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【新連載・ロマンス・和風ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第九話 步夢のために必要人数はいくつあっても足りない。

前話

あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第九話 步夢のために必要人数はいくつあっても足りない 

「まだ、伸び盛りの青少年よー。ダイエットなんていやー」
「将来、おなかがぽよぽよした奥さんになってもいいならね」
「当騎はどんなんでもいいわよ」
「いやや。嫁さんはきれーなほうがいい」
「当騎の裏切り者ー」
 こうして、日史の許可を取ってRinことエリスはカロリー計算して厳密に正確な食事を出すように指示した。
 周りのみんなはおいしい吉野の家庭料理。ひとりさみしく、今まで食べていたものとまったく違うモノを食べていた。
「これ何? パルヴァールってわかるけれど」
「私の親友があなたのために作ったレシピよ」
「それって……まさか。雪乃ちゃん?」
「ん? 名前は違うけれどそうよ。おそらくね。私より早く出会っているらしいから」
「もう、いや~。神様試練のために何人集めるんですか~」
「何人でも」
 もと戦士仲間がにたーと笑って言う。
「そこまで集まればむちゃしんだろう?」
「しないわよ。ただ、向こう行ってひめちゃんを育てるだけじゃないの。ついでに生活基盤作って」
 步夢の秘密の使命の部分に触れると沙夜が咳払いする。
「あ」
 エリスは不思議そうな顔をしたが、いろいろあるのは承知済みのためスルーした。
「向こうで何が起こってるかわからん。それまで堪能してろ。エリスも大好きな親友だろう?」
 関西弁から標準語に直った当騎が言う。確かにこの世界でできることはしておきたい。おじいちゃんにドレス姿を見せたい。姫夏を立派に育てたい。千輝や暁輝と仲良く生活したい。いろいろ欲は考えるほど出てくる。沙夜とも優衣とも別れる。緋影とも。もう、忘れないように思い出をたくさんつくりたかった。
「ちょっと。そんなにひどい味なの?」
 エリスがつまみ食いする。気づいたら步夢は涙がこぼれていた。
「相変わらず、鈍感なやつ。今頃か? 覚悟はできてるはずだろ」
 当騎がきつめに言うが步夢の頬を拭く仕草は優しい。
「うん。覚悟はできている。ただ、百八つの煩悩がねぇ。と。これエリスが作ったの? おいしいよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。今のパルヴァールはこんなおいしいモノ食べれるのね。私が初めて行ったときの料理はもう過去のまずい料理って分類されているんだから。あれが、家庭料理だったのに」
「お前は料理上手だったもんなー。誰に似たんだか」
「そりゃ、普段の食生活でしょ。って。エリス。ダイエットしたらこっち側に入れるのよね? ね?」
「そうだけど。本当においしいの。私には到底……」
 エリスの不安そうな表情に步夢はデコピンする。
「痛ーい」
「エリスの料理は上手なの。おいしいの。これで判決は終わり! 食べるわよ」
「ああ。がつがつ食べないで。ゆっくりよ」
「あ。もう終わった。エリスお変わりー」
 足下の千輝がお手を足にしていた。
「そっちじゃないの。ちーちゃん。こっちのご飯のおかわりー」
「もう、終わり。デザートは一個だけいいから、それを楽しみに待ってるのね」
「はぁい。ひめちゃん。ママとデートしましょう」
 沙夜が面倒見ていた姫夏を受け取ってベビールームへ消える步夢である。心なしかふらついているのは食事なのか。
「いや、それ。俺に言わせてもうまい。俺たちパルヴァールで原始的な食事だったから、雪乃ちゃんもやるな」
「そうなの?」
 時の流れの速さを感じる。この二人は何度もこうして世界の異変を収めてきたのだろう。
「ダイエットやめようかしら」
「あかん。栄養偏ってるからこれを機に変わってもらわんと」
 関西弁が飛び出る。步夢に関しては関西弁が飛び出るらしい。
「そうね。步夢は好き嫌いが多いから、遠慮なくただしてやって」
 沙夜が言う。うんうんと優衣がうなずく。
「納豆が食べれるようにしてくれへんか。触っただけでも拒絶される」
 その言葉にエリスは笑う。いつでも納豆好きの夫と納豆嫌いの妻なのだ。
「だいたい、あいつは関西人ちゃうんか? あんなおいしいモノを」
「納豆は関東の」
「じゃ、步夢が正しい訳か」
 日史が言う。
 いや、と当騎が断言する。
「納豆は全世界のもんや! どこに行っても作るでー」
 にたーと笑う少年が恐ろしい。少女の方はどうしたのだろうか。静かだ。
 ベビールームをそっと覗けば步夢は眠そうにして不機嫌にしている姫夏をあやしていた。鼻歌で何か懐かしい歌を歌っている。
「ひめちゃん。おねんねしましょうねー。ちーちゃんと一緒に寝よう。ママもパパもいるからねー」
 姫夏はぐずっている。それでも鼻歌の子守歌を聴いている内に眠ってしまった。
「なんだか懐かしいわ。その子守歌」
「そう。私もメロディーしか知らないの。歌詞は忘れてしまってて」
「そう。ひめちゃん、いいママを持ったわね。あなたはいつもいいママね」
「そんなことないわ。出来損ないよ。子供怒鳴り回していたんだから」
「お互い様よ。抱いていい?」
「うん」
 そっと受け取る。何かふわっとした気を感じた。
「ん? 何かあった?」
「ううん。可愛い子ね。名前はどうやってつけたの?」
「気づいたら私が勝手に決めてたの。夏生まれのお姫様だから姫夏って。当騎は勝手につけておかんむりだったわ」
「ああ、結構名付け辞典とか持ってたものね。あら、おねんねから起きたの」
「ちー。あー」
「ちきちゃんとあきちゃんと遊びたいのね。ちょっと抱いてて、ちーちゃんはいるけれど、あーちゃんはまだミルクかどうか見てくるわ。ちーちゃん。エリスにお手」
 ぽて、と千輝はエリスの足下に手を置く。そして身を伏せる。何か順番だろかと思ってエリスはおかわり、と言ってみた。すると違う方の手をぽてと置いた。
「ちー。てー」
 姫夏が言うと千輝は何事か訴えて立ち上がった。それでも子犬なので小さい。
「ああ。ひめちゃんを下ろさないとお手できないわね」
 あん! と千輝は鳴く。
 姫夏を置くと千輝がやってきて姫夏の小さな手にお手をする。それを見てきゃっきゃと喜んでつかもうとする。千輝はつかず離れずと駆け回って姫夏と遊ぶ。
「ひめちゃーん。あーちゃんよー。でも、まんま食べておねむみたい。ひめちゃんもおねんねする?」
 姫夏のそばにクッションを押して暁輝を寝かせる。ぐっすり眠っている。
「うー。ちー。てー」
「お手ごっこがしたいのねー。ママもおてー」
 姫夏の小さな手にぽんと指を置く。その指をつかんで振り回す。
「ひめちゃん。いいわねー。ママのおてて握ってるのー」
 エリスも我が子の時を思い出して優しい声が出る。これからこのあかちゃんはいろんな経験をする。そして成長して、步夢のようなお嫁さんになるのね。
「ママ綺麗になるから、ひめちゃんも綺麗なドレス作ろうねー。いいでしょ。エリス?」
「いいわよ。一歳ぐらいに式をしてひめちゃんにリングガールになってもらえばいいのに」
「そうね。当騎と話をしておくわ。ただ。おじいちゃんが急いでててねぇ」
「へぇ」
 ママ友会話をしていても千輝が見てくれてるので安心だ。完全に安全ではないが、異常があればしらせるぐらいはする。聖獣の子なのだから。
「ひめー。パパとお風呂入ろうー」
 ドアを開け広げて当騎が来る。その音で姫夏は驚いて姫夏は泣く。
「あーあ」
「やったね」
「パパ、がんば」
 ハモって当騎の肩を叩くと二人で出て行く。
「おいー!!」
 泣き止まない姫夏を持て余して当騎が付いてくる。
「仕方ないわねー。ひめちゃんおいで」
 步夢が抱いて例の子守歌であやすとようやく静まる。
「はぁ。助かった」
 嬉々としていた当騎はしょんぼりとどこかへ行こうとする。それを步夢が止める。
「パパ。お風呂お願い」
「いいのか?」
「うん。ひめちゃん。パパ好きよ。大きな音にびっくりしただけ。静かにね」
「サンキュー。むー」
 エリスの前というのに情熱的なキスをして準備を始める当騎である。
「ごちそうさま」
「若くて失礼」
 きゃっとはしゃぎながらまたはしゃぐ步夢とエリスである。あの頃こんな風に話せたら。それは過去。今を生きよう。步夢は天窓から見える夜空を見つめた。


あとがき
結局、登販の画像を流しながら更新作業。忙しすぎる。おまけに眠い。ただ、ベタちゃんの食事の消化時間に二時間待たねば。iPad持ったら、ほぼアンドロイドのタブレットが不要に。仕事効率化もなかなかできます。Surfaceは手放そうにもへこみがあるので出せません。これはサブでおいておきます。富士通のサブもあるのですが。そういえば、季語シリーズとして出しいた季語から得たイメージで書く小説群、ここでマガジンにしてませんね。いつかまとめてみます。ローテション組んで一話ずつだせばいいのにやっぱり二記事出してしまいました。疲れた。用事を昔はタイムスケジュールで管理していたのですが、集中力が付かなくてやめちゃいました。チャットGPTさんにスケジュール出してもらったのですが。さて、ここからはバックアップの山を築かねば。ワンドライブにいれるのに変えたのですが、ドライブが同期できないとか言われて。同期ってどうやったっけ?とか思いってます。あと配信されたモノを見ていない。数十分なので特急でみてきます。見出し記事は相変わらずのいちゃいちゃです。

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