非公式エピソード『ザ・グッド・ニンジャ・ザ・バッド・ニンジャ・アンド・ザ・アグリィ・ニンジャ』

【実際無関係】【ほんやくチームとは関係がなく私はぐうぜんのうないフィーリングにもとづいて書いています】


ニンジャスレイヤー 第三部「不滅のニンジャソウル」より エキストラエッピソオードオー

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

バトルフィールド・セキバハラ、その更に最果てのメキシコめいた荒野。付近に一切の音は無く、ただジゴクめいた夕陽が無慈悲に照りつけるだけ。時たま思い出したように、バイオハゲタカの鳴き声だけが響く。そんなサツバツ空間において、三つの影が長距離等間隔トライアングル配置で向き合っている。

その一人は・・・ニンジャ、そしてもう一人は・・ニンジャ、そして最後の一人は・・・おお!ニンジャである!もし読者がニンジャ注意力とニンジャ視力の持ち主であれば理解できるであろう。その三人のニンジャ存在はただ漫然と向きあっている訳ではない。互いに必殺のスリケン・ジツを構えて一触即発状態なのだ!

一人はアマクダリ・エンブレムを背負ったニンジャ。ニンジャらしからぬ中年太りの体型を包む薄緑色のニンジャ装束は薄汚く汚れ、メンポからは髭がはみ出ている。腰のホルスターには特別製スリケン射出機構を備えたスリケン・ガン。その手は腰に添えられ、いつでも射撃できる体制だ。

一人は、黒のロングコートめいたニンジャ装束を纏う鷹めいた眼光のニンジャ。その腰の特別製スリケン発射機構を備えたスリケン・ガンには『平和を作成します』とのポエットな文言が刻まれている。彼の背にかつてあったザイバツ・エンブレムは荒々しく塗りつぶされ、もはや判別不能だ。

そして最後の一人・・・彼こそは赤黒のニンジャ装束に身を包んだ我らが復讐者、ニンジャスレイヤーである!体を大きく捻り、奥義ツヨイ・スリケンを今にも放たんとする構えである。

三者のニンジャによる極限メキシカン・スリケン・スタンドオフは既に1時間にも及ぼうとしていた・・・!


「ザ・グッド・ニンジャ・ザ・バッド・ニンジャ・アンド・ザ・アグリィ・ニンジャ」 


「おおっと、ナガノウミ、対戦相手のデビルマウンテンに強烈なドロップキック!デビルマウンテン、しかし倒れない!ああっと、デビルマウンテン、土俵際のセコンドから何かを受け取った!ああ~!これは冷凍マグロ!冷凍マグロでナガノウミを滅多打ちだ!これはいけません!実際奥ゆかしくない!」

数日前。ネオカブキチョのバー『お美人』に客は無く、ラジオから流れるオスモウ・レスリング中継だけがBGM代わりだ。アマクダリ・セクト末端ニンジャのクイックドロウはヨージンボーとしての務めも忘れて酔い潰れていた。年増オイランがこれ見よがしに眉を潜めるのも目には入らない。

いつものクイックドロウであればオスモウ中継に齧りついているところだ。彼は違法オスモウ賭博に目がない。今日、彼がオスモウ中継を無視する理由は極めてシンプルだ。賭ける金さえもはや無い。クイックドロウは実際追い詰められていた。

こんな筈ではなかった。臆病で卑怯だが抜け目無く、早撃ちの腕だけは一流だった彼はそれなりに充実した非合法裏社会生活を送っていた。堅実な犯罪、堅実な生活。ローリスクな犯罪と質素な生活・・・そんなある日、ニンジャソウルが彼に憑依し、彼は唐突に得た人外の力に狂喜した。

フリーランス犯罪者だった彼にとって、アマクダリ・セクトという巨大組織の中での日々は窮屈なものだったが、組織の末端ですら得られる、現金、大トロ粉末、オイラン、オハギ、・・・・モータルだった時とは比べ物にならない収入、快楽、スシ。彼の生活水準は上がった。いや、上がりすぎた。

違法オスモウ賭博に手を出したのもニンジャになってからだ。高い収入と高すぎる支出のアンバランス・・・加えて組織の方針転換だ。上がりの割合の大幅な変更、上納金の要求・・・・大きな稼ぎをしなければジリー・プアー(訳注:徐々に不利)だ。だがどうすればいい?

