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慣習以外の選択肢

「君の瞳に恋してる」(Can't Take My Eyes Off You)/
ボーイズ・タウン・ギャング(Boys Town Gang)
はみなさんご存知ですよね。

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(1982年発売当時のシングルジャケット)

原曲はフランキー・ヴァリが1967年に発表した楽曲ですが、ボーイズ・タウン・ギャング(Boys Town Gang)がディスコアレンジ・ヴァージョンを1982年に発表して大ヒットを記録。
日本ではオリコン洋楽シングルチャートで3週連続1位を獲得するなど、日本・イギリスなどで大ヒットしました。

本当に当時大ヒットしたんです。
あちらこちらでかかってました。
僕はこの時、レコード屋さんのお兄さんだったのでよく知っていますが、シングルレコードが飛ぶように売れていましたしね。
なので情報はこのジャケットしかなかったので、なんとなくのイメージでこのジャケットのような人たちと女性ボーカルが歌っているんだと思っていましたから、PVのようなお世辞にもかっこいいとは言い難い、ツッコミどころ満載のゲイ風男性コンビをくねくね引き連れた女性ソロヴォーカルのユニットだとは夢にも思ってなかったのですけれどもね。笑

ちなみに1989年に放送されたフジテレビ系テレビドラマ「君の瞳に恋してる!」はタイルトをパクっただけのまったく無関係です。

でも、この大ヒット曲を紹介したくてこのnoteを書いてるわけではないのです。w
この曲を聴くたびにずっと思ってたことがあったので書いてみようかと。

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この曲は聴いていただければわかると思いますが、とても耳に心地いいポップチューンですし、一聴したら忘れられないキャッチーなフレーズがこの楽曲のすべてと言っていいかも知れません。
でも、普通の曲は、まずイントロがあってAメロが始まります。
そしてブリッジがあって(ない場合もある)、サビが展開される、という黄金の法則があるんです。
多くのポップチューンは時にサビから始まるとか、イントロを無くしてAメロから始めるとか、まあパターンは色々あれど、このパーツ構成はそんなにいじられることはないんですね。

しかし、この曲の最大のキャッチ・メロディーは、Aメロとサビの間に配置されたホーンセクションのパートです。

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この、チャーラッ、チャーラッ、チャーラッチャッチャッチャ〜という印象的なホーンフレーズは、この曲の個性を決定的にしています。

が、ずっと僕が思ってたのは、このAメロの後にこのホーンフレーズを置いてサビに繋げようとなぜ思ったんだろう!という感動です。
このイントロでもなく、ブリッジでもなく、メインメロでもないこのホーンセクションがここに突然登場するだけで、この曲のサビがものすごい名曲に生まれ変わるというか、この曲が素晴らしい高揚感を持った名曲に感じるという、この曲のGoodな要素の何もかもを生み出してしまうというアレンジのマジックに、如何しようも無い感動と尊敬を禁じ得ないのです。笑

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僕らの仕事は、多くの慣習や法則に縛られて営まれます。
その方が上手くいくとか、その方が効果的だ、ということは大いにありますから、それらを完全に否定するものではありません。
でも、多くの現場は、そうしないことが悪のようにことを運ぶシステムが出来上がってしまっています。
「そうじゃないといけませんよ」という縛りに、とても大きなストレスを感じて進めなければならない場合が本当に多くあるんですよね。
でも、その法則や慣習やいわれもない規則に縛られた状態では、この曲のような構成は生まれないと思うのですね。
とはいえ、こんな神がかったお告げのようなアイデアや思いつきはなかなかあるものではないと思うのですが、理論で生み出すことも可能といえば可能です。
この楽曲ももしかしたらそういう効果を計算して生み出されたものかも知れませんからね。
まあ、そんな計算は、閃きや感覚を信じて生きてきた僕には難しいのですけれども。w
でも、そういう理論や計算を駆使するにしても、常日頃からありきたりの慣習から脱却した思考をしておかなければならないのではないか。
決まったやり方や慣れ親しんだやり方から多くの選択肢を生み出すには、やはり常にそういう訓練は必要なのではないか、と思うのです。
それは僕らのすべての仕事においても言えることで、自由な発想や、「慣習とは違うやり方だけどこれは効果的だ」と思われる判断を、阻害したり否定したりするものではないな、と思うんですよね。

いい仕事をしたいと思うのです。
それらはすべからく自由の名の下に生まれ出るものでもありません。
慣習や決まった様式美の中から生まれることも、もちろんあります。
それでも、やっぱり、多くの可能性を信じて、
吟味し、
模索し、
閃きや思いつきを信じて、
「こうしておけばいいんだよ!」という慣習ルーティンと戦っていたいな、と思うのです。

クリエイティブにおける楽しさや幸せという感覚に依存するためには
必要不可欠な永遠の戦いですから。笑

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最後に、オリジナル版「君の瞳に恋してる/フランキー・ヴァリ」1967年をどうぞ。


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