リリース。『夏祭り』などでも知られるバンド、JITTERIN'JINNの2ndシングル。↑ のような細長いジャケットは8cmシングルと言って、この時代特有のものらしい。
もはや「往年の名曲」に分類して良い楽曲だと思うが、今さらながら刺さってしまった。相手からもらった物をひたすら羅列するというこのスタイルは、リリースから30年以上経ってもなお斬新さを失っていない。
輝かしい贈り物の中に「キリンが逆立ちしたピアス」「ヒステリックなイヤリング」と、「どんなだよ」と言いたくなる物が混じっているのが良い。各ヴァースの最後に「シャガールみたいな青い夜」「あの日生まれた恋心」と、実体のないものを挙げるのも良い。「さよならしてあげるわ」とあくまで上から目線なのも良い。本当に良い。
そして何よりも、失恋相手との過ぎ去った思い出ではなく、今なお残る執着でもなく、ただ「貰った物」を言い連ねる、このしたたかさに大きな感銘を受けるのだ。冗談抜きで、なんて美しい曲なんだろうと思う。
4. 長谷川白紙 - Wonderful Christmastime (Cover)
11/1リリース。クリスマスシーズンになると必ず耳にするポール・マッカートニーのあの名曲の、長谷川白紙によるカバーだ。このカバーのおかげで、過ぎ去ったハロウィンのことなんて刹那に忘れて、あっという間にクリスマス気分になってしまった。
Lo-fiな電子音に、形式的なリズムに捉われないウィスパーな歌唱。まさしく「長谷川白紙」然とした本カバー。これからクリスマスが終わるまでこのカバーを聴き続けるのだろうと私はにわかに確信した。そして、長谷川白紙がなぜこの曲をチョイスしたのか。ここが味わい深い。
言われてみれば確かにそうだ。他の有名なクリスマスソングと比べて、この曲の歌詞は極めて抽象的でフワフワしている。だからこそ、数あるキャロルの中でこの曲だけが普遍性を持っている。幸福のさなかにいない人たちにも平等に訪れるクリスマスを、この曲は公平に祝福している。
長谷川白紙、長谷川白紙。私があなたを愛してやまないのはここなんだ。本当に大好きだ。結婚して欲しい。本当に大好きだ。
3. TEMPLIME & 星宮とと - Melody Smash feat. Lil Soft Tennis
その長谷川白紙がTwitterで共有していて、この曲を知る。11/1リリースのアルバム『POP-AID』に収録。
イントロのギターも、MVも、全体的に2000年代の雰囲気があって好き。歌っても聴いても気持ち良いサビ、星宮ととの伸びやかな歌唱から、りるそふのラップ、全部気持ち良すぎる。「半端 lost me now」って歌詞、日常に忙殺されるうちにどこか自己が曖昧になってしまうような感覚を的確に言い表してて凄い。そうして自分を問い直す様がその後にもよく書かれている。りるそふの入りのリリックは、Twitterを見るにメイウェザーの名言からとってるのかな?「風邪引いたらいっぱいのんでよ Water (わら)」が好き。
チューペットを割らなきゃ死んじゃうわ♪ わー!
2. masaboy - mazox remix feat. lilbesh ramko & kegøn
楽曲自体は2022年リリースで、11/02にMVが公開。私はこのMVがTwitterで流れてきてこの曲を知る。おれがいつもいいねしてたヤギのアイコンのアカウント、eijinさんだったんだ。いつも和訳お世話になってます。
すべてが良い。マゾを全面に押し出したMVとそれを開き直るリリック、極めて強固な一本の筋が通っている。曲も聴いてて気持ち良くて大好き。「Chumazo Chumami Chupapi munanyo」のところ好き。ramko、ヴァースもMVの格好や仕草も大好き。『Melody Smash』と同様のy2kな画質でありながら、令和的なマゾ可愛さも持ち合わせるMV、秀逸だ。
あと、りるそふはムエタイでMacをぶち壊し、kegønはmasaboyを蹴り飛ばしたのだなぁ。
1. nyankobrq & yaca - aihon feat. hirihiri
10/29の即売会M3で手に入れようと思ったら、まさかの寝過ごし。後日BOOTHに張り付き無事ゲット。ワニのヤカの新譜の中で一番好きでした。
hirihiriのバキバキのビートと、nyankobrq & yacaの歌とメロディ…。2つが親和して良すぎる。
「ダック・ドナルド あdfdファf」からのhookが気持ち良すぎる。「『昔は良かった』 そんなはずない! ふりかえるのは 休日だけでいい この世に消耗品以外はないよ すぐ減るか徐々に減るかの違い たまにいるんだよな それを勘違いしてる」…、nのヴァース好きだ。「いらないアルコール 見てるiPhone もう24 ブルーライト浴びるNight また新機能」、曲名の「aihon」はこのリリックから来ているのかなと思います。好きです。
これは余談というか気づいたことなんですが、上位の曲ほど「好き」以外に好きな理由がありません。ここ好きポイントを羅列し、好きと言い続けるだけの独り善がりなマシーンになってしまいます。
音楽を好きなことも、片思いと同じ。一方的な愛は報われないのですね。
バシャウマでした。
【追記】後日、いろいろ気付いたので追記します。(『aihon』)
1位の『aihon』について諸々。前の曲『GBASP』のアウトロで電話の呼び出し音が流れて、『aihon』に繋がるわけですが、この呼び出し音はiPhoneって感じではありません。公衆電話の呼び出し音に非常に似ています。
公衆電話は、このアルバムに関するアートワークで繰り返し使われていました。公式歌詞一覧の記事のサムネイルもそうですね。ステッカーが貼られているのが印象的です。
よくよく考えたら(考えなくても)、アルバムのジャケットもiPhoneに電話がかかってきているようなデザインです。その待ち受け(?)は上の記事でも使われている公衆電話の画像です。
充電がギリギリなのがいいですね。スクショの充電がギリギリだとそっちの方が気になってしまうってあるあるネタ、ありますよね。時間が「8:29」で充電が残り「16」、この数字にも、もしかしたら意味があるのかも知れません。また思いついたら追記します。
そんなこんなで、この『aihon』という曲は、このアルバムにおける象徴的な存在だと言えるのかもしれません。
iPhoneと公衆電話、「電話」というジャンルの中では対極にあるようなふたつのオブジェクトです。デジタルにおける、最先端のものとノスタルジックなものの対比、みたいなテーマがこのアルバムを通してある気がします。
タイトル曲『Net/You』のリリックを読んでみます。
yacaバースの「生きた証残すビデオテープ このアルバムも誰かがダビング」=「ビデオテープ」も「ダビング」という行為も、僕が物心ついたころにはもうないものでした…。まさに「ノスタルジックなデジタル」の表象。
hook(?)の「1.5倍ですら早くない?言葉にした途端 耳すり抜ける 言って良いこととダメなこと 君に熱中してんだそれに気付いて」=現代っ子はYouTubeを倍速で観るようですね!?18のおじさんである僕には理解し難い感覚です。これはさっきとは逆で、「最新のデジタル」の表象ですね。
「iPhone」と「公衆電話」は、この対比における最も象徴的なものだと言えるでしょう。
余談ですが、『GBASP』の「平成はもうレトロなんだ」は、ぽんぽこちゃんねるの「平成がもうレトロ扱い!?」から来ているのでしょうか。考えすぎでしょうか。
『Auto Save』や『カレンダ』もそうですが、ワニのヤカのこういう平成のインターネットやビデオゲームの懐かしさを感じさせるようなリリックが、大好きです。
以上、追記でした。(2023.11.23)
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