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Same Old Lang Syne

昔々。
ダン・フォーゲルバーグという人がいました。
アメリカ合衆国イリノイ州出身のこのシンガーソングライターを
僕はこよなく愛していたのです。w

どこまでも純粋な想いを、ここまで文学的で内省的な作品として生み出し続けられるアーティストが、果たしてどれだけ他にいるだろうかとずっと想っていたものです。
詩の優しさや深さはもちろんなのですが、そのソングライティングの才能も信じられないくらいに素晴らしいのですね。
彼のいくつかの代表的な名盤はもう擦り切れるほどに聴きまくっていました。
それこそA面をかけてるのにB面が聴こえちゃうんじゃないかというくらいにね。(笑)

Dan Fogelberg - Longer

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彼との出会いは80年代初頭。
僕がまだ10代の頃でした。
京都の十字屋というレコード店のアルバイトだった頃ですね。
その頃のレコード屋の店員はみんなすごく商品知識があってね。
自らのレコード・コレクションもハンパない人たちが多かったのです。
僕の働くレコード屋にもそういう先輩たちがたくさんいましてね。
2000~5000枚くらいのレコード(ここでいうレコードはLPのことです)を所有してる人なんてザラでしたからね。
店長なんて1万枚を越えるコレクションだということで、僕が仕事を頑張ったご褒美にと、パーロフォン時代のビートルズのアルバムを数枚くれたりしましたからね。w w
確か『BEATLES FOR SALE』と『REVOLVER』と『A HARD DAY'S NIGHT』だったと思います。
東芝EMIの日本盤とは違ってすごくジャケットの写真が綺麗だったので感動しましたね。w
もちろん今でも大切に持ってますよ。w
まあ、明らかにそういう人たちの影響で、僕ものちのち最大時2500枚を越えるレコードを所有することになっちゃうわけなんですけれどもね。(笑)

そんな風に、その頃の18だか19だかの小僧の僕に
24や25のお兄さんやお姉さんはとっても優しくしてくれたわけです。
なのでよく遊びににも連れていってくれたし、よく泊めてもらったりもしてたんですね。
そしていつものように先輩の家に泊めてもらってた時に、先輩がヘッドフォンと歌詞カードを僕に渡して
「読みながら聴いてみ」
と言ってレコードをかけてくれました。
英語の歌ですがとてもわかりやすい詩なので、日本語の訳詩を読みながら歌を追えました。
「いい歌だなー」なんて聴いてたんですがね。
歌はサビへ。
全身に鳥肌が立ったのを今でも憶えています。
素晴らしい声と歌と旋律。
そして歌われてるまるで映画のワンシーンのような内容。
もう一発で彼の虜になってしまったんですねー。w w

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その時先輩がかけてくれた曲が、ダン・フォーゲルバーグの『Same Old Lang Syne』でした。
1981年発表のアルバム『The Innocent Age』に収録されてる曲ですね。

邦題は『懐かしき恋人の歌』。
昔の恋人との偶然の再会。
しばしの会話。
純粋だった頃となにも変わらない何か。
そして切ない決して戻れない
あの頃のイノセントへの鎮魂。
そして僕らはまた日常へと帰ってゆく。

若かった僕でも、その歌声とサウンドで充分に感動出来る内容だったのですが、今聴くとさらに切なさが増す、本当の大人のラブソングです。
マイケル・ブレッカーのサックスに最後は泣かされますから(笑)。


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オリジナル・アルバムでありながら、なんと2枚組のこの大作は、ドン・ヘンリー、グレン・フライ、ジョニ・ミッチェル、クリス・ヒルマン、リッチー・フューレー、エミリー・ハリスなど、蒼々たるメンバーがサポートしています。
まさに彼の集大成的なアルバムと言えるでしょうか。
2枚組ということで、当時で約4000円ほどのアルバムです。
若いアルバイターの僕的には一発でおこずかいが飛んで行ってしまうような価格ではありましたが、全くもって買ってよかったと今でも言えるほど、十分に元を取ったと言える名盤に出会えたことになりましたから。笑

このアルバム以外にも、彼はいくつか素晴らしいアルバムを残していますが、2007年の12月16日に他界されました。
しかもこの『Same Old Lang Syne』はクリスマス・ソングでもありますからね。
彼の命日辺りにはぴったりの曲となってしまったんですね。

今年もまたこの歌の似合う季節には、ダンを偲んで彼のアルバムを全部聴くクリスマスにしようかと。w
レコードプレーヤーも新調したことだしね。笑

***

ちなみに、彼が生まれたイリノイ州ピオリアでは、歌中で彼がかつての恋人と再会したコンビニエンスストアと、彼と元恋人の母校であるウッドラフ高校を結ぶ通りが「フォーゲルバーグ・パークウェイ」と命名されていて、ダンの誕生日の8月13日をダン・フォーゲルバーグ・デーとしています。


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