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【アトピー性皮膚炎】デュピクセント減量できれば経済的負担も軽減可能か?

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイト
を運営しています。

近年アトピー性皮膚炎の治療には
生物学的製剤という選択肢が増え
新薬の登場も続いています。

アトピー性皮膚炎で初の生物学的製剤
「デュピクセント」については
以前の記事で紹介させていただきました。

デュピクセントの解説はこちらの記事↓
<<<【アトピー性皮膚炎】デュピクセントって効果あるの?>>>

使用開始から時が経ち
長期的使用の有効性+安全性に関して
報告されてきています。

多くの方を救う薬剤となりそうですが
薬価が高く、経済的負担は大きな問題です。。

今回は持続的コントロールを目指して
デュピクセントの減量を試みた文献

見つけました。

経済的負担軽減への期待も込めて
デュピクセントの減量は可能なのか
一緒に勉強していきましょう!


1.そもそもデュピクセントとは?

デュピクセントは2018年4月に
サノフィ株式会社より発売された
IL-4/IL13受容体モノクローナル抗体製剤です。

成人(15歳以上)に対しては
初回→600mg 2回目以降→300mg
2週間隔で皮下投与します。

気になる薬価は以下の通りです。
(※2024年3月18日現在)

A-CONNECT:サノフィ株式会社

治療効果は期待できるとはいえ
1ヶ月で約35000円は負担が大きいですね。。

製薬会社は高額療養費制度の利用
お勧めされており、HPに紹介があるので
一度確認いただいてもよいかもしれません。


2.試験概要

2-1.試験目的

デュピクセントで症状が安定している人に対して
投与間隔を空けた場合効果を維持できるか?
を検討した試験です。

投与間隔を空けて、効果を維持できれば
経済的な負担も減らせますね。


2-2.試験概要

試験概要がまとめられた図を紹介します。

まずは試験デザインから見ていきましょう。

<試験デザイン>
実施施設:オランダの医療センター
対象患者:アトピー性皮膚炎患者(90人)
 GroupA − 従来通り2週間隔で投与継続
 GroupB − 従来通り2週間隔で52週投与後、
                    4週間隔に減量
 GroupC − 従来通り2週間隔で52週投与後、
                    6or8週間隔に減量

続いて、患者群の特徴を確認します。

患者背景

幼少期に発症した方が多いようです。
本試験はオランダで実施されており
アジア人のデータはありません。

今回これらの患者群は
重症度と患者希望に基づき
減量を試みる群に分けられています。

 減量を検討されるタイミングが
 52週=1年後という点がポイントです。


3.結果

3-0.評価項目

医師と患者が評価する指標として
医師:EASIスコア(湿疹面積+重症度指数)
患者:NRS掻痒スコア
で評価されています。

評価項目に関する解説はこちらを参考に↓
<<<アトピー性皮膚炎の評価項目一覧>>>

また各時点において
血清デュピクセント濃度
血清バイオマーカー

が調査されました。


3-1.血清デュピクセント濃度

 デュピクセントの体内の量は
 やはり減量するほど下がっていくようです。


3-2.EASI/NRS掻痒スコア

 EASI<7以下NRS<4
 コントロール良好としています。

 EASIスコアは著明に低下し
 その後悪化なく経過できています。

 一方、NRS掻痒スコアは最終ポイントで
 上昇していますが、スコアは低いままです。


3-3.血清バイオマーカー

 重症度に関連している
 バイオマーカーのPARCとTARCは
 どちらも低下し、投与間隔に関係なく
 低い状態を維持できています。


4.いつき博士の考察

今回はアトピー性皮膚炎治療を
進化させたデュピクセント
経済的負担の軽減を期待して
減量(投与間隔の延長)可能か
に関する文献について紹介しました。

以前、報告された
投与間隔延長を試みた検討(*)では
減量により効果の低下を認めたことから
2週間隔の維持投与を推奨しています。

ただし、上記の試験は16週後の減量であり
今回の52週後とは条件が異なります。

以上の結果から
1年以上症状が安定した場合には
減量も選択肢の1つになりそうです。

ただ、掻痒スコアが再燃している結果は
気になりますし
さらに長期に投与すると
リバンド現象も起こりうるのでしょうか?
この辺りは臨床の先生のご経験なども
お聞きしたいところです。

また体格の小さい日本人では
異なる結果が得られる可能性もあるので
日本人でのデータ解析も確認したいです。

経済的負担を感じながらも
症状の悪化を恐れていた方には
今回の結果は一つの朗報になりますね!

*Worm M, Simpson EL, Thaçi D, et al. Efficacy and safety of multiple dupilumab dose regimens after initial successful treatment in patients with atopic dermatitis: a randomized clinical trial. JAMA Dermatol. 2020; 156(2): 131-143.