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ゴロゴロ?
雷雨 怪物 コーヒー
「ゴロゴロッ!」
どこかで雷が鳴る音がしている。確か今日は雨の予報だったが、雷雨だとは。
「吉岡さん、今日はもう閉めようと思うから前にある看板片しちゃって。」
私はアルバイトの学生に声をかけた。この雨ではお客さんも少ないだろう。彼女には申し訳ないが、閉めたほうが店のためというものだ。
彼女は、了解しましたと元気な返事をして、軒先にある「野崎コーヒー店」と書かれた看板を片付けるため、店の入り口へ走っていった。
直後、「ゴロゴロッ!」ともう一度激しい轟音が鳴ったかと思うと、青ざめた顔をした彼女がものすごい勢いで店に戻ってきた。
「どうしたんだ?」
と私が尋ねると、彼女は
「かっかっ…怪物ですぅ! 」
とよく分からないことを言った。
よくよく話を聞くと、店の路地の向こう側に、雷光に照らされた巨大な影が見え、その影が近づいてきたのだという。
「しょうがないなあ、私が見てくるから、吉岡さんはそこでコーヒーポットでも洗っててよ。」
「ありがとうございます店長。でも、気をつけてください。ものすごい牙も見えましたから。」
そんなものいるわけないじゃないか、と思いながらも、彼女のあまりの怯えようにだんだんと怖くなってきた。だが、カッコつけた手前引き下がる訳にもいかない。
私は勢いよく扉を開け放った。
店の前にはビショビショに濡れて、不機嫌そうな顔をした猫がゴロゴロと喉を鳴らしながら座っていた。
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