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遊び心

エディトリアル・デザインには、本の装丁や、表紙周りだけでなく中身も含めて一冊まるごとをデザインしたりということがあります。
一時期、自分はグラフィック・マガジンのアート・ディレクターでありエディトリアル・デザイナーなんだと公言していたくらいに、ヴィジュアル雑誌のデザインが僕は大好きだったのですが、本の装丁や、単行本のデザインは、マガジンとはまた違った楽しさがあるものなのです。

とはいっても、文字の単行本におけるデザイナーの出番なんて表紙周りか、せいぜい巻頭部分のビジュアルページしかないでしょ?と思われる方もおられると思います。w
確かに、その世界でしか生きてこなかった編集者にとっては、至極あたりまえなレイアウト慣習の中で完結してしまえる世界でもあるんですね。

読みやすいかどうか。
想定読者にあった文字の大きさか。
本の性格やイメージに即したフォントかどうか。
字間は?行間は?
余白はこの本にふさわしい余白か?などなど。。。。。
そうは言っても、単純に文字を組んでハイできました!とはいかないものなのですけども。
しかし。
それにしたって前出のレイアウト慣習の範囲内で納めてしまっても誰も文句を言わない世界なのですね。
でもそれでいいのかーっていつも思うのです。笑
つまり、読者が読みやすいかどうかは留意するのに、読者が楽しいかとか心地いいかとか愛くるしく思うかどうかとかは留意しないのが、一般の書籍編集の世界なのですね。

つまんなーい。笑

と思っちゃうのが、フワフワした僕のようなデザイナーの悪い癖なんですがね。笑
基本的には和を重んじるジェントルマンなので(笑)、つまんなくていいという編集者には、彼(彼女)の望むものを最善を尽くして提供します。
だってそれは決して手を抜くとかやる気をなくして絶望の元に投げやりで生み出す性質のものではなく、定型に則った手法や方法を良しとしているかどうかだからです。
だけど、それを許してくれる編集者や出版社と出会ったら、積極的に遊んでしまうのがいいと思うのです。

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以前にも紹介したことがありますが、例えばこの書籍。

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装丁、ページデザイン、イラストまですべてを僕が手掛けたのですが、幸運なことに、僕が提案する遊び心をOKしてくれる編集者だったのですね。w

この本の装丁を考える上で思いついたカバーのイラストも、タイトルの配置も出版社名の表記位置も配色も、何もかもを自由にさせていただけました。

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見開きノンブルは左ページにまとめて、遊び心満載の配置をね。w

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カバーを取った本体デザインも遊んでみました。w

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そしてこの本も。

この本の制作時点で、いつかご一緒したいなと思っていた版画家の猫野ぺすかさんに作画をお願いしました。
最初は各章の扉だけの作画の依頼だったのですが、なんと挿絵や遊び用の小物まで快く引き受けていただけて。
おかげで、各所隅々で、遊び心満載の素敵な本になったと思います。

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本を商品としてカタチにするのがデザイナーの第一の役割ですが、本に個性を持たせ、その本がただの読み物ではなく、大切なアイテムになってくれるようにちょっとした手助けをするのも、僕らデザイナーのもう1つの大切な役割なんだと思うんです。
なので思うに結局のところ、素敵なモノを生み出すにはいい出会いといいパッションが不可欠なんだと思うのですね。
この本を「特別なモノにしたい」と思ってくれる編集者に出会えるかどうか。
そして編集者がデザイナーのパッションを信じてくれるかどうか。
その出会いは、出来上がるモノに対して大きな影響を与えるのですね。

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「そんなことしなくていいんだよ。読者になんのためにもならないから」

そう言う編集者や版元の担当者もいるでしょう。
それが最善の場合もあることもほんのたまーにあります。w
すべてのケースがそうでないように、すべてのケースがそうであるはずもないのです。
でも。
可愛い。
愛しい。
面白い。
かっこいい。
気持ちいい。
それが読書の邪魔にならないのなら、デザインの力でどんどん入れていってあげればいいのではないか。
それがもしかしたらお得感というか、得した感を与えるかも知れないし、その心地よさや可愛さやかっこよさが、その本を大好きにさせるきっかけの1つになるかも知れないわけで。
言ってみれば「深く愛されるための1つの要素」になり得るのではないか、と。
まあ、ギャランティは変わらないので、自分でやることを勝手に増やして、後で大変になるのは自分なんですけどね。笑
最近なぜか、どこもかしこも個性を生み出すための所業をOKしてくれない風潮にありますが(笑)、デザイナーはそれが出来る唯一のお仕事なわけですからね。

要は、とどのつまり、結局のところ、言ってみれば。
僕らデザイナーは、読者が、「この本好きすぎる!」と思ってもらうために仕事をしたいのです。
それがなかなか出来なくなる状況が数多あることに絶望はもうしてません。そういうものだと思ってますから。笑
だけど、それが出来る仕事に出会えることを諦めてもいませんからね。
なので、手に取った人が、そう思ってもらえるための遊び心は、これからも機会があればチャレンジしてゆくべきだと思っています。
そういう、「本をとっても愛する編集者」に出会えることを祈って。
なんですけども。笑




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