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ささやかな「善かれ」

書籍のデザイン

書籍をデザインする時、本文部分のデザイン以外にデザインする箇所があります。
表紙カバーと帯と本体表紙(カバーを取った裸の表紙部分)と化粧扉(最初にめくった時に出てくる本文とは違う紙で綺麗に作られた中表紙みたいな所)。
そして場合によっては見返しと呼ばれる部分(表紙をめくった裏にある、よく色紙で綴られた表紙周りと本文のつなぎのような部分)をデザインすることがあります。

そんな中で一番規制が多いのがもちろん表紙カバーです。
ここは言わばその書籍の顔です。
商品としての価格やバーコードなどの記載も必要ですし、出版社の商品としての重要なキャラを担う部分でもあるわけですからね。
とは言っても、全体のディレクションとして、僕にご指名がかかってる以上は、僕のセンスや力量を期待されてるわけなので、基本的に僕のアイデアを活かすことになります。
それでも例えばタイトルの色や大きさ、場合によっては配置位置まで変更させられる場合があります。
営業側からの要望の場合もありますし、担当編集者からの要望の場合もあります。

「善かれ」るために

僕らデザイナーが「善かれ」と思ったことが、営業的な慣習や編集者の感覚の違いによっては「善かれ」てなかった、という場合があるんですね。
もちろん僕はいい感じの大人デザイナーですから、ハイハイと聞き入れ、最善の調整を施します。w
デザイナー的には少々意図が違ってしまっても、それを無視することは決してありません。
最終的には制作に関わる全ての人が「随分と「善かれ」たんじゃね?」と思ってくれることは商品として大事なのだと思うんですよ。
なので商業デザイナーの宿命としては、商品を最終的に「善かれ」るように導くことが最大の目的で、その「善かれ」ることはお客さんに向けたサービスやアピールでなければいけないのですよね。

帯も同様のことなんです。
もちろん、すべてのアイデアが採用されて、デザイナーの思うままに仕上がる商品もありますよ。
そういう商品には間違いなく素晴らしい個性が生まれ、購入されたお客さんの愛着度が格段に上がり、愛されて所蔵される書籍となることがほとんどです。
でもすべての書籍をそういう本にする必要性がないというのも現実としてはありますからね。
予算的なこともあるし、深くこだわらなくても売れるジャンルの本も実はあります。すべてが面白アイデアやオシャレセンスを折り込むことは必要ないし現実不可能なのですね。

自由なパーツ

そんな規制の中、結構デザイナーの自由にさせてくれるパーツがあるんです。
それが本体表紙といって、カバーを取った裸の状態の表紙+背表紙+裏表紙ですね。
普段目にしない部分ですし、ここの出来が店頭での直接的な貢献を果たすわけでもありません。
中にはこの部分も厳しく規制してる出版社もありますが、今まで関わった多くの書籍のそのほとんどが、かなりの自由度を僕に与えてくれてきました。
だから結構面白い感じで作らせていただきましたよ。

いくつかの例を。
カバー+本体の順で。 w w

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ここは目に触れないから適当でいい、とか、慣習内で充分です、というのはイヤなんです。
そうじゃないとダメです!というなら仕方ありませんが、可能な限りその本が特別な個性を持てるようにデザインをしたいのですよね。
むしろ、買ってみて何かの機会で本体表紙を見た時に「あ、こんななってるぅー!」って思うようなデザインなら、その本を購入した人はちょっとハッピーな気持ちになりませんかね? 笑
「売上げには何の影響もないから」という営業の方もいるとは思いますけど。
確かにおっしゃる通りでございます。笑
でも逆に影響ないなら自由にさせてくださいよ、とね。
なのでデザイナーが、購入したお客さんの一部の方に喜んでもらうための
ささやかな「善かれ」を提供するお楽しみということでお許しいただければと。笑


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