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好きこそものの・・・

7月から新学期がはじまり、
新たに受け持つことになったクラスに
「食べることが大好き」な女の子がいます。

日本が好きになったきっかけは
「旅行で日本に来た時に、日本の牛乳を飲んで
その美味しさに感動したから」

日本で勉強している目的は
「日本の食品業界に就職すること」

毎日、午後の授業が始まる前に
自分で作った大きなお弁当を美味しそうに食べている。
「美味しそうだね」と声をかけると
どんな料理を持ってきたかを説明してくれる。

ところでこの学生は、普段から意欲的でよく発言し、よく質問し、
とても楽しそうに授業を受けていました。
わからないことがあれば必ず質問し、細かくメモを取って、新しく覚えた言葉は必ずすぐ使ってみる。
教師にとって応援したくなるタイプの学生です。

先日、この学生がいるクラスで会話の授業をしました。
「日本語生中継」を使って、レストランでのやりとり(注文、メニューの内容を尋ねる、間違ったオーダーを指摘する、等)を練習しました。

まだ日本語の勉強を始めて1年弱、知らない言葉も色々あります。
「こぼす」「しょっぱい」など・・・、具体的な説明を入れながら進めていきます。

ふと、例の学生を見ると・・・
普段の3倍前に乗り出し、逐一メモを取りながら授業を受けている。
ロールプレイでも料理の説明にアレンジを加えたり、
「ファーストフード店バージョン」で会話を作ってみたり。

しかもこの教科書、会話のCDを聞くとスピードも速いし聞き取りにくい表現も多くて難しいのに、「ブラジル料理のコッシーニャ」なんて言葉まで聞き取ってる!

授業が終わり、彼女は
「先生、今日の授業ほんっっとに楽しかった!
食べ物の話だとやる気が10倍くらいになります!」と言って帰っていった。

あぁー、本当に食べることが好きなんだな。
これこそ自分の好きなことと学習意欲とが結びついた姿。

この姿。
実は私も同じだったんです。

私も昔から食べることが本当に好きで、自分で料理をするのはもちろん
美味しい店に食べに行くことも大好き。
「食」をテーマにした映画や漫画や小説もたくさん見たり読んだりしました。

そんな私が子供の頃に英語の勉強をはじめて
中学生の頃にアメリカを旅行した時に
なぜかメニューが全部読めて、英語で注文ができちゃったんです。

自分ではあまり意識していなかったけれど
一緒にいた両親がとても驚いて
「好きなものだと覚えるのが早いのね」と言っていたのを聞き
「じゃあ、食べ物中心に覚えていけばもっとうまくなるかも?」と思い立ってその通りに勉強を進めた結果、抵抗なく英語が覚えられたんです。

授業での学生を見ていて、そんなことを思い出しました。

今までにも何人もそうした学習者を見てきました。
食べることに限らず、アニメやジャニーズが好きで好きで・・・という学習者。
やはり吸収が早い人が多い。
そして、「学校」や「教科書」以外のところから学んでくるものが多い。

語学を学ぶきっかけは人それぞれで、
食べ物だ趣味だと言っている余裕なんてない人もいます。
生活するために、将来のために。
だけど、言語って本当は本能的なもの。
だから自分の「好き」と結びつけば、今の何倍も学習効果が発揮されることもある。

私はそう信じて
学生にはなるべく趣味を持ったり、好きなことをもう一歩突き詰めてみることを推奨しています。








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