その時、『お美人』のドアが開いた。見すぼらしい身なりの老人が一人。客か。タダ同然の低品質なケミ・サケ一杯を5万円で出す暗黒暴力バー『お美人』の支払いがこの老人にできるとも思えない。

しかし今日のクイックドロウには、それを恐喝ビズに変えることすら億劫だった。何か面倒を起こすわけでもないだろう。手持ちの現金全てで見逃してやればよい。足りなければ脅して、軽く殴って放り出して終わりだ。好きに飲ませてやろう。

老人が5杯目のサケを注文しようとした時だ。「オネエチャン!サケ!オカワリ!オカ・・・アッアッアバッ!アバッ!」突然の痙攣と共に机に突っ伏す。「オイオイ、心臓発作か?頼むよ、勘弁してくれよ、爺さん・・・」クイックドロウはニンジャらしからぬ中年太り体型を起こして老人に近づいた。

「アバッ!ア!アバッ!」「頼むよ、死ぬなら外で死んでくれよ」「助け!金なら!あるから!アバッ!ア!ア!」「今日の支払いだけでいっぱいいっぱいだろ、放り出すぞ、悪いな爺さん」「アバッ!これ!遺産!カドマツ・エンタープライズの遺産なの!アバッ!」老人は震える手でメモを取り出した。

クイックドロウは眉を上げた。「本当!社長の家族なの!今はお金ないけどここに・・・アバッ、アバー!!」老人は一際強く痙攣すると、そのまま事切れた。メモを握りしめたまま。クイックドロウはその手から乱暴にメモを取り上げた。地図・・・セキバハラの地図と128桁のパスワード。

カドマツ・エンタープライズ・・・ネオサイタマの人間なら一度は聞いたことがある噂話だ。

電子戦争の以前、最大手の電子メガコーポであったカドマツ・エンタープライズは社長・幹部のみが知る隠し金庫に莫大な資金を保管していたが、温泉社員旅行の最中に社長・幹部ら全てがフグ毒で死亡。

隠し金庫の資金を回収できなくなった会社は急速に資金繰りが悪化し倒産、社員は全員セプクし、隠し財産だけが今もどこかに眠っていると・・・

幼稚な噂話だ。

クイックドロウは老人の財布を更に漁った。アマクダリ・ネットで市民IDを検索する。

心臓が高鳴った。

カドマツ=モレジ・・・カドマツ・エンタープライズ社長、カドマツ=カシコイの甥に当たる。カドマツ=カシコイには妻子がなかった。老いたモータルがセキバハラに行くのは実際自殺行為。筋は通るが出来過ぎた話・・・しかし、選択の余地はクイックドロウにはなかった。未来へのドアがあった。

その時である! バーのドアを乱暴に蹴破るものあり。

酔客だろうか・・・・?いや!招かれざる客の姿はニンジャ装束!あからさまにニンジャである!しかも泥酔状態!「ド、ドーモ、ナックルダスター=サン」「ドーモ、クイックドロウ=サン、ヨージンボー中にサケとは、いいご身分だな、え?」


「アイエエエエエ!?ニンジャナンデ!?」年増オイラン初め店員達は失禁し逃走!クイックドロウはニンジャヨージンボーといえども、「お美人」のスタッフにはニンジャであることを隠していた。恐るべき神話的存在であるニンジャの存在はモータルの精神には極めて重大な危機をもたらすからだ!

しかしこのナックルダスターと呼ばれたニンジャは、そのようなことを気にも留めない!なんたる悪辣か!「なあ、クイックドロウ=サン。お金さ、あれさ、今日だよな?期限、今日までだよな?確か、今日までだよな?」「アッ、イエ、ナックルダスター=サン、期限は来週末までって、借用書に、ほら」

「ザッケンナコラー!」「グワーッ!」ナックルダスターは凶暴なヤクザスラングと共に、クイックドロウを殴りつける。相手がニンジャでなければ一撃で頭部がネギトロめいたゴア状態になるほどの威力だ!

「オマッコラー!借金身分!エッコラー!アマクダリ上層部に報告ッコラー!?」コワイ!

「ま、待って、待って、ネ?」殴り倒されたクイックドロウは弱々しく這いつくばりながら言葉を並べる。「アッコラー!?ナメッチェッロコラー!?ウダラチェッカンガコラー!?」その時だ!「スッゾ・・・グワーッ!?」ヤクザスラングを並べるナックルダスターの胸に突然の風穴!

おお!クイックドロウの手には特別製スリケン発射機構を備えたスリケン・ガン!いつの間に、スリケンを射出したというのか!?実際ハヤイ!そして相手の油断を誘ってスリケン・ガンの一撃を食らわせる恐るべきニンジャ卑怯さ!

