見出し画像

40年ぶりに読んだドゥルーズに腹落ち!~「有限化」を知り勉強しよう~千葉 雅也 × 鹿島 茂、千葉 雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版』を読む

2021年5月の月刊ALLREVIEWSノンフィクション部門のゲストは千葉雅也さん。鹿島さんとは初対面、初対談です。課題本は『勉強の哲学 来るべきバカのために 増補版』。千葉さんがドゥルーズ哲学をベースに、若者に勉強方法を伝授する、並みの実用書とは一線を画する「勉強本」です。
本書を取り上げるにあたり、40年ぶりにドゥルーズを読んだ鹿島さん。40年前はわからなかったドゥルーズに「腹落ち」したそう。全共闘世代の鹿島さんの世代がどのようにフランス現代思想と向き合ってきたか、千葉さんにとって興味のある話題が提供されていきます。対談はアーカイブ購入が可能です。
※対談は2021年5月29日に行われました。

インターネットとフランス現代思想に同時に出会う

第45回に川端康成文学賞を受賞したばかりの千葉さん。受賞作が掲載された「新潮」6月号も現在品切れ。書店で見かけたらぜひ購入くださいとのことです。

そんな千葉さんがフランス現代思想に出会ったのは95年ごろ。ちょうどドゥルーズが亡くなり、Windows95が普及したインターネット元年。宇都宮市の高校生だった千葉さんは、実家の職業柄いち早く自宅にインターネットがつながり、一面識もない大阪の高校生と掲示板やチャットでつながるなど、ドゥルーズのいう「リゾーム(rhizome)(フランス語で根茎という意味)」、「ヴァーチャル」を実感します。その後、東さんのデリダ論などにも触れ、修士課程でドゥルーズを専攻します。千葉さん曰く、「フランス現代思想ブームに触れた最後の世代」。

蓮實さんを慮って、ミニ蓮實のような言説になってくる。蓮實さんの意図することは、ミニ蓮實を作ることでなかったにせよ、学生はの言説は狭まってくる。鹿島さんはあえて蓮實さんから「切断」することを選択します。

鹿島さんの世代は全共闘世代で、運動にのめりこんだ賢い人がたくさんいますが、思想や運動にのめりこんだ人からは物書きが出なかった。物を書くためには対象からの切断が必要で、のめりこむ人はそれができなかったのではないかと推測します。

もう一つは「有限化」。鹿島さんはバルザックを研究するにあたり、バルザックと同時代の19世紀の資料を買い集めようとします。いわばコレクター気質ですが、それでも財力などから自ずと限界はある。また大学を定年退職し、研究室を失うという外部的要因は「有限化」鹿島さんに実感させました。

全共闘世代の鹿島さんのフランス現代思想への関わり方に千葉さんは興味津々でした。

********************************

とここまでは、「言語のアマチュア」である友の会の筆者がまとめています。一応『勉強の哲学』は読んではいるのですが、筆者は所詮アマチュア。千葉さんは『勉強の哲学』の中でこう述べています。

だいたいの理解をするときには、元のテクストにない言葉を使って自分なりに嚙み砕いていたりするものです。そのときに、自分のその言い方が、元のテクストに実際に書いてあったという勘違いがひじょうに起こりやすい。

お二人が何を語っていたかを知るには、自分で確かめるのが一番。

興味を持たれた皆さん、ぜひ、実際の対談をアーカイブ視聴でお確かめください。


【記事を書いた人】くるくる

【「ALL REVIEWS 友の会」とは】
書評アーカイブサイトALL REVIEWSのファンクラブ。「進みながら強くなる」を合言葉に、右肩下がりの出版業界を「書評を切り口にしてどう盛り上げていけるか」を考えて行動したり(しなかったり)する、ゆるい集まりです。
入会すると、日本を代表する書評家、鹿島茂さんと豊崎由美さんのお二人がパーソナリティーをつとめる、書評YouTube番組を視聴できます。
友の会会員同士の交流は、FacebookグループやSlackで、また、Twitter/noteで、会員有志が読書好きにうれしい情報を日々発信しています。
友の会会員の立案企画として「書評家と行く書店ツアー」、フランスのコミック<バンド・デシネ>をテーマとしたレアなトークイベントや、関西エリアでの出張イベント等が、続々と実現しています。2020年以降はオンライン配信イベントにより力をいれています。
さらに、Twitter文学賞の志を継承した「みんなのつぶやき文学賞」では、友の会会員有志が運営にボランティアとして協力。若手書評家と一緒に賞を作り上げていく過程を楽しみました。
2021年2月には、鹿島茂さんとの対談6本をまとめた『この1冊、ここまで読むか!超深掘り読書のススメ』が祥伝社より刊行されています。
本が読まれない時代を嘆くだけではダメだと思う方、ぜひご参加ください。
ALL REVIEWS友のTwitter:https://twitter.com/a_r_tomonokai



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?