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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:影の騎士真珠の姫 第二十二話 花咲き誇るアムネシア国

前話

 最後の宿からほどなくして、一際明るい様々な色であふれた、国境が見えてきた。もう、アムネシアに着くのだ。フィーネペルルは旅の終わりを残念に思うも、ヴァルターに秘密を知られてはいけないと、肝に銘じる。女性しかエーデンローズの聖域に行けないと言うことは知られても良いが、ミスティック・ローズの棘の毒のことは絶対に知らせてはいけなかった。猛毒なのかどうかは記載されていなかった。ただ、「取扱注意」という印が付いていた。それはより詳しい花の本にてフィーネペルルだけが知り得た事だった。カタリーナは聞いているが言わないで、とフィーネペルルは何度も釘をさしていた。カタリーナもマリアの記憶のことを考えると、強くダメ、とは言えなかった。カテリーナにとってもこのアムネシアの任務は賭けに近かった。
 関所を越えて、アムネシアに入る。その花々の美しさにフィーネペルルは息をのんだ。
 
 こんな美しい国で死ねたら本望だわ。
 
 改めて決意を固める。それほど、アムネシアの至る所に花があり、人々は花の手入れを楽しんでいた。城に近づくと四人は馬を下りた。フィーネペルルが国を代表して親書を預かってきたと言って身分証明となるものを見せた。衛兵はあっという間に頭を下げ、謁見の間にすんなりと行く事ができた。
 
 謁見のまでしばらく待っているとアムネシア国王が入ってきた。特訓通りにアムネシア国流の礼儀作法で最大の敬意を表す。
「フィーネペルル様。此度は国王の親書をよくぞ持ってこられた。西の国は未だ、争いに満ちていると聞く。危険な旅をすることとなった理由を国王自らお書きだった。記憶を戻すミスティック・ローズが必要らしいの。ミスティック・ローズのあるエーデンローズの聖域の規則は知っておられるか?」
「はい。未婚の男女しか入る事が許されぬ場所と聞いております」
 フィーネペルルが淡々と国王と話を進めていく。ヴァルター達には新しい情報ばかりだ。
「今、ミスティック・ローズはちょうど開花の時期。エーデンローズの聖域に入る事を許可する。その愛にあふれる理由で長旅を成された今夜はゆっくり休まれよ。護衛の騎士達にも言っておく。この今のやりとりは今限りで忘れてもらうことになる。あくまでも、親書を届けに来た姫と騎士達ということにしておくように。みだりに聖域に入ることは許されぬ事なのでな」
「はい」
 跪いたヴァルター達はただ、了解の意思を示すしかできなかった。国王が立ち去ってフィーネペルルが立ち上がってヴァルター達を見た。哀しげな目だった。
「黙っていてごめんなさい。ミスティック・ローズの事は禁忌の事なの。だから、ヴァルトのお姉様のために私が全部仕組んだの。だますつもりはなかったのだけど、知らせることができなかったの。ごめんなさい」
 そう言って出ていこうとする。そのフィーネペルルをカタリーナが抱きしめた。
「一人ですべてを抱え込まないで。私達はあなたのためにいるのよ」
 カタリーナ、と言ってしばらく見つめる。
「ミスティック・ローズの採取、手伝ってくれる? 持ち出す人が必要だわ」
「フィーネ?」
 花の採取に二人も女性が必要な理由がヴァルターとライアンにはわからなかった。一人で行って帰ってこれるはずだ、と。ただ、中が未知の所だから一人では心細いのか、と推察することしかできなかった。その割には女性二人は既知となっている事柄があるように思えた。
「今日は東方の国の食事がでるらしいわ。楽しみにしましょ」
 そう言ってカタリーナの中からするり、と抜け出すと謁見の間を出て行った。ヴァルターには悪い予感がじわじわと心の中で沸きつつあった。


あとがき
やっとここまで来ましたか。長い旅でした。ここの辺りのことは最初から考えていたのですが、どういう所か設定している内に秘密事項が増えすぎて……。勝手に未婚の男女とか出てきたのです。我ながらよく思い付くこと。この後からがフィーネペルルとっての影との統合になっていきます。どれがどれとは言えませんが。最終的なユングの理想が出てくるんです。私にとってもこのテーマは長い間私を縛っていたテーマです。いつしか抜け出しましたが。でも、作品ではよく出てくるテーマです。影との統合で出てくるのは珍しいのですが。「風響の守護者と見習い賢者の妹」でもラストは同じテーマを背負ってます。変えてみても良いので少、ユングを勉強し直すかもしれません。「緑の魔法と恋の奇跡」でも出てくるため。三つも出ればこまります。ワンパターンですから。ラストの変化を探るべく、お勉強をまたしますね。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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