【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(94)
前話
宿へ戻るとクルトは部屋のベッドに私を入れてその横に座って夢想し始めた。
「ちょっと。誰? つわりのつの字もないのに、って言ってたの」
「そういえば、エミーリアどれだけ月のものないの?」
「つい最近まであったわよ。デリカシーないわね。相変わらず」
「じゃ、姉上が先だね」
私ははっとした。クルトも知っている。カロリーネお姉様が妊娠してることを。
「誰に聞いたの?」
そっと聞く。
「いや、でかけに母上とエミーリエのやりとりでなんとなく、ね」
「じゃ、知らぬ存ぜぬは本人たちだけ?」
「フリーデとヴィーもね」
そう言えば、と思い出す。
「フリーデは婚前に妊娠なんて! って怒ってたじゃないの。ホントに大丈夫?」
「さっきのあれ、見てもそう思う?」
「ただの驚きしか、なかったわね」
「そーいうこと建前と本音の使い分け。とっさのことでフリーデも本音が出たんだよ。仕事としてはお目付け役だからね」
「ああ。唯一仕えることのできる家系ってやつね」
「じゃ、フリーデも妊娠しないかしら?」
私が言うとぶっとクルトは噴き出す。
「ヴィーはあれからいくら成長したといってもまだ十二、三だよ! その年で子持ちなんて冗談じゃない!」
「弟にはきびしいのねぇ……」
「当り前だ。あー。夢気分が消えた。ヴィーをいじめてくる」
「ちょっ……。あれ以上いじめちゃ可哀そうよ」
「大丈夫。エミーリエの子の名前を一緒に考えるだけだから」
そう言ってクルトは鼻歌を歌いながら出ていく。
「置いてぼりにしないでよー!!」
叫ぶと一度ドアが開いて一声入った。
「妊婦は安静に」
「クルトの馬鹿!」
クルトの高笑いが聞こえてくる。その声を聴きながらいつしか私は眠りに入っていた。
*
その穏やかな昼下がりの眠りは急に妨げられた。
「エミーリエ!!」
「ふぇ? お姉様?」
起き上がった私にカロリーネお姉様がダイブしようとしていた。クルトの背中に守られ、ヴィルヘルムとフリーデに抱えられ、お姉様はシュテファンお兄様に捕まえられて手足をじたばたさせていた。
「カロリーネ! エミーリエ様のおなかには赤ちゃんがいるんだよ。殺す気かい!」
「あ」
お姉様の動きが急に止まった。深すぎる姉の愛も困ったわね。私はヴィルヘルムとフリーデの手をほどくとお姉様に向かって手を広げた。
「ハグなら大丈夫よ」
「エミーリエ。ごめんなさいー」
半泣きでお姉様が謝る。
「お姉様、まだ気づいていないの? 月のものは?」
抱き抱きしながら優しく聞く。お姉様は考えながら数える。途中で動きがとまった。
「エミーリエ。私も?」
「そうですよ。私より早く身ごもられてお母様も知っておられましたよ。私だって」
「ええええええええーーーーーーーーーーっ。シュテファン、どうしましょう。赤ちゃんが生まれるなんて」
「カロリーネ?!」
シュテファンお兄様の顔も驚愕の表情。まさに鈍感な夫婦だったのね。
「産むしかないでしょう。お姉様。夫が妊娠したんじゃないんだもの。それに祖国には発達した医療があるじゃないですか。すぐ生まれますよ」
「私、つわりもないんだけど」
「私もです。姉妹仲良くママ研修行きましょう」
「ああ。エミーリエ。エミーリエの子を見るだけで十分だと思っていたのに私にまで。あなたが運んできてくれた幸せよ」
カロリーネお姉様がぽろぽろ泣く。シュテファンお兄様が涙を拭く。
「運んできてくれたのはシュテファンお兄様よ。ひとりじゃ妊娠できないんだもの。ね。クルト」
「そうだね。これからの旅は食事に気を付けよう。シュテファン。手配を頼むよ」
「まかせてください!」
シュテファンお兄様は胸をどんと叩くと思いっきりむせる。それをみんなけらけら笑う。お姉様も泣き笑い。
幸せが一気に押し寄せた日だった。
あとがき
あっという間に94ですね。さぼってる間に差が縮まる。そろそろラスボスですかね。筋書きをまた浮かぶまで原稿とにらめっこ。探偵さんとお嬢さんシリーズかけたかと思っても常の連載がまっている。漢検~~~~。あと、答え合わせとまとめ練習が~~~~。それから逃げてるけれど。パソコンデスクにパソコン置くと他が置けないから自動的にテキストは棚の中へ。そのパソコンをどけたらやる気でるんですが。と。エミーリエ達みたいに突如、ジュースが飲みたくなって買ってきました。やっぱり、一日一本は飲むなぁ。
後は、漢検とWordpress更新にします。こちらは記事数が多くなってしまったので、浮かんだサーコとか書いてます。そうだ。サーコもWordpressにいれよう。主な活動先を移動してみてます。ここ中心だとばかばか記事書いちゃうので。ではここまで読んでくださってありがとうございました。