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中の人

 SNSの「中の人」という表現は、ホラー味があって好きだ。

 ラヴクラフトの小説に、まさに「中の人」的作品があったはずだが、タイトルが思い出せない。体を乗っ取られる(交換する?)的な話だったように記憶しているが、ご存じのラヴクラフティアンの人がいたら教えてほしい。
(※その後、SNSを通じて、詳しい方から教えて頂きました。「戸口にあらわれたもの」でした。)

 人に聞かされる夢の話ほど退屈なものはないと承知しているが、「中の人」で思い出した夢があったのでここに書いておこうと思う。とても短いもので、そこまで人を退屈にすることもないと思うので大目に見てほしい。

 私と思われる人物は、朝起きて何気なく鏡を見る。何となく目に違和感。
(目のクローズアップ)
黒目の中央には、より黒い部分がある。いわゆる瞳孔である。
(さらにクローズアップ)
瞳孔と思っていたものは実は単に、眼球に穿たれた穴であり、その穴の向こうには、宇宙船のコックピットのようなものがある。そこには、一匹の昆虫のような生物がおり、目の前のコンソールをいじっている。昆虫生物の頭には、たくさんの電極が繋がっていて、そこから伸びるコード類は、背後の闇の中に続いている。今まで、私が、世界を見たり、世界を感じていると思っていたが、実際は、私の目の穴の向こうに巣食う昆虫生物が、見たり、感じていただけだった。私は自らが思考していると思い込んでいたが、ただの容れ物か、乗り物に過ぎなかったのだ。

 大体、このような夢だった。しかし、夢がこれほど明快で、論理的なはずもなく、覚醒後の私が、うろ覚えの夢の断片をこねくり回し、いかにもそれらしく再構成しただけではないかと思っている。

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