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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第一話 変わらない日々

 今日も恋人のユレーネの舞う姿を見ながら持ち込んだ仕事をするレオポルトである。アドルフを討ったあの日からもう二年も月日が流れようとしていた。そこへ近くの庵に住んでいる老賢者のアイシャードの跡目指名を受けた妹のリリアーナが勉強の帰り際に寄ってくる。
「お姉ちゃん。今日も綺麗ね」
 幼かったリリアーナはアイシャードの弟子と学んでる間に随分大人びてしまった。あの可愛いリリアーナを返せ、とレオポルトはアイシャードに言いたい。
「もうすぐ、舞の試験があるの。それに受かれば本当の姉になれるわ」
 ユレーネが舞を止めてリリアーナに声をかける。
「そうすれば、婚礼の式ね。婚礼衣装綺麗なんでしょう? リリアーナも早く着たいわ」
「リリアーナは嫁に出さん!」
 レオポルトが声を上げる。
「お兄ちゃんだけ嫁いで妹は行かず後家は可哀想だよ。レオ」
「ニコ。なんだ。国で何か?」
 両国が融合して「輝水の源の国 シャリスタン」になるといわれているが、その気配はない。両国の国交は復活したが、国は二つだ。レオポルトは炎の国の王宮からわざわざ使い魔のイーカムに乗って空路で来ている。
「いや。ローレライに会いに来たんだよ。ついでに久しぶりのデートを兼ねて」
 ニコは炎の国の軍人だが、この国の舞姫でアイシャードの孫、ローレライと両思いだ。どちらの国に行くかは本人同士で決めろ、と丸投げしてある。いずれ国は融合する。そうすればまた会えるのだ。今更どちらの国の人間か、などと目くじら立てる気はレオポルトにはまったくない。
「試験が待ち遠しいですね。ユレーネ様」
「だから。様はいらないわよ。私はただの舞姫の一人よ」
「そうなんですが、お綺麗すぎてつい」
「褒めても何も出ませんからねー」
「ココアが出る!」
 レオポルトとリリアーナが同時に言う。食い意地のはった王とその妹の姫は相変わらずだ。
「変わらないな。レオとリリアーナ様は」
 リリアーナはレオポルトの妹だが、血はつながっていない。そして、氷の国の王妃を母と呼んで慕っているので、氷の国で過ごさせている。何より、跡目と言ったアイシャードが離したがらないのだ。老賢者を敵に回すと何されるかわからなのでこれも丸投げだ。
「にいちゃんは、はやく家族全員で生活したいよ。リリアーナ、帰ってきてくれ~」
 情けない声に周りが笑う。レオポルトは王の素質を持ってその使命に当たっているが普段はただの青年と変わらない。ユレーネがただの乙女と言うのと同じように。
 
 これも即位式を正式にして婚礼式を挙げれば変わるのだろうか。レオポルトはふと、思う。
「なるようになる、だろ。レオ」
 ふっと考えにはまりそうになったレオポルトをニコが引き戻す。
「たまにあるのよ。どっぷり考え事にはまってるときが。何を考えてるのやら」
 ユレーネが呆れた声で言う。
「あんなことやこんなこと」
 きゃぴっとでも言いそうな愛想笑いを添えて言うと全員がドン引きする。
「俺だって冗談ぐらいいうぞ」
「そうなんだが……。似合わない」
「ええ」
 ニコとユレーネが言うとリリアーナはとどめを刺す。
「気持ち悪い」
「リリアーナ。可愛い俺の妹はどこへ行ったんだ。アイシャードにたぶらかされて……」
 嘘泣きする兄をほったらかしにする成長したリリアーナである。
「さぁ。お姉ちゃん。早く、ココア飲みに行きましょう。お兄ちゃん、イーカムに乗せて」
「ちゃっかりしてるんだから」
 そう言ってイーカムを召喚する。イーカムは普段は白いカラスの姿の使い魔だが、実際は巨大な鷹である。これで空路を使えるのだ。全員、氷の国の城へと向かったのだった。
 
 だが、新たな冒険の旅が彼らを巻き込まんとしていた。


あとがき
はい。始まりました。第二部。弟三部があるかは謎、です。第一部を書いている途中に二国間だけでは面白くないと第三国を作ったのがはじまりでしてて……。それももっと情熱的なシーンからの始まりだったのにいつのまにかまあるく収まって。しかも、レオとユレーネでなくリリアーナの物語と移動して。兄ちゃんと妹ががんばります。嫁は三歩下がってレオの影を踏む、です(笑)。とことんいじめられるレオ。

リリアーナの方もぶっ飛んでて困ってます。ユレーネのとんでもないがリリアーナに移動してます。前書きが長く何が起こるのよ! とじりじりするのですが、書き手もまだ終わらないーと目的地まで嘆いていました。次の目的地にまでまた長い道のりかもしれません。いつになったら終わるの?倍以上はかかりそうです。簡単にしてあるんですが。国があちこちできてしまい、混乱してます。全国ツアーしたりして。そしてロープレ経験からしかできない話の運び方。もっと戦術練らないとーと悩んでます。これからこの第二部、よろしくお願いします。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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