「待ってくださいよ、ネ、お金、ネ、ちゃんと返すから」

クイックドロウの顔には先ほどまでの怯えた表情は無く、悪辣な笑みが浮かぶのみだ。

「サヨナラ!」心臓に風穴を明けられたナックルダスターはそのまま爆発四散!クイックドロウはゆっくりとタバコに火をつけると、これからの展開を思案した。

暗黒組織アマクダリといえど、所属ニンジャ間でのトラブルの火種となる金の貸し借りは実際厳禁だ。恐らく、ナックルダスターが自分と借金トラブル状態にあることは誰も把握していないはずだ。目撃者もない。唐突な謎のニンジャ襲撃者に、弱いヨージンボーは殺され、店も・・・

クイックドロウは、商品のスピリタスを店中にぶちまけ、ドアに向かう。吸いかけのタバコを投げ捨てると、引火スピリタスは全ての証拠と共に「お美人」を炎に包む。 セキバハラだ。全てはセキバハラにある。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆忍◆ ニンジャ名鑑#XXX 【クイックドロウ】アマクダリ・ギルドの末端ニンジャ。ニンジャらしからぬ中年体型の持ち主だが、早撃ちの腕は本物。様々な卑怯な犯罪で日々の小銭を稼ぐ。オスモウ賭博とトビッコ・スシが大好き。イカアレルギーの持ち主◆殺◆

◆忍◆ ニンジャ名鑑#XXX 【ナックルダスター】アマクダリ末端ニンジャ。ニンジャ・モータル相手を問わない非道ヤミキン・ローンを組織にも秘密で開業していた。彼の死を嘆く者は実際少ない。◆殺◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「お美人」の焼け跡で、黒のロングコート姿の男が立ち尽くし、己のウカツさを呪っていた。眼光は鷹めいて鋭く、眉間には深い皺が刻まれている。

彼の背中には・・・おお・・・ブッダ!判別不能なまでに塗りつぶされているものの、そこにあるのはザイバツ・シャドーギルドのエンブレムなのだ!!明らかにニンジャである。

そのニンジャ・・・イーグルアイ、ザイバツ・シャドーギルドのマスター位階であった彼にとって、ザイバツの崩壊はむしろ僥倖であった。イーグルアイにとって、組織とは力では無く、枷でしかなかった。ザイバツに所属していたのはそれ以外の選択肢がなかったからだ。

しかし、今の彼にはフリーランス邪悪ニンジャとして活動するだけの自負と、それに見合う実力があった。何より、己はあのジゴク・・・キョート・カタストロフを生き抜いたのだ。己一人の思うがままモータルを踏みにじり、ニンジャを殺し、カネを掴み、オイナリサンを食う。その力がある。

カドマツ・エンタープライズの隠し財産の情報は渡りに船だった。老いた貧しい老人の話を信頼できるわけもなかったが、ガセで失うものもない。イーグルアイは情報屋を即座に殺害すると、カドマツ=モレジと連絡を取った。約束のカネを払う気など頭からない、苦しめてインタビューすればよいだけの話だ。

本来なら今朝合流するはずのカドマツ=モレジと連絡が取れない・・・。カドマツ=モレジの飲み仲間への殺害インタビューをくりかえし、ようやく最後の足取り「お美人」・・・その焼け跡にたどり着いた時、彼は己のウカツさを呪ったのだ。誰かがメモを持ち去ったのは自明だった。

「オイオイ・・・調査に来てみりゃ、あっさり容疑者確保ってか?野良ザイバツ腐れニンジャの火付け強盗ってか?あ?」

イーグルアイはゆっくりと振り返る。無論、放火現場調査のマッポではない。「クイックドロウ=サンどうしたコラ?ア?」溶接保護面めいたメンポのニンジャである!

「ドーモ、ドッグウェルダーです」「ドーモ、ドッグウェルダー=サン、イーグルアイです」

「サヨナラ!」ドッグウェルダーは爆発四散!

読者諸君よ、安心されたい!あなたが1センテンスを読み飛ばしてしまったのではない!例えあなたがニンジャ動体視力の持ち主であっても、今の恐るべき一撃を目視することは不可能であっただろう!

イーグルアイの手には『平和を作成な』との文言が刻まれた特別製スリケン発射機構を備えたスリケン・ガン!アイサツ終了からコンマ0.0000001秒で、スリケン・ガンが、ドッグウェルダーの心臓を貫いたのだ!ゴウランガ!

クイックドロウも相当の早撃ちだがこれは別格!ハヤイすぎる!

イーグルアイはそのまま、焼け跡そばの路地片隅にあるゴミ箱を蹴り倒す。「ア、アイエエエエエ!!!」中から現れたのはこのサツバツすぎるニンジャ殺戮現場を二日続けて目撃し発狂寸前の「お美人」の年増オイランだ!ナムアミダブツ!

「お前はこの店のオイランか?」イーグルアイはゆっくりと、しかし無慈悲な声色で不運な年増オイランに問いかける。

「ア、アイエエエエエ!?」

「いいか、全て答えろ。少しでもとぼけたら、タップリと時間をかけて苦しめてファック・アンド・サヨナラだ。だが俺は時間がない。だから答えろ」

「アッハイ!昨日!オジイサン!お店来て!飲んで死んで!メモ!クイックドロウ=サンが取って!別のニンジャ来て!ニンジャナンデ!クイックドロウ=さんが殺して!お店燃やして!セキバハラに向かうって独り言!こっそり陰から見てた!全部!これで全部!許して!」

「クイックドロウ・・・どんな男だ?」

「ア、アイエエエエエ!薄緑色の服で!中年太りで!髭と体臭がスゴイ!」「フゥーム・・・セキバハラ・・・クイックドロウ・・・そうか・・」

「これで全部なの!ホント!お願い!許して!」年増オイランは絶望的な表情でイーグルアイにすがりつく。
イーグルアイは冷酷に答えた。

「いいだろう。手短に苦しめてファック・アンド・サヨナラだ。俺には時間がないからな。」

「ア、ア、ア、アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

かくして、クイックドロウ、イーグルアイ、二人のニンジャはそれぞれの欲望を胸に秘め、セキバハラ荒野に向かう。

だが、時を同じくして、赤黒の影めいて疾走する一台のバイクもまた、セキバハラを目指していた・・・!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆忍◆ ニンジャ名鑑#XXX 【イーグルアイ】元ザイバツ・シャドーギルドの邪悪なニンジャ。特別なユニーク・ジツは持たないが、研ぎ澄まされたカラテによるスリケン・ガンの早撃ちは神速の域であり、ザイバツ・グランドマスターのヘイスト・ジツにすら匹敵する。◆殺◆

◆忍◆ ニンジャ名鑑#XXX 【ドッグウェルダー】アマクダリ・セクトのトラブル調査官ニンジャ。相手の顔面に犬の死体を溶接するという恐るべきイヌヨウセツ・ジツを持つが本編でそのジツが活かされる機会はなかった。友人の変質者ニンジャたちとニンジャ自警団を結成していた。◆殺◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

セキバハラ荒野。バイオハゲタカが上空を旋回し、行倒れの亡骸を狙う。ここはまだ、「文明」の中だ。

クイックドロウは「行ったら引き返せない」「ポイントオブノーリタン」「実際死ぬ」「バカ」「スゴイ」との威圧的な看板に取り囲まれた酒場「凄く悪い馬です」を見つけ、安堵の溜息を漏らした。

その看板の通り、この酒場「凄く悪い馬です」は最後の補給所であり、ここを過ぎたらもはやスシ、チャと言った生存物質を調達する術はない。この手前は実際、エド戦争のアーティファクトなどを求めるトレジャーハンターなどの存在も珍しくなく、死亡率も85%とネオサイタマ基準ではそう高い数字ではない。

しかし「凄く悪い馬です」以降は果てしない荒野、無慈悲なバイオ生物が徘徊するまさしくウェイストランド。それだけに、様々な遺産・・・エド戦争の遺産や電子戦争前のテックが手付かずで眠っているのだが、余りもの危険が命知らずの放浪者たちすらも遠ざけているのだ。宝の隠し場所には絶好であった。

「もういやだ・・・カドマツの遺産見つけたら貯金しよう・・・貯金して上納して、ほどほどでアマクダリも引退しよう・・・岡山県で温泉に入ろう・・・ダイエットしよう・・・でもスシも食べたい・・・オーガニック・オートロ・スシ食べてからダイエットしよう・・それから貯金しよう・・・もういやだ・・・」

クイックドロウはとぼとぼと歩きながら独りごちる。当座の交通費すらもなかったため、寸借詐欺と無賃乗車を繰り返してここまで来たのだ。最後の数十kmは徒歩だ。実際、彼の並以下のニンジャ耐久力では辛い道のりであった。欲望を後悔が上回りかけたころ、「凄く悪い馬です」に辿り着いた。

「バーテン!スシ!イカケバブ!それとサケ・・いや、ケモビールだ!さっさ・・・アイエッ!?」

店の戸を勢い良く開け、注文したクイックドロウの出鼻は盛大に挫かれた。奥のテーブル、一人のニンジャが黙々とバンザイ・テキーラを呷っているのだ!

(バッ、バカな!イーグルアイ=サンが何故!?)

直接の面識はなかったが、イーグルアイは特別製スリケン発射機構を備えたスリケン・ガンの使い手の間では伝説的な存在だ。神速の抜き撃ち、そしてモータル、ニンジャを問わず発揮される恐るべき邪悪さ・・・あのザイバツ・シャドーギルドでマスター位階まで登りつめたという・・・・それが何故。

クイックドロウはこそこそとカウンターに向かい、目立たないように座る。

(目を合わさない・・・ニンジャとバレないよう・・・食べたらすぐ行こう・・・関係ない・・・俺は無名ニンジャだしダイジョブ・・・実際偶然・・・)

事態から目を逸らすように黙々とトビッコ・スシを食い、ビールを呷る。クイックドロウは手持ちの最後の現金で支払いを済ますと、そのままそっと店を出ようとする。

その肩をぐっと引き止める、手。

クイックドロウは激しく萎縮!まるでバイオヘビに睨まれたバイオカエルだ!そのまま死刑囚の足取りめいてゆっくりと振り返る。

「あなた。随分慌てて食べているようだが、まだ飲み足りないのでは?せっかくのご縁ですし、ご一緒しませんかな?」

「アッハイ」 

無論イーグルアイである!テーブルに強制連行!

「あなたはこんな荒野で何を?」

「ああ、はあ、まあ、そのトレジャーハントです、昔のとか、そういうのを、こう、チョコチョコと」

クイックドロウは強制テキーラをチビチビと舐めながら答える。

「トレジャーハントね、この先は随分危険なようだが、大丈夫なのかな?この先は人が生きて帰れる場所では無いと聞くが・・そう、ニンジャでもなければね」

「ア、アハハ、デスネー、気をつけます。いや、実際死ぬので、ガンバルゾ!ハハ・・・」

ナムサン!もはやクイックドロウの顔は蒼白!なんとかこの尋問めいたやりとりから逃れようと必死だ!

「あ、あの、貴方こそこんなところで何を?」必死に話題を逸らす。

「人を、探していてね」「アッハイ」

「彼に伝えてあげたいことがあるんだよ。お互いの為だ」「アッハイ」

「その人が、私の荷物を間違えて持っていってしまってね、本当に困っているんだ。彼にとってもよくない。本当によくない」
「大変そうですね!ごちそうさまでした!」

もはやクイックドロウの顔は死人同然!

「そうだね、もしも、私のカドマツ・メモを持っていった者と会ったら、しっかりと伝えてくれるかな、クイックドロウ=サン!?」

「ア、ア、ア、アイエエエエエエエエ!!!」

イーグルアイの眼光はまさしく鷹の如くだ!クイックドロウは椅子からずり落ちて床に腰を落とす。

「三下ニンジャがナメた真似をしてくれたな。メモはどこだ」

「知らなかったんです!偶然手に入れただけなんです!実際!ゴメンナサイ!」

イーグルアイはクイックドロウのコートを漁り、あっさりとメモを見つける。
この三下ニンジャは用済みだ。

その瞬間。

「マッタ!」クイックドロウである。

「マッタ!俺を始末するつもりだろうが、いいのか?そのメモでいいのか?」イーグルアイはメモを凝視する。なんと!そのメモのパスコードは64桁まで!半分のみ! これでは秘密金庫解錠不可能!
「貴様・・・」

「俺を爆発四散させたら残りは木っ端微塵だぞ!?わかった!わかってる!あんたが実際ツヨイ!6:4、いや、7:3でいい!俺を殺したくならない程度の分け前でいいから!おとなしく田舎で隠遁するから!」

おお!なんたるニンジャ狡猾さ!彼はこの事態を見越して、予めメモを二分割していたのだ!

彼のマッタが0.1秒遅ければ、イーグルアイは実際クイックドロウを無慈悲に射殺していたであろう!クイックドロウの作戦勝ち、渾身のマッタである!ゴウランガ!

「・・・8:2だ」 

クイックドロウの顔に安堵が浮かぶ。その瞬間。

BLAM!銃声!

「アバーッ!」

心臓を吹き飛ばされたのは・・・バーテン!

BLAM!BLAMBLAMBLAM!イーグルアイの早撃ち!店内の他の客達も次々に射殺!「アイエ!?」クイックドロウは困惑!

「こいつらは聞きすぎた。何より何人かは殺さんと俺の気分が晴れん」ブッダ!何たる邪悪さか!
「後から誰かがトラッキングしてくるとも限らんからな、食料と水、サイバネ馬を調達だ。それから店に放火しろ、クイックドロウ=サン。放火はお手の物だろう?」「ア、アイエエエエエ・・・・」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

バイオバッファローの乾燥頭蓋骨が、サイバネ馬に踏み砕かれる。もはや雑草すら生えない不毛の荒野には、時たまバイオサボテンが生えているだけだ。あれからのイーグルアイとのジゴクめいた道連れ旅も数日に及び、クイックドロウの精神状態はドン底めいていた。

(2割かあ・・・しょうがないよな・・・・・でもどっちみち殺されるんじゃ・・・安全確保しないと・・・・やっぱり来るんじゃ無かったかも)「おい」

イーグルアイが口を開く。会話をするのは数時間ぶり、それも最小限の会話だけであり、それもまたこの道程の重苦しさに拍車をかけていた。
「アッハイ!」

「あの丘の先の墓標が目的地だな?」

「そうです!これで我々も金持ちですね!スゴイ!」(着いちまった!どうする?不意打ち・・・いや、勝てる相手じゃ・・・どう切り抜ける?このままじゃジリー・プアー(訳注・徐々に不利)だ・・打開のキッカケ・・・何でもいい!)


二人のサイバネ馬は丘を越える。とうとう財宝が目の前に。二人の眼に墓標が映る。

「アイエエエエエエエエエエエエエエエエ!?」「貴様・・・」

クイックドロウは情けない悲鳴を上げ、イーグルアイの目にジゴクめいた殺意が宿る!コワイ!一体何事だというのか!? 

ALAS!そこには墓標!ただし、数十万、数百万の!

そう、ここはセキバハラ合戦で散った数百万のダイミョ、サムライ達の眠る墓場であったのだ。二人は丘を駆け下りる、視界の果てまで墓標、墓標、墓標!クイックドロウは半狂乱で墓標を手当たり次第に漁るが、当然手がかりなし!ナムサン!

「三下ニンジャが・・・よくよく俺を怒らせたかったらしいな」

「待って!順番に探していけば必ず・・・」

「これだけの数全てをか?何年かかる、5年か、10年か?このセキバハラ荒野で?もういい、墓標をもう一つ増やしてやる」

クイックドロウの命運尽き果てる、その時である!!

「カドマツ=モレジには姉がいた・・・カドマツの隠し財宝、そのメモの半分を持った姉がな」

二人のニンジャは同時に声の元、丘の上の赤黒のニンジャを見やる!

「貴様は・・・何故此処に・・・!」

「ドーモ、ハジメマシテ。ニンジャスレイヤーです」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(ここまでのあらすじ:電子戦争以前の莫大な財宝のありかを記したメモを巡り、アマクダリ卑怯ニンジャのクイックドロウ、元ザイバツ邪悪ガンマンニンジャのイーグルアイはセキバハラに向かう!しかし財宝のありかを突き止めるにはもう一つ、ニンジャスレイヤーの持つメモも必要だったのだ!)
(地獄の荒野で夕陽を背後に、良いニンジャ、悪いニンジャ、ズルいニンジャの三つ巴財宝争奪戦!オイオイ、コイツはヤバイにヤバイが重なってヤバイの二乗!ただの山分けハッピーエンディングじゃあ済みそうにないってもんだぜ!)


「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、イーグルアイです」

「ドーモ、クイックドロウです」

荒野の時間が鈍化する。ニンジャスレイヤーはゆっくりと、だが決断的な足取りで丘を折り、イーグルアイらのもとに近づく。

「オヌシラのメモだけでは財宝は永遠に手に入らぬ・・・私のメモだけでもな」
おお!暗黒非合法探偵フジキド・ケンジこと、ニンジャスレイヤーは不肖の弟カドマツ=モレジの不穏な失踪の背後に何らかの邪悪なニンジャ的陰謀を感じたその姉から、受け取ったというのか、遺産メモを!?そしてイーグルアイらと時同じくして、ここセキバハラ荒野に!?

「あの酒場に放火し、人々を殺したのはオヌシラか」

「スシを食い損ねたか?悪いことをしたな、中々旨いトビッコ・スシだったぞ?」

ニンジャスレイヤーはイーグルアイの挑発に応えない。ただその眼差しの奥に、確かな怒りが浮かぶ。
((グググ・・・フジキドよ・・・ここは一度退くのだ・・・あやつはマカロニ・ニンジャクランのグレーターニンジャ・・オヌシといえど、スリケンの投げ合いでは実際不利・・・隙をついてのアンブッシュで首を撥ねるのだ・・))

フジキドのニューロン内でナラク・ニンジャの邪悪なソウルが唸る。
((黙れナラク。私には私の考えがある。))しかしニンジャスレイヤーはそれを相手にせず・・!((いいだろうフジキドよ・・・オヌシの戦い方、見せてもらおう、せいぜい儂を失望させぬことよ・・・・))ナラク・ニンジャの邪悪なソウルはニューロンの底に沈む。


不気味な沈黙の中、クイックドロウだけは一人狼狽える。

(アイエエエ!?ニンジャスレイヤー=サン!?あの死神がナンデ!?死ぬ・・・実際これは死ぬ・・・) 

イーグルアイはニンジャスレイヤーから視線を外さない。三者は無数の墓標に囲まれた円状の荒れ地で対峙!その距離、タタミ10枚分!

ニンジャスレイヤーが動いた。クイックドロウは震える。イーグルアイは反応しない。ニンジャスレイヤーは先ほどまでの三者の中間点に到着。懐からゆっくりとカドマツ=メモ、その最後の一片を取り出し、石片の重しと共に地面に置く。ニンジャスレイヤーはカラテ警戒を絶やさず、元の地点に戻る。

「ウィナーテイクスオール・・・・いいだろう」

イーグルアイがニタリ、と笑いニンジャスレイヤーの後に続き、同じ地点にメモのもう一片を置く。クイックドロウはどうだろうか!?

おお!彼の眼を見よ!そこには先ほどまでの怯えきった眼差しはなく、ニンジャ覚悟の光!
((イーグルアイ=サンにニンジャスレイヤー=サン・・・マトモにぶつかっちゃ俺じゃ相手にならねえ・・・でも奴らを相打ちに持ち込めたら・・・やるぞ・・・俺は財宝をテイクスオールするんだ・・・そこには希望がある・・・ダイエットしよう・・・)

最後のメモをクイックドロウが置き、離れる。

おお、見よ、三者はいつの間にか正三角形の配置である!

イーグルアイは腰に手を添える、クイックドロウもだ。そしてニンジャスレイヤーは体を大きく捩り、奥義ツヨイ・スリケンの体制である!タンブルウィードが風とともに転がった。

バトルフィールド・セキバハラ、更に最果てのテキサスめいた荒野。付近に音は無く、ただジゴクめいた夕陽が無慈悲に照りつけるだけ。時たま思い出したように、バイオハゲタカの鳴き声だけが響く。

そんなサツバツ空間で、三つの影が長距離等間隔トライアングル配置で向き合っている。

その一人は・・・ニンジャ、そしてもう一人は・・ニンジャ、そして最後の一人は・・・おお!ニンジャである!もし読者がニンジャ視力の持ち主であれば理解できるであろう。その三人のニンジャ存在はただ向きあっている訳ではない。互いに必殺のスリケン・ジツを構えて一触即発状態なのだ!

一人はアマクダリ・エンブレムを背負ったニンジャ。ニンジャらしからぬ中年太りの体型を包む薄緑色のニンジャ装束は薄汚く汚れメンポからは髭がはみ出ている。腰のホルスターには特別製スリケン射出機構を備えたスリケン・ガンが収められている。その手は腰に添えられ、いつでも射撃できる体制だ。

一人は、黒のロングコートめいたニンジャ装束を纏う鷹めいた眼光のニンジャ。その腰の特別製スリケン発射機構を備えたスリケン・ガンには『平和を作成します』とのポエットな文言が刻まれている。彼の背にかつてあったザイバツ・エンブレムは荒々しく塗りつぶされ、もはや判別不能だ。

そして最後の一人・・・彼こそは赤黒のニンジャ装束に身を包んだ我らが復讐者、ニンジャスレイヤーである!体を大きく捻り奥義ツヨイ・スリケンを今にも放たんとする構えである!三者のニンジャによる極限メキシカン・スリケン・スタンドオフは既に1時間に及ぼうとしていた・・・!

現実時間は1時間弱でも、極限緊張状態にある三者のニンジャにとってはニンジャアドレナリンの過剰分泌によってその体感時間は実際10時間近い!今にも引き放たれんとする矢の如く、場の緊張状態は更にヒートアップする。

クイックドロウはせわしなくイーグルアイとニンジャスレイヤーを見やる。イーグルアイはどちらを見るとも無く、二者の間の空間に視線を向ける。ニンジャスレイヤーは・・・ツヨイ・スリケンの体制からはその視線は伺いしれない。

クイックドロウ、イーグルアイ、ニンジャスレイヤーの三者の緊張は既に爆発寸前。クイックドロウの手、イーグルアイの眼、ニンジャスレイヤーの体!クイックドロウ、イーグルアイ、ニンジャスレイヤー!クイックドロウ!イーグルアイ!ニンジャスレイヤー!


おお!三人のニンジャの運命は今、ネオサイタマから遠く離れたこのセキバハラ荒野で決しようとしている!ジゴクめいた太陽が照る。クイックドロウ、イーグルアイ、ニンジャスレイヤー!「ギイイイイィィィィッィーー!」バイオハゲワシが鳴いた!その時!


『『『『イヤーッ!!!!』』』

それを合図に三ニンジャは同時にスリケン発射!! 一瞬の沈黙。ニンジャスレイヤーのメンポをスリケンがかすめる。イーグルアイは・・・無傷だ。それでは!


「ア・・・アバーッッッッ!!」クイックドロウの叫び!おお!頭部にはイーグルアイのスリケン、そして股間にはツヨイ・スリケンが突き刺さる!ナムアミダブツ!

「サヨナラ!」クイックドロウは爆発四散!次の瞬間!

『マッタ!!!』

ニンジャスレイヤー、イーグルアイ、二人の生き残りニンジャは同時にマッタ!これは一体!?

「五分五分で・・・どうだ」イーグルアイは警戒態勢を解かぬまま問う「・・・よかろう」ニンジャスレイヤーは・・・応じる!

これは一体!?我らがネオサイタマの死神も、眼前に積まれた旧世代莫大財宝の誘惑には抗えなかったというのか!?見損なったぞ、ニンジャスレイヤー!

お互いは必殺の構えを解き、メモに歩み寄る。ニンジャスレイヤーがゆっくりとメモを取り上げる。だが両者の眼を見よ。そこには微かな油断も無く、互いの僅かな動作に対しても全力のカラテ警戒!お互いそれを認識しているからこその危険極まる休戦状態である!


((あの距離でのスリケンなら、恐らくは俺に分がある。しかし相手はあのソウカイヤを、ザイバツを滅ぼしたほどの相手・・リスクは負えん))イーグルアイはニンジャスレイヤーの隣につき、メモの示す墓標に向かう。

一見なんの変哲もない墓標。そこには「死体が埋まっていますこの下」とのありふれた文言が刻まれている。と、ニンジャスレイヤーはおもむろに墓標を鍵めいて90度回転!すると、おお!付近一帯の地面が展開!地下秘密倉庫に向かう巨大なメカニカル階段が露出!


両名はゆっくりと階段を降る。3階建ビル相当の深さを降りると、列車トンネルめいた空間の先に大型ハッチ。右下にはパスコード入力端末だ。付近一帯にはひんやりとした冷気が立ち込め、この地点が相当の間、封印され続けてきたことを示している。そして、そこに封印されているものの価値もまた。

「これがカドマツの秘密財宝・・・」イーグルアイの口調にも若干の高揚感。

「パスコード入れるドスエ」無機質な電子マイコ音声が鳴る。

「間違えるなよ、ブービートラップを呼ぶかもしれん」ニンジャスレイヤーはイーグルアイに応えず、確実に128桁パスを入力していく。

ガゴンプシュー!大型ハッチの四方から水蒸気が吹き出し、ゆっくり展開していく。ニンジャスレイヤーとイーグルアイは隣り合ってその光景を見る。おお、見よ!ハッチの中にはカドマツの財宝、およそ数十億円相当!

「これは・・!?バカなーーー!!!」

しかしそれは全て、電子戦争以前の旧型デジタル媒体、フロッピーディスクに保管された電子マネーである!現在では貨幣価値ゼロ未満!インガオホー!

イーグルアイは絶望の叫びをあげる!その一瞬、彼のカラテ警戒に緩み!

「フロッピーディスクだと・・こんなことがグワーッ!」

イーグルアイは突如、体をくの字に曲げて吹っ飛び壁に激突!鋼鉄壁に放射状のひび割れ!一瞬の隙をついてのニンジャスレイヤーのゼロ距離ポン・パンチである!「貴様ァーッ!」この至近距離ではスリケン・ガンは却って不利!イーグルアイは反撃の飛び込みジャンプチョップ!しかし浅い!

「イヤーッ!」「グワーッ!」イーグルアイは対空迎撃され、上方に吹っ飛ぶ!あれは暗黒カラテ奥義、サマーソルトキック!イーグルアイは天井に激突し、その勢いのまま落下!そこにニンジャスレイヤーの決断的マウント!

「イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレート!
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

「オヌシとスリケンの投げ合いをする愚は冒さぬ・・・有りもせぬ小銭に目が眩み、カラテを濁らせた当然の結果だ」ニンジャスレイヤーはストレートの手を止めず、無慈悲に告げる。「グワーッ、ニンジャスレイヤー=サン、貴様、初めから財宝の正体を知っていたなグワーッ!」


「オヌシにはサンズ・リバーのカロンニンジャへの渡し賃すら与えぬ・・・徒労の絶望と共に、ジゴクに落ちるがいい。イヤーッ」再びの右ストレート!

「グワーッ!ニンジャスレイヤー=サン、貴様・・・貴様みたいに悪い奴は見たことがねえ、貴様は善玉なんかじゃねえ、悪党だ、一番薄汚え大悪党だーー!」

バトルフィールド・セキバハラ、更に最果てのテキサスめいた荒野。付近に音は無く、ただジゴクめいた夕陽が無慈悲に照りつけるだけ。時たま思い出したように、バイオハゲタカの鳴き声だけが響く。

ニンジャの爆発四散する音が、どこからか微かに聞こえた。

ザ・グッド・ニンジャ・ザ・バッド・ニンジャ・アンド・ザ・アグリィ・ニンジャ 終わり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?