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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:影の騎士真珠の姫 第二十三話 ミスティック・ローズの試練

前話

 翌日、国王の代わりとなる貴族の男性が、フィーネペルル達をエーデンローズの聖域へと案内する。
 目の前には鮮やかな花と水晶が点在する聖域があった。隣に神殿らしき建物がある。あまりにも美しい景色にフィーネペルル達は息をのんだ。
「ここからはあの神殿の神官達に任せます。どうか、ご幸運を」
「ありがとうございます」
 フィーネペルルは会釈した男性に会釈を返した。
「フィーネペルル様方でございましょうか?」
 白髭を蓄えた身分の高そうな神官が目の前にいた。前触れの気配もなく現れた神官に皆、驚く。
「神官達はここの花々に気配を悟られないよう訓練されております」
 驚いたフィーネペルルに神官は不思議な事を言う。
「気配?」
「その通りです。ここの花たちは不思議な力を持っております。ですが、人前になると花を閉じてしまうのです。ですから、ここの花を採取して薬を作る神殿の者達は皆、気配を消す訓練をするのです」
「では、ミスティック・ローズも?」
 カテリーナが安堵したように問いかける。
「はい。ですが、一途な乙女の願いには花々は負けます。王からそれほど一途になってこの遠い国にやってこられたと、お聞きしています。取れるか取れないかは五分五分ですね」
 そう、と逆に今度はフィーネペルルが安堵して息を吐く。この従姉妹同士の姫の態度の不可解さにラインハルトもヴァルターも不思議に思うが、問いかけさせられないほどの神聖な空気をフィーネペルルは纏っていた。まるで女神のような一途な乙女の視線を二人に向けていた。
「行ってくるわ。ヴァルター。ライアン。さぁ、カタリーナ」
「ええ」
 伏し目がちにカタリーナは答えると神官と一緒に聖域に入っていった。
 
 洞窟の中には様々な水晶の柱があった。それを縫うように花々は咲いている。だが、花々は近づくとすぐに花弁を閉じてしまった。それにカタリーナは一縷の望みを託した。ミスティック・ローズが開花せず、棘の毒でフィーネペルルが死に至らないように、と。フィーネペルルはそんなカタリーナの心にも気づいていたが、考えないようにした。ただ、咲いていますように、と願いながら歩く。どれだけ歩いただろうか、周りは薄暗く、ほのかに光を放つ花があった。
「あれがミスティック・ローズ。記憶の妙薬を作ることのできる花です」
 そっと神官が言う。
「お願い。大人しく薬になって」
 細い声で呟くとフィーネペルルが高所に咲いているミスティック・ローズに近づく。花は閉じない。カタリーナは息を飲んで見つめていた。
「いい子ね。いい子ね」
 まるでエルフィに語りかけるように花に言う。そして、手折った。その時、棘がフィーネペルルを刺した。
「痛っ」
「フィーネ!」
「大したことはないわ。意識も何もかもあるわ。毒なんて少しなのよ」
 そう言って戻ってきてカテリーナに花を渡す。事前に神官がカテリーナに棘が挿さないように布を広げておいてくれていた。
「ミスティック・ローズのは試すのです。棘に恐れを成すかどうか。手に渡った今、ミスティック・ローズの意思はあなた方に従います。さぁ、神殿で記憶の妙薬を作りましょう」
 しかしそう言うも、神官は動かない。
「フィーネペルル様、どれほど刺さったかおわかりですか?」
「大したことはないわ。ただ軽く触れただけよ」
 フィーネペルルは意外そうに一蹴する。しかし、神官は真顔だ。次の瞬間、フィーネペルルはくずおれるように倒れた。
「フィーネ!! 毒が!」
「早く神殿に戻りましょう。中和薬があります。あとはこの方の意思の力のみ」
 神官が小さな笛を吹くと入り口で待っていた神官達がやって来てフィーネペルルを運び出す。
「フィーネ!」
 青白い顔で唇が紫色に変わりつつあるフィーネペルルを待っていたヴァルターは悲痛な声で名を呼んだ。様々な経験をしてきたヴァルターには今、フィーネペルルは毒にさらされているとすぐに察知できた。
「ミスティック・ローズの棘には毒があるの。フィーネが絶対にあなた達に言わないで、って必死だったの。やっぱり、止めるべきだったんだわ」
 ぽろぽろ泣き出すカタリーナをライアンは抱きしめる。ヴァルターは運ばれていくフィーネペルルの後を追って神殿に入っていったのだった。


あとがき
はい。やっとここまで来ました。次話が目的の話になります。ここでテーマが大きく出てやっと収まるのですが、その後もトラブルは発生します。あと少しで終わる「影の騎士真珠の姫」をずずずいーっとお読み下さい。ま。ここまで来れば何がテーマかはわかりますが。なぜか、私はこのテーマを背負ってます。それで病んだし、それで今いるし。不思議な者です。人生とは。今日はこれぐらいの投稿にしておきましょうか。エッセイの勉強のお題者を書いたので。これで三記事ですものね。夜ねれなかったら夜に一記事ほどあげます。

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ここまで読んで下さってありがとうございました。

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