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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第十七話 仮初めの帰還

前話

「お早いお戻りで」
「カール! 国の方は?」
「すべて滞りなく」
「だろな。お前なら。なんなら王権やろうか?」
 レオポルトが言うと流石のカールも青ざめる。
「王がこの国を作ったのですよ。私には妻と子供さえいれば……」
「結局ノロケかよ」
 レオポルトが拗ねて周りに笑いが起こる。
 ここはレオポルトやユレーネたちがいつもいる私的空間だ。その中の一つの部屋食卓にアイシャードはもう来てなにやら食べていた。
「さすがは宮殿じゃな。食べ物がうまいの」
「お爺ちゃん!」
「リリアーナ!」
 祖父と孫、いや、師匠と弟子が抱き合っている。その光景に焼き餅を妬く兄レオポルトである。
「レオには私がいるでしょ?」
 ユレーネが腕を絡める。
「ユレーネ……」
「レオ! しばらくここでセイレンの鍛錬をしたほうがいいな?」
「あ、ああ」
 危うく子供が欲しい、と言いかけていた。ニコが気を利かせて突っ込まなかったらとんでもない事になっていた。
 
 やばかった。

「ニコ。助かった」
 旧友に手で肩を叩いて礼を言う。ユレーネやリリアーナ達は気づいていない。カールは気づいている。じとっと見ると素知らぬ顔をする。出し抜いて結婚なんぞする側近だ。
「で、この方が?」
 後はぼかす賢いカールである。
「ああ。いろいろ複雑でな。セイレンという。ここからマーブルヘイブに行ってそこからエンシャントウッドに行く。魔法の修行も大事だからな。その前に数日間はフロリアンにセイレンの武具を作るよう依頼する。エンシャントウッドに行ってる間にできるだろう。そこからしばらく武器を覚えろ。弓のたしなみがあるのならローレライに学ぶといい。ニコの指揮下の元でな。一応嫁さんになる女性だから、夫の許可は必要だろう」
 ニッと笑ってセイレンとニコを見る。
「俺はそんなに心の狭い男じゃない。ローレライがセイレンに恋をするなら天変地異が起こる」
「それ、僕が非常に魅力的でない男という事じゃないですか」
「その通りだが?」
 男二人が言うとリリアーナがセイレンに抱きつく。
「みんなセイレンの事知らないからよ。セイレンは私の旦那様なんだから!」
「リリアーナ。爺ちゃんの跡目は継いでくれないのか?」
 アイシャードがよよ、と泣く。もちろん嘘泣きだ。
「嫁に行ってもお爺ちゃんの元へは通うわ。シルフィだっているんだもん!」
「妻と賢者の二刀流か。にいちゃんはそれができるのを楽しみに待ってる。リリアーナは賢い女の子だもんな」
 そう言って頭を撫でる。
「お兄ちゃん。いつまでも子供扱いしないで。リリアーナだっておねーちゃんと一緒よ」
「がーん。リリアーナに反抗されたー。ユレーネー」
 妻の肩ですすり泣く王である。もちろん、嘘泣きだ。嘘泣きのオンパレードだ。
「妹にして見ればお兄ちゃんは永遠にお兄ちゃんよ。大丈夫。さ。セイレンの修行の内は子育ての修行よ。カールとレナの三つ子の子育てを学ばないと!」
 朝から子供を作りましょ! 発言からは過激度は減っているが、やっぱりユレーネの子供作りましょ宣言は相変わらずあった。一応それが言えないため子育ての修行なのだ。
「ユレーネ。俺、体が二ついるよ」
「王。三つ子は体二つではもちません。3つ以上いります」
「かーるー。どうしてお前は三つ子を産んだんだ」
「産んだのはレナです」
「責任の半分はお前だ!」
 危ない会話を青少年の前で繰り広げる。流石にそれはどうなのかと思ったニコが間に入る。
「はいはい。レオは久しぶりに髪を染めてフロリアンの所だ」
「ああ。流石にこの髪じゃ、目立つからな」
 その言葉に結婚前のときめきを思い出すユレーネである。
「懐かしいわね。私もフロリアンの所に着いていくわ」
「ユレーネ……。わかった。着いてくれば良い」
 もう、反論する気がなくなったレオポルトは今日もキラキラお目々の妻のロマンスに付き合わされたのだった。


あとがき

相変わらず、目的地まで遠いです。まだ移動先まで行けてません。20話越えても。ようやく向かう所です。書いている段階で。その間にいろいろあって……。想定外が起きました。悪役早速出てくるし。また会う日までさようならー、状態です。とりあえずはあの悪役はちょいででして。その間にいろいろと試練が。リリアーナとセイレンの恋物語も進めないと行けないし。忙しい、風響の守護者と見習い賢者の妹陣です。

今日も欠勤決定で、この時間にアップです。朝活のことはあとで記事にします。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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