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【新連載・ロマンス・和風ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第十話 現れた冬玄と姫夏の異変

前話

「ひめちゃん!」
 步夢の声で当騎は目覚めた。
「むー?」
「当騎起きて! ひめちゃんが!」
「ひめがどうしたって?! え……」
 二人の間に挟まって寝ていた姫夏はまだ三ヶ月ほどだった。なのに、一歳ぐらいに成長してパジャマはびりびりだった。
「ひめちゃん! ママとパパ覚えてる?」
 シーツで体を温めるために包みながら步夢は聞く。
「うん。まま。ぱぱ。ちー」
 指さして答える。
「ならいいわ。ばぁばにママのお古を借りてくるから少し待ってなさい」
 難事が起こったとき女性が強いと言うが、まさしく步夢は母親としての行動しか取っていなかった。千輝が大きな声で鳴くと、ばたばたと足音が聞こえる。成長した孫を見て沙夜が顔を青くしている。
「ひめちゃん! ばぁばとじぃじのことは覚えているの? ああ、それよりお古ね。今は夏だから助かったわ。さ、おむつは買わないと行けないわね。じぃじ、行ってきて」
 指名された緋影はびびる。こちらは古代の世界しかしらないのだ。あかちゃんの紙パンツなんてわかるはずがない。
「一歳四ヶ月ってとこだね。ビックかLで買ってくるよ」
 慣れた日史が騒ぎを聞きつけてやってきた。
「で。そこの青少年はパジャマから着替えて置くこと。またベビー用品店突撃するよ」
「わかった。ひめちゃん。おなかすいた? 何食べたい?」
「ママのごはん」
「一歳四ヶ月で食べさせていいものって?」
「もう。幼児食だな。日史、それも見てきてくれ。ひめ。もうちょっと待ってるんだ。ひふみおじちゃんがひめにぴったりな服とご飯を買ってくるからな」
「ままのごはんがいいー」
「じゃ、おかゆ作ってあげる。ひめちゃん、おかゆ大好きだもんね」
「おかゆ、だいしゅき! ままだいしゅき。ぱぱいらないー」
「買ってくるなんて言うからひめちゃんパパ嫌いになったって」
「ひめー」
 半泣きの当騎である。ここまで子供に弱いのは初めてだ。
「ぴっぴのほんよんでー。ぱぱよんでー」
 さっきまで嫌いだったのに、当騎の顔を見ると自動的に絵本の読み聞かせになるらしい。
「ああ。どの絵本がいいかぱぱの部屋で探しておいで。ちー。護衛しろ」
 あん! と鳴いて姫夏の後に続く。姿は神獣になっているから大抵のことからは守れる。姫夏はたしかな足取りで歩く。ああ。歩き始めたちよちゃんがーない。
 そのそばで男の面前で着替えようとしたふぬけの步夢がいた。
「お前、俺以外に裸見せるんじゃない」
「ほう。当騎は見たと?」
 緋影がちろん、と見る。
「見るか。これからの事だ。ママはさっさと着替える」
「はぁい」
 そう言って隣の步夢の新しい部屋に行ってくるが声が聞こえてくる。
「はいはいもつたえあるきも初めての一人歩きも飛んだー」
 隣の部屋でぐすぐす步夢は言っている。それは当騎も同じだ。どれほど楽しみにしていたか。それが飛んだ。
 実子を産むしかないのか。遠い未来にがっくりくる両親である。闇の神になる娘ならこんな大成長もあるだろに。当の両親は人間の子と同じだと思っていたらしい。
「つめが甘いな」
 扉のところからニヒルな声が聞こえてきた。
「勝手に入らせてもらった。なんと、闇の神の娘を育てているとはな。酔狂なものだ」
「ちょっと。とっと! ひめちゃんは可愛い私たちの娘よ。酔狂なんて言わせないわ」
「とっともやめてくれ。これは夏音のみ使えるあだ名だ。緋影もしっかりじじくさくなって。まさか亜須伽の親をしてるとはな」
「冬玄、冷やかしに来たのか?」
「いや、ししょーの後を追ってただけだ。俺の妻はどこだ」
「と、言われましても……。魂の色を見分ける能力のある方はこの中では陛下しかいません」
 ちっと冬玄は舌打ちすると出て行く。
「少しは柔らかくなっていたのに……」
「ぱぱ、ぴっぴー」
 步夢が悲しげに言っていると、当騎の仮部屋となっていた書斎から姫夏が戻ってきた。冬玄もなぜか戻ってきた。
「その子を元に戻すのか? 最終段階まで持って行くのか?」
「冬玄?」
「ちょうど珍しい薬草が咲いている。それを煎じて飲めば元の姿に戻るが?」
 步夢は姫夏をつよく抱きしめて首を振る。
「そのままの姫夏でいいの。対応はちゃんとするわ。冬玄はこの吉野家を支えていって。それだけよ、願いは。のんのんとは会えないかもしれないけれど」
「そうか。こちらにものんは居なかった。そちらから正式に娘になるのを待っているのだろ。とっとと作れ」
「冬玄。性格横柄に変わりすぎよ。それ、緋影の性格じゃない」
「そうか? パルヴァール王家に生まれた故、あまりわからん。パルヴァールに妻がいると探しては居るのだが、見つからなくて日本に来た。あと残っているとする地域が思い浮かばない」
 冬玄が苦しげに言う。さみしい人生を送っていたのかもしれない。王室にはよくある話だ。
「いぎりち」
「ん? ひめちゃん。イギリスって言った?」
「うん。とっとのまま。いぎりちにいる」
「まぁ。ひめちゃん、賢いわねー。とっとの奥さんのいるところわかるのー。どうする、冬玄。その横柄な性格を矯正してここでチャンスを待つか自分で行くか?」
「おうへい……だから! ぬぬ。しかたあるまい。見分けられるのが步夢しかいない。しかたない逗留する。ししょーを連れて帰れと命令があったが、無視することにした」
「横柄も役に立つのね。さぁ。ひめちゃん、ママのおかゆ作ってくるわねー」
「ひめもいくぅー」
「ひめ。台所は危ないからパパとぴっぴの本を読もう」
「いやー。ままー。だっこー」
 いやいや期がいっきに来たのか? あの喜びの情景なしに。どっとげっそりする步夢と当騎である。
「ぱぱのだっこは?」
「いやぁ~。ままのだっこがいいー。ぱぱきらいー」
「嫌い……」
 当騎は打ちひしがれている。
「いつものことでしょ。ママ。ちーとあーちゃんのご飯もつくるからパパと仲直りしてて。パパショックでどっかいっちゃうわよ」
「いやー。ぱぱとままがいいのー」
 さっきのお利口さんの姫夏が怪獣と化している。ため息をつきたくなる仮の両親だ。
「じぃじとちーと遊ぼうぞ。おいで」
 沙夜に性格矯正を行われて柔らかくなった緋影が抱っこする。ぐすぐす鼻を言わせながら緋影の腕に抱かれている。その様子を冬玄が恐ろしげに見ている。
「緋影。そこまで変わるとは……。何があったのだ?」
「ここににはなんでも難事が落ちている。いちいち態度を硬化させている時間はない」
 緋影がきっぱり言って沙夜が、姫夏の頭をなでる。
「そんなに大変なのか。この家は……」
 ここに居る限り、性格が変わるほどの事が落ちているのか。はぁ、とため息をついて冬玄は、早く話し相手の夏音が生まれればいいのに、と不謹慎なことを考えていた。冬玄の心を開いた夏音はいつ生まれるか。当分先なのは吉野家では明白だった。


あとがき
誰も読まないのでトルーパーの名前いれました。たぶん、入れてもわからない人ばかりだと思いますが。冬玄のほうを描けばよかったかもしれませんね。姫夏ひいきの筆者です。いろいろ後半になるとよけいめちゃくちゃになってくるですが。今日は調子悪く欠勤したので執筆は別の時間か明日にもちこします。もう二十一話ですよ。(T_T)。ミューシャのはがき取り寄せたらドイツ製でした。すげー。なんとなくデスクの上に芸術品を起きたくて取り寄せました。はがきなので飾るやつは明日買いに行きます。

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