【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者達と見習い賢者の妹 第四十三話 戻った記憶、手放した経験値
前話
「リリアーナ。声がでかい。ほら、魔法が解けちゃったじゃないか」
「魔法?」
「僕達はエレメントマナの入り口に立ってたんだよ。これじゃ、一からやり直しかな。キノコ師匠」
セイレンは足下のキノコに言う。
『そうでもないようだよ』
キノコ師匠は言ってリリアーナに視線を向けるようにセイレンに言う。
「き、キノコがしゃべったー!!」
リリアーナはとなりのセイレンに無意識で抱きつく。
『そんなに驚かないでも良いだろう? ルネスクリームとと話せるんだから』
「ルネスクリームとセイレンシアは別よ。賢者の使い手だもの」
「じゃ、私記憶が戻ってもここで修行すれば良いのね」
最初のショックはどこへやら、自然とキノコ師匠をリリアーナは受け入れていた。
『ほらね』
とキノコ師匠はセイレンに言う。
「で、何をすれば良いの?」
リリアーナはもう普通だ。自分はあれほど驚いたのに。記憶が戻るとその間のことは忘れてしまうと言われている。それでも今のリリアーナは前のリリアーナと変わらない。
「何見てるの?」
「いや、つよいなーって」
「お兄ちゃんに教わったのよ。郷に入っては郷に従え、って。その土地土地の風習を決して愚かに思ってはいけないって。そこにはその意味があると」
「兄さんが……」
ふむふむと言ってるとリリアーナに足を踏まれる。
「いてっ。何するんだよ」
「古木と話さなくて良いの?」
うっ、とセイレンは詰まる。
「仕方ないね。リリアーナが経験値を取り戻す間に古木さんの悠久の語りを聞くよ。リリアーナはそこのお花さん達と歌ったら?」
へっ?
自分を引き合いに出されてリリアーナは驚く。自分にも聞く能力があるのだろか?
「お花さんって? あなた達? 私に歌を聴かせて」
恐る恐るリリアーナは声をかける。その優しさに反応したそこらにある全部の草花が歌い出す。
「うっ。音が大きすぎるわ。もうちょっと静かな曲にして」
リリアーナが言うとその指示通りに歌声は静かになり、静かなレクイエムを歌い出す。
「内容は変えなくて良いのよ。内容は。その曲は精神的に危ないわ」
『どんな曲がお望み♪』
花の一輪が問いかける。
「そうね。シャリスタンの話は届いている? その国の抒情詩のようなものはないの?」
『あるわよ。さぁ。みんな行くわよ』
草花の大合唱が裏庭に一杯に広がる。リリアーナはようやくご希望の歌になったと瞼を閉じて聴き出す。
セイレンは隣で古木の相手をしながら歌を聴く。自分は器用なことも意外に出来る事を発見するセイレンで在る。
二人で裏庭の草花と一緒になる。先ほどと同じ気持ちになる。母の体内にいたような感覚を覚える。
リリアーナ静かに泣いていた。体内の感覚がきっとリリアーナの心に変化を遂げていると感じる。
流石は賢者の弟子だ。感情と歌と共鳴している。少々、賢者の弟子になりたいと不埒に思う。
賢者の弟子らしく、先ほどまでの記憶喪失の件もあまり気にならないらしい。失われた経験値をすぐに取り戻していた。
「流石だね。リリアーナ」
「何が?」
「全部だよ。全部」
セイレンの謎かけを奇妙な思いで聞いていたリリアーナだった。
あとがき
朝七時と言っていたのに、目覚ましがしっかり六時でした。お茶を大量に飲んで朝食まで更新してます。なんだか夢に亡くなった祖母と父が出てきました。私の部屋があまりにも乱雑すぎて怒られたようです。昨日もイラストで四苦八苦しましたが、結局イメージピッタリのモノはできず、寝るのが遅くなっただけでした。まぁ、「緑の魔法と恋の奇跡」が一話書けたので、良かったですが。なぜかエッセイの勉強に人が集まっている。普通の切り口ですが。つらつら書くだけの。でも、読んで下さる方がいるのはありがたいです。さて43話ですが、あと何話載せられるか。まだ星彩動かないんです。書いてても書いても終わらない。今日はコリパンダの水替えを結構したいところですが、いよいよ持って風邪症状が。ただ、ちょこちゃんが心配なので水入れだけでもします。新しい水を入れて上げないと。
また、ティッシュボックス取りに行かないといけなくなりました。行って来ます。ここまで読んで下さってありがとうございました。