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【連載・ロマンス・和風ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけみつめている……。 第二部 次代の姫 第十一話 花嫁の宿命

前話

「あらまぁ。ひめちゃん。おばちゃんが見ないうちにおっきくなったわねー」
「って。エリス、驚かないの?」
 步夢が心配げに聞く。
「吉野家にはなんでも落ちてるんでしょ。さっき、冬玄という新しい居候が言ってたわ。これぐらいスルーよ。お洋服がないんでしょ。作るのは時間がかかるから一緒にお店連れて行って見繕ってあげる」
「え。でも。エリスにもアオイちゃんが……」
「さっき、嬉々としてこども園へ行ったわ。ママより大事なのよ。すんすん」
「それで、こっちに。一人娘だからさみしいのね。どうぞ。大家族で圧死するかもしれないけれど」
「やったー。あかちゃんの洋服見るの好きなのよー。步夢ありがとー」
 エリスが抱きつく。それを見た姫夏が騒ぐ。
「ままー。だっこー」
「パパがだっこするから」
「ぱぱいやぁー」
「ひめ~」
 姫夏は朝からご機嫌斜めである。親戚にあちこち弄られているからだ。
「はい。ひめちゃん。あーちゃんだっこ。ゆいおばちゃんが貸してくれるって」
「ちーもー」
「ちーはひめちゃんの後を着いて歩くわ。抱っこするには大きいから」
「ちーだっこー」
「ぴぎぴぎ」
 座っている姫夏の足におてをする千輝である。子猫の暁輝は夢の中だ。暁輝とも姫夏は仲がよかった。それは、急に大きくなっても変わらないようだった。
「ほら。ちーちゃんも着いてくるよって言ってるよ。ちーちゃんはひめちゃんを守るのを大切にしているの。またお家帰ったらおて競争しよう。ね」
「おてきょうそうー」
 姫夏が手を出す。步夢が柔らかい手に手をそっと重ねる。が、そこで止まり、姫夏は当騎を見る。
「ぱぱのおててもいるって」
「ほんとか?! はい、ひめ。お手。次ー、ちーだぞ」
「ぴぎ!」
「おてきょうそうー!!」
 姫夏はきゃっきゃと喜んでいる。幼いときの記憶も持ち合わせているのかもしれない。以前、当騎と一緒の時に遊んでいた赤ちゃん遊びの一つだった。本来はペットでするのだが。姫夏はそれを気に入っていた。今なら暁輝もするかもしれない。
「帰ってきたら、あーちゃんともしようか」
「あい!」
 もう姫夏はご機嫌だ。暁輝がしてくれないと困るが。
「しますわよ。姉様。面白そうでしつけていたんです」
「ありがとう。優衣~」
「女神様だ~」
 両親そろって優衣に手を合わせている。エリスがせかす。
「ほら。早くしないとお昼ご飯に間に合わないわよ」
「ごはん?」
「ひめ、ちーにおてって」
「てー」
「ぴぎ!」
 はぁ~と息を吐く。ご飯には貪欲だ。当騎の子としては合格なぐらい。どこが闇の神の子なの? このそっくりな父娘にいたって。步夢は本当に産んだ気になっている。それぐらい当騎と姫夏は似ていた。さすがは闇の系譜。あの神もそうなのかしら?
「むー! 置いてくぞ」
「あ。まってー」
 夢想していると面白かったのだが、置いてけぼりになりそうになって步夢はその考えを振り落とした。
 さて。あかちゃんショップへ突撃すると、さすがデザイナーというだけはある。エリスは子供服売り場に来るとあっという間に姫夏にぴったりの服を調達してきた。試着させてみると親族一同、「かわいいー」の感嘆である。エリスはふんぞり返っている。あらかた買い物も終わって、再度の離乳食のパウチ爆買いして帰ろうとするとエリスは步夢のくびにてをひっかけた。
「さぁ~。花嫁さんは採寸ね~。ダイエット頑張ってくれたし。エステも予約しましょ」
「え。ええ~~~~~~!!」
「まま。ばいばい」
「ひめちゃ~ん」
 娘にサヨナラを告げられて步夢はお手競争ができないまま連行されていくのであった。


步夢とエリス花嫁の準備(挿絵1)

あとがき
読んでもらえないのは定番の見出し画像が相変わらず現代日本だからかとかうさぎちゃんと思われているのだろうかとか思うので、フライング画像をつくりました。どうせ、三部でももっと大人な姫夏がでるわけだし。和風なのにいつまで経っても着物着れんということで、なぜか帯が着くのだけど、単衣を着せています。ミニスカにはならなかった。なんなんだ? あれは。挿絵をちょこちょこ入れていきますのでお楽しみに。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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