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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(76)

前話

 私とクルトの執務室にシュテファン様が事務官として出入りするようになった。筆頭とは行かないまでも、カロリーネお姉様の夫としての身分は猛スピードで築き上げたようだった。さすがは秀才。ホントに好きなのね。
「人のこと言えるの? エミーリエ」
 書類を見ながらクルトが言葉を発する。
「それ、今さら言うの?」
「うん。今さら」
「もう。私もシュテファン様に劣らずあなたのことが大好きよ」
「もう一声」
「はいはい。愛してるを聞きたいのね」
「そう」
 シュテファン様が出入りしようとカロリーネお姉様が突撃してこようと何百回も告白をさせられている。一度言えば済むと思うのに。
「何度でも聞きたいの」
 相変わらず、私の心のの声は流れっぱなし。たまにクルトの妄想が流れてきて私は真っ赤になる。だけど、クルトは正常な男の心の声、と言ってはばからない。まぁ、東へさえ行けばあとは婚礼ですもの。今さらよね。
「うん。今さら。もう三年も婚礼を待っているよ」
 そう。この国の言葉を覚えたり、生活様式を覚えたり、花嫁修業や婚礼準備。その間に起きたもろもろが過ぎ去ってもう眠りから覚めて三年の月日が経とうとしていた。十六だった私はもう十九。クルトは一つ年上だから二十歳になった。いい大人に私たちはなっていたのだった。カロリーネお姉様も行かず後家にならずに済む。もうすぐカロリーネお姉様の式も行われる。突貫工事も終えたお姉様の宮殿はあたたかい家庭の空気をまとった宮殿となって私のあこがれの的だった。私の宮殿はまだまだ。クルトの宮殿で新婚家庭を続ける毎日。宮殿二つもいらないんじゃないの? と思うけれど、そのうち私生活をあちらで送るために必要なんだそう。こっちの宮殿に慣れてきたのに。フリーデは相変わらず、この宮殿の中をさまよっている。今も休憩のお茶をもってうろついてる。ヴィルヘルムに連れてもらうこともたびたびのようでその道中はデートと化しているようだった。まぁ、不機嫌同士ではないからめでたいことよね。ヴィルヘルムももう立派な王子だった。三年の間に凛々しくなって将来有望な王子となっていた。フリーデは頬が緩みそうになるのを必死でこらえてここに来る。かわいいフリーデお姉さまね。倦怠期は無事終えたよう。長い春が決定だから大変よね。私はスピード婚だけど。
「三年かかってスピード婚?」
「クルト! 仕事するか私語をするかどっちかにして」
「君も思考がさまよってるけれど? その執務、そんなに簡単?」
「え? まぁ、計算するだけだから、思考と暗算は両立できるわ」
 私は税の書類に携わっていた。お母様の仕事はまったく来ず、クルトの仕事を回してもらっていた。お母様とは長らくお会いしてないけれど、カロリーネお姉様の婚礼準備で楽しい毎日を送られているとカロリーネお姉様から聞いている。
「はいはい。難しい仕事は一旦休憩。お茶にするよ。そろそろフリーデとヴィーは強制休憩に突撃してくるだろうから」
「そうね」
 そう言って私は書類を整えるのに机の上でとんとんとする。整った書類をクルトが持って自分のところにもっていった。
「クルト?」
「お茶が終わったらキアラの散歩に久しぶりに行こう。フリーデとヴィーが代わりに行ってくれてるけれどこれじゃ、飼い主を忘れそうになるよ」
 私たちが机にかじりついている間はフリーデが侍女として散歩の仕事をこなしていた。フリーデがいればヴィルヘルムもついてくる。二人のデートにキアラは使われていた。いつも、寝室へ戻るとキアラがいつも以上に甘えてくる。ほったらかしにして少々心が痛んでいた。でも、相変わらずキアラは専用ベッドでねて間には入ってくれない。私はクルトに抱き着かないように反対側に枕を抱いて眠っていた。それでも時々恐ろしい所業をしてるときがある。
 キアラが間に挟まってくれればどれほど安心かと思う。手をつなぐのもできない。
「抱き着くぐらいはかまわないよ。俺も寝ていて気付かないから。起きた時が困るけれどね」
「クルトが困るのは嫌よ」
「エミーリエ。そこで不機嫌にならないで。困るのはお互い様だろ。そこだけ目をつむれば理想的だと思うけれど?」
「目をつむることなんてできないわ。クルトが困るくらいならソファで寝るわ」
「それはだめだって言ってるだろう。わかった。今夜からキアラのベッドを間におこう。それならいいだろう?」
「まぁ……ね」
 そこへフリーデのか細い声が聞こえてくる。
「お茶の時間だね。やぁ。フリーデ。今日は一人かい?」
「はい。ヴィルヘルム様は何かご用事があるようでした。道案内だけして外へ出られました」
「そう。ヴィルヘルムも難しい年ごろだからね。いろいろあるよ。お茶をしたらキアラの散歩に行くからフリーデはゆっくりしてて」
「お仕事はめどがつかれたのですか?」
「まぁね。毎日机にかじりついてたら不健康になる。たまには散歩して日に当たらないと。さぁ。フリーデもいっしょにお茶をしよう」
「そんな、滅相もない!」
「いいのいいの。こっち座ってお姉様」
「エミーリエ様。しかたありませんね。大事な妹姫様ですから」
「そうそう」
 和やかな空気が流れ、冷たいアールグレイを三人で楽しんだのだった。カロリーネお姉様の式が刻々と近づいていた。


あとがき
見出し画像、年末年始バージョンです。年が明けてしばらくしたら、もとに戻します。やっぱり、手作りよね。イラストは自動生成だからあんまりイラストバージョンでと決めたもの以外は普通に見出し画像を作りたい。アドビの自動生成はうまくいかないので早々にやめました。GPTのばかりです。
ま。今日は軽い風邪をひいてしまったようなのでおとなしく眠ります。寝付けなかったら続き書いてます。90話を途中まで書いていたので。昨夜眠れず書いていたのです。半分ほど書いたみたいだったので、続きを書こうかしら。今日も漢検時間作れず。やばし。正月からしっかり勉強始めます。それではここまで読んでくださってありがとうございました。

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