【ALIVEとわたし】清永 奈穂さん(なほさん)
■安全な社会はそう簡単には育たない。そもそもそれを想像できる方が少ない現実。
私たちは団体名(特定非営利活動法人 体験型安全教育支援機構)の通り、‘安全’を‘体験的’に教えています。ゼロ歳から90歳まで、日本に住む方すべてを対象に(英語・中国語・韓国語などでの指導も含む)、とにかくどんな人でも犯罪や災害から命や尊厳を守るため、安全教育の場を提供し、指導者も育成しています。
例えば犯罪から子どもを守る安全教育・対策を思い浮かべた時、「防犯カメラを沢山つける」「護身術を習う」「そもそも加害者をうみださない」といったことがすぐに挙がると思います。しかし実は、犯罪からの安全教育には加害、被害時の人間の行動から視る極めて科学的な視座が必要なことや、安全な街づくりに自ら寄与する自助・共助・公助の力を持った大人を育てなければ持続可能な安全社会を創ることは不可能です。そして、そんな立派な大人は、自分で考え失敗しながら実行するシミュレーションを重ねないとそうそう簡単に育たない。そこまで想像される方はあまり多くないかもしれません。
■子どもの命を左右するかもしれない真剣勝負なのに、世間の評価は厳しく無償も多い。
ALIVE2020年1期の答申先としてお声がけをいただいたとき、こうしたことを伝えられる良い機会であると、喜びと期待を感じました。コロナ禍で、企業にとっても個人にとっても安全な営みを続けることが当たり前ではないことに気づかされた今こそ、まさに様々な方々に安全について考えてほしい、と希望をもってALIVEに臨みました。
もちろん、持続可能な安全安心社会を創るために!という理念を語りたいだけではなく、たいそうな理念がある割に、ちっちゃな苦労がいっぱいの私たちの現実も知ってほしい。例えば幼児から大学生にその成長に応じて具体的にかつ体験的に教えるということは、言葉で言うほど簡単ではなく創意工夫が必要で、子どもの人数、時間等に合わせ臨機応変に、もし今日犯罪や災害が襲ってきたとしても(しかも教えた通りのパターンでやってくるとは限らない)、無事乗り越えて回復できる力を45分でつけなければならないこと。その指導がその子の命を左右するかもしれず、常に子どもや先生、保護者に対して真剣勝負で息を詰めてやっていること。が、その割に報酬はかなり少なく(無償も多い)、しかし評価は厳しい(教育的効果があるか、教え方は上手か、時にマイクの調整まで私たちの評価になる)こと。だからか講師が続かないこと等々。
そこで、しょうちゃんと翔太さんと一緒に考えたテーマが、この現実と課題をクリアするためのでっかい野望「安全体験施設を2025年までに東京に造るロードマップを考える」。様々な危険を疑似的に体験できる街を再現し、その疑似空間の中で子どもも指導者も育て資金も集める、こうした施設をオリンピック後の東京に。そのためにまず、Session2で小学校での授業を間近で見てもらい、その厳しさ、楽しさを感じてもらおう、と千代田区内のK小学校での集合場所まで決めました。
■次世代リーダーの参加者にこそ分かって欲しい想い。でもなかなか届かない。
小学校の授業見学も計画するもコロナ禍となり小学校は休校。ALIVEもオンラインに決定。ああ私たち、「体験型」しかないのに。でもそれでもとにかく話そう、伝えよう。企業の人材育成の場で伝えるのもオンラインで体験型も初めて、初めて尽くしの中の格闘が始まりました。
絶対に安全教育施設の常設化が必要な私たちと「今どき’施設‘なんて必要?」「そもそもお金も人もいないのにできるの?」と疑心暗鬼なチームABC。体験教育とは?安全体験施設とは?を体験せずに伝えることは想像以上に厳しく、各チームに入ったスタッフは、心の中で私を恨んでいたでしょう。でもなぜイギリスでは1980年代から体験施設が企業等の協力によりどんどん建設されているのに、日本ではこの2020年になっても一つもできないのか。次世代リーダーにこそわかってほしいのに、私が非現実的なのか、と葛藤の日々でした。
しかし。我が安全教育チームはそこで終わらなかったのです。毎回翔太さんやフェローのまるちゃん等があえて潜在的に介在、これまで醸成させたALIVE秘伝のシステムが機能し、さらにことごとく厳しいジャッジをする三崎さんと坂本さんの愛のムチ=叱咤激励がみんなの起爆剤となり発奮。それぞれが懸命にロードマップを作り上げてくれました。
■人の力は凄いのだ。まさにこうやって安全安心なコミュニティができてくると世界中に叫びたい!
ただ、「こんなに真剣に考えてくれて、うれしい」という甘い評価軸が私に多少あったのか、最終的に採用不採用が中途半端なジャッジしかできず、「結局何だったんだ」とみんな不満に思ったのでしょう。その消化不良からか、ALIVE1期終了後「あらい部」に改名、まずは「2021春に体験型安全教室を開催」と狼煙を上げ、超多忙の中2週に一度のミーティング、チームに分かれ資金調達、コンテンツ、広報などの活動を続けました。クラファン、チラシ作り、集客、そして当日の講師まで(すさまじい集中力、調整力、ユーモア、寛容性、リーダーシップによるパーフェクトな講師及び不審者役)担い、直接参加できない方もご寄付や温かなメッセージを送ってくれました。「本教室は、子どもの安全に役にたつ」と回答した保護者が95%と大変高い評価もいただきました。
人への「信頼」というのは、価値の共有、能力、人柄がそろってできるもの。まさに「あらい部」は信頼の塊。人の力は凄いのだ、まさにこうやって安全安心なコミュニティはできていくんだ、と世界中に叫びたいし、そしてお一人お一人が本物の次世代リーダーだと心底尊敬しています。ALIVEは、確実に私の人生や団体に希望と豊かな出会いをもたらしてくれました。お返しできないプレゼントをいただいた私達ができることは、活動を地道に続けながらあきらめずに体験施設を造り育てること。頑張る勇気と気力をくれたALIVEに心から感謝しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?