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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第二十話前編 アデーレの孤独

前話

「フロリアン! レオとリリアーナいるー?」
 ユレーネはフロリアンの店に突撃してきた。手首には舞に使う鈴の着いた腕輪がついている。
「姫様、いますが、ちょいと困った事になっちまって……」
「レオがまた倒れた?!」
 先日の今日だ。何があってもおかしくはない。いや、とフロリアンが首を振る。
「リリアーナが部屋から出てこないんす。何も食べず飲まずで。レオがずっと説得しているんですが、これが難しくて」
 フロリアンの言葉を半分も聞かないうちにユレーネがリリアーナの部屋に飛んで行く。
「リリアーナ! レオ……。大丈夫?」
「うんともすんとも言わないんだ。俺が倒れている間何があったんだ? お兄ちゃんが死んじゃうってそれを言ったきり……」
 ああ、とユレーネは声を上げる。
「あなた、心肺停止になったの。城の医師が必死になって蘇生措置をして戻ってきたのよ」
「そうなのか。自分のせいで死んでしまうと思ってるんだな。リリアーナ。いや、アデーレ。兄ちゃんは死なないから、出てきてくれ。このままではお前が死んじまう。兄ちゃんはそんな事のためにお前をこの国に連れてきたんじゃない。ユレーネみたいな舞姫になって欲しくて連れてきたんだぞ。飲み物でも飲んでくれ」
 必死になって声をかけるレオポルトの側からユレーネが優しい声で語りかける。
「リリアーナ。お兄ちゃんは死なないわよ。お父さんから氷の加護をかけてもらったからこの国でも早死にもないし、リリアーナの結婚式だって出られるのよ?」
 ユレーネが言っていくらか時間が経った後、小さく扉が開いた。
「お姉ちゃん。お兄ちゃん、死なない? この前みたい倒れない?」
「アデーレ!」
 レオポルトが宝物を抱くようにアデーレを抱きしめる。
「ありがとう。出てきてくれたんだな。怖い思いしたな。兄ちゃんはもう死なないから。お爺ちゃんになるまで」
 ちがうの、とアデーレは首を振る。
「アデーレ悪い子なの。神様に嘘ついたの。だから、お兄ちゃんが死んじゃうの。本当の妹じゃないのに妹になってお兄ちゃんにくっついているから神様が怒るの。アデーレが悪い子だから……」
「アデーレ……そんなことどこで」
「城の中で誰かが噂話をしてたの。アデーレはお父様とも血がつながっていないって。お兄ちゃんとも……」
 悔しそうに唇をかみしめている。目には涙がたまっている。
 
 誰だ。そんな噂話したヤツは。
 
 その噂話をしていた人間を殺したくなった。アデーレは幼いなりに知っていた。そしてその事実を抱えて苦しんでいた。話すべきだったのか? アイシャードが諭すまでに。
 
「リリアーナ」
 ユレーネがアデーレの頭を撫でながら名を呼ぶ。
「お姉ちゃんとも血がつながってないわよ。それでも、お姉ちゃんよ。お兄ちゃんだって血のつながり以上にあなたを大事に思っているわ。辛かったわね。一人で抱えて苦しむのは。でも血がつながってなくてもお兄ちゃんはリリアーナのお兄ちゃんよ。だからこの平和なセレスティア国に逃げてきたんだから。リリアーナを手放すぐらいなら、嫌なおお見合いだって受けるわよ」
 カールしか知らない事情をユレーネが知っている。レオポルトは驚く。
「カールがお見合いの話を教えてくれたのよ。今から突撃に行ったって。それに見ればわかるわよ。インフェルニアの国王様とはまったく違うし、レオとも全然顔つきが違うもの。大方のこちらに来ているインフェルニアの国側の人は知ってるわよ。いきさつは知らなくても」
「そうか……」
 レオポルトは一度頭を落として落胆する。だが、すぐに顔を上げた。まっすぐアデーレの目を見る。
「アデーレ。兄ちゃんを見ろ。大事な話をしてやるから」
 アデーレの青い瞳がレオポルトの視線を受け止めた。


あとがき

今日の交流戦は延期だなーとか思いつつ、更新してます。早く起きすぎて時間が余って寝ていたのですが、執筆と受験勉強を夜にしようと今更新中。
頭の中はわやってもうどうしようもないですけどね。休みたいのですが、休めない。占いが悪すぎて困ってます。トラブルが発生するらし、戦々恐々です。行きたくないなー。で休めれば問題ないのですが。足が痛い。余計、気が滅入る。雨もザザ降りですし。エッセンシャルワーカーは警報が出ても行かないと話になりません。ので、頑張って行ってきます。

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