ミッテランはドゴール?駐仏30年のジャーナリストの記録の凄み~山口 昌子 × 鹿島 茂、山口 昌子『パリ日記 第1巻 ミッテランの時代』(藤原書店)を読む~
藤原書店に感謝!
そもそもこのような大部の日記が出版されることとなったのは、藤原書店の社主の藤原さんより、山口さんが書いた記事をまとめることを提案されたことがきっかけ。「(記事は)ひと月に1本くらい?」と藤原社主に聞かれた山口さん。「ほぼ毎日」の日記を見て、藤原書店もびっくりしたのではと心配したそう。それでも、貴重な歴史の記録でもあるこの日記、第1巻は税抜き4800円。これが5巻まで発行されます。
「個人で購入することが難しいなら、ぜひ図書館に購入の働きかけを!」と鹿島さん。
フランスの「プレザンス」が高かったミッテランの時代
山口さんがパリに赴任した90年は、社会党の大統領ミッテランの2期目。90年から91年にかけて、湾岸戦争、ソ連崩壊など世界を揺るがす事件に対し、フランスがその「プレザンス(仏語で存在感の意味)」を高めていた時期でもあります。
山口さんも、当時フランス語が通じるアルバニアやルーマニアに出張を重ねます。90年12月31日の日記には「仏の国際的役割の多さに今更ながらに驚く」と記します。
「ミッテランは結局ドゴールになりたかったのでは」と鹿島さん。
フランスの外交の黄金期はまた、日本の「プレザンス」も世界的に高い時代でした。本書を書評した鹿島さんは、当時の日本のプレザンスが、ソ連崩壊後の欧州統合を促したという記述に、「今昔の感に堪えない」。
対談では触れられなかったのですが、90年11月23日の日記にはアラン・ドロンが自分の絵画のコレクションをパリの競売場と東京、大阪、名古屋、広島を衛星中継で結んで行うとの記述が。この記述など、まさにバブルの名残りのある日本の時代の象徴でしょう。
ほぼ毎日書かれているまさに「日記」なので、当時のパリやフランスについて知りたいと思った方、参考書として必読文献です。
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対談では、山口昌子さんが書かれたシャネルの伝記の話、フランスがなぜ中央集権の国であるかなどのフランス談義、00年代から日本の家電が急速にフランスの市場から消えていく話など、様々なトピックについて話しています。
アーカイブ視聴も可能なので、興味を持たれた方、ぜひレジェンド山口昌子さんの話をお聞きください。
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