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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第十五話 エンブライトアースの聖殿

前話

 南の神殿へと道を共にして数日、遺跡に到着した。遺跡の名前をエンブライトアースの聖殿という。古代の栄華が去ってからはただの南の神殿としか呼ばれていない。神殿は、一見ボロボロに崩れれて見えたが、リリアーナが土のエレメントを注いで幻を取り去るとまばゆいばかりに輝く神殿がそこにあった。
「これが南の神殿……」
 セイレンがごくりと喉を鳴らす。緊張しているのだ。ぽん、とレオポルトがセイレンの肩を叩く。
「来たかったんだろう。ここに。進まないと行けない」
「はい」
 セイレンは、一拍おいてから足を踏み出す。その後にレオポルト達が続く。
「ゼフィリス王ー。おられないかー?」
 たまにレオポルトが周りに声をかける。しかし、神殿は静かだった。
 セイレンが来るのを待っていたかのように扉が勝手に開いていく。何か、仕掛けがあるのでは、とニコ達が目を光らせているがそのような様子も一つもない。
 道なりに進むと祭壇が見えてきた。祭壇に輝く鍵が一つだけ置いてあった。そっと触ろうとするセイレンにレオポルトが止める。
「簡単に信用しすぎてはダメだ。これが本物の鍵とは限らない。それにこれを必要としているのはゼフィリス王だな?」
 バレた。
 捕まえられて風の国で処刑されるのか。一瞬死を覚悟したセイレンだった。その時、地の底から響くような声が聞こえてきた。
『そなたが風の王か。その鍵を持ってエーテルヴェールの魔結晶を手に入れられよ。この土の神殿は風との相反する神殿。だが、土のエレメントはお前を受け入れた。その心に秘めたる崇高な思いに。そして賢者となる娘の純粋さに我が神殿は開けられた。しかし、他の神殿では試練が待ち受けているだろう。風の国は息吹の国として最初に作られた国。その威信をかけて悪を退かれよ』
「はい」
 セイレン、いや、ゼフィリスが鍵に手を伸ばす。その鍵は触れると急に消える。皆、焦る。すると面白そうに神殿の主は言う。
『体に取り込まれただけだ。さぁ。本来の姿を皆に見せよ』
 ゼフィリスの体からものすごい風が吹き荒れた。風がなくなると、そこには風の国の王の正装をまとったセイレンがいた。
「セイレン! 格好いい!」
 リリアーナが抱きつこうとするのを抑える兄、レオポルトである。光が消えるとゼフィリスはいつもの旅の服装に戻っていた。セイレンに戻った、という所だ。
「おしつけない約束だろ?」
「はい。そうでした」
 リリアーナがうなだれる。
「だが、まぁいい。素性は明らかになった。二人の仲は認めるが、一方的にならないこと。これが守れたら兄ちゃんは喜んで嫁がせる」
「お兄ちゃん!」
 リリアーナがレオポルトに抱きつく。
「あーあ。お兄ちゃんは妹に甘すぎるんだから」
 ユレーネが言う。
「元々、素性に関しては薄々感じていた。今回はこの二人の試練だ。俺達は補助にしか過ぎない」
「レオ……。そこまで考えていたのね」
 ユレーネがそっと夫に寄り添う。
「他の神殿ではこうもトントン拍子に話は進まないぞ。次に向かう所を決めているか?」
「いいえ。レオポルト王」
「なんだ。こっちの素性もわかったのか」
「ええ」
「じゃ、兄ちゃんと呼べばいい。いずれそうなると思うからな。普通の兄弟のように接してくれれば良い。それと、一度、シャリスタンへ帰る。マーブルヘイブを経由してエンシャントウッドに行く。ここから行ってもいいが、回り道になる。直接海峡を経由して行った方が早い。それに装備もセイレンには必要だ。その格好じゃ、リリアーナに襲われるぞ」
「まさか」
「いんや。俺は妻と妹に押し倒され続けてきたんだ。リリアーナが標的を変えてもおかしくはない」
 ぎょっとしてセイレンはユレーネとリリアーナを見る。二人とも素知らぬふりである。
「エンシャントウッドでは魔力を高める修行も本来の自分を見つめられる修行もあるという。セイレンは、今一度、自分を見つめる時間を持つ方がいい。セイレンなのかゼフィリスなのか、わかりかねてきているだろう?」
 はっとしてレオポルトを見るセイレンである。
「セイレンとして王となることもできるはずだ。周りに押されてのゼフィリスがいいのか自ら国を得る王が良いのかもう一度よく考えるように。じゃ、撤退するぞ」
 そう言ってレオポルトは祭壇のある部屋を出ようとする。
「レオポルト王!」
「にいちゃんか、レオ」
 振り向かずに念を押される。
「じゃ。兄さん。いいんですか? 本当に」
 後ろを急いで着いていきながらセイレンは聞く。
「兄ちゃんは言ったことを曲げないから」
「わかりました。よろしくお願いします」
「ああ。とっとと出るぞ。嫌な予感がする」
 嫌な気配が入り口付近で漂い始めているのをセイレンは感じていた。


あとがき
更新遅れました。今朝、朝活の記事の後買い物に行き、昼食を食べ、その後
ガーデニングの整理をしたところ、とんでもなく手間取って今頃更新してます。一万PVまであと1000PVということでこの三ヶ月の間にこんなに呼んでもらえるとは思いもしませんでした。出戻りもいいもんですね。今までこんなPV数なかったです。スキもたくさん頂き、びっくりです。毎週土曜日の例の千字掌編がのびてますが、現代物はいつも習作なんです。どうも苦手で。でも現代物が書けないとファンタジーって書けないような気がしてやっぱり習作としてイジっちゃいます。

そして、買い物に言ってなんと買わなければならなかった魚の餌を忘れてきました。まだ、余裕があるけれど。あ。テトラは作らないと。フレークを粉末にするんです。というのは置いておいて。

セイレンの性格がやや最初と最近とでは違ってきてたので言葉使いなどを少し変えました。丁寧語を話す少年と。あとは悲鳴を上げられる少年。(笑)。ここで時間を食うのですよ。まだ海渡ってません。ようやく行けるか、という所です。というか急がないとというレオとセイレンだけの気持ちで早くなってるだけ。リリアーナとかはのほほんとしてます。避暑地で弓のお稽古。そこが大分こなれてきたのでやっと行けるんですが、まだ書いてない。まだ、届かない、目的地に。長い。もう26話ですよ。第一章がこんなに長いとあとが怖い。すぐ終わったりして。第一部が43話。なのに半分以上が序盤。この差は? 神殿巡るだけだから途中で何らかのアクシデントを組み込まないと行けない。するとすごい大変な間になるんです。街から街へならいいんですがノロケと夫婦げんかぐらいが延々と。漢検は朝活でやってしまったので、執筆となりますが、これも疲れてやれない。ガーデニングの整理を兼ねてしたのであとで、また床掃除が待っている。母にホウキとチリトリ借りて清掃しないと。水が流れましたがこの太陽でもう乾いてます。さっさおと掃除しよう。星彩はまたあとで。とりあえず、風響の守護者と見習い賢者の妹だけ更新します。